やしお

ふつうの会社員の日記です。

桐野夏生『メタボラ(上)』

https://bookmeter.com/reviews/77451130

桐野夏生を読んでいて気持ちいいのは、がちがちにプロットが構築されているわけじゃなくて、行き当たりばったりで出来ているというか、視点人物がある状況や人物にぽんと出会って、それに対処していくんだけど、その過程で各人物の性質や考え方がにじみ出てくるし、事態もそれによって駆動されていく。それって現実もそういう風だから、リアルに見えてくる。特に「メタボラ」は新聞連載だったからその感じが強いのかも、と思った。

メタボラ(上) (朝日文庫)

メタボラ(上) (朝日文庫)

酒井啓子『9.11後の現代史』

https://bookmeter.com/reviews/77454818

9.11後のアフガン戦争、イラク戦争アラブの春、ISやシリア内戦がどう推移したのかと、それらが第二次大戦後のどういう経緯で発生しているのかという背景を整理して解説してくれるありがたい本。WW2後イスラエルがアラブ共通の敵になった際、アラブ諸国のリーダーだったのがエジプトだったのが、最初にイスラエルと和平を結んでリーダーの地位を追われ、その後盟主になったサウジアラビアが今はイスラエルと接近して、現状アラブ諸国イスラエルは敵対関係にはないという。

本田和子『異文化としての子ども』

https://bookmeter.com/reviews/77451078

現実の子供の生態やメカニズムを解説するものではなくて、子供と大人を分けるものとは何か、大人が「子供」という枠組みで子供を見るというのはどういう機序で起こるのか、という話だった。大人にとって「整合性があること」に快楽があって、それが乱れている/乱す存在を「子供」として区別するとか、幼児の生存率が低かった時代は子供を「この世界への定着が未確定の存在」と見なすことで種々の慣習があったとか、様々な視点が提供されて面白い。

異文化としての子ども (ちくま学芸文庫)

異文化としての子ども (ちくま学芸文庫)