やしお

ふつうの会社員の日記です。

堀栄三『大本営参謀の情報戦記』

https://bookmeter.com/reviews/77454786

太平洋戦争中に大本営の情報参謀になった著者の、主に太平洋戦争に関する回顧録になっている。太平洋上に点在する島々を攻略することの意味や、制空権というものがどういう意味を持つのか、アメリカ軍と日本軍の戦略や戦術といった話が詳細に語られていて、もともと軍事や兵器に興味がなかったけれどとても面白かった。大本営の中でも作戦課が上、情報課が下、という意識の中で情報が軽視され願望や思い込みに基づく作戦が立てられて結果として現場の血でそれを贖っていく構造が描かれる。

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)

五百蔵容『砕かれたハリルホジッチ・プラン』

https://bookmeter.com/reviews/77451348

少ないルールや制約から出発してこんな複雑な戦略や戦術が導出されて実際そんな戦いが起こっている、みたいな話は、将棋でもサッカーでも読んでて興奮する。(将棋も)サッカーも見ないしやらないから正確に理解できるわけではなくても、そういう話を読むのが楽しい。ハリルホジッチという人が、日本代表の過去の取り組みという時間軸に対して、世界のサッカーの状況という空間に対して、どういう位置付けだったのかもよく分かるし、改めてあの解任はW杯の結果によって正当化されるものでは全くないなということがよくわかる。

桐野夏生『メタボラ(下)』

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主人公が二人のお話だけど、生気を徹底的に奪われた人がもう一度生き直す話と、生気に満ち溢れていた人がふいに奪われてしまう話とが、お互いがお互いをきっかけにして起動している、そんな物語になっている。「生きる能力」って「真面目で勤勉、頑張っている」という性質の中にあるというより、「他者と関係を構築すること」にあって、そこを疎かにしたり失敗すると生きられなくなる、そんな光景になっている。「生き上手」な人と「生き下手」な人がいる。

メタボラ(下) (朝日文庫)

メタボラ(下) (朝日文庫)