やしお

ふつうの会社員の日記です。

金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義』

https://bookmeter.com/reviews/94986375

新自由主義的な競争社会が行き着く姿の、ひとつの具体例に韓国がなっている。韓国は教育熱が高いと漠然と知っていたけれど、それが「自分の能力しかあてにできない」保障の少ない社会によって起こっている。人生の余裕や幸福がどう阻害されて苦しめられるか具体的に見せてくれる。映画の『82年生まれ、キム・ジヨン』で、女性差別が日本と似ているようでより程度が大きく見えた。これも急激な近代化で、通念の変化が人間の世代交代のスピードより早いために、世代間の価値観の齟齬がより大きく出てしまうのかもしれないと思った。



 とても面白かったというか、あまり他人事でもないかと思って、内容を↓にまとめた。
新自由主義の自己責任・競争社会が生み出す景色 - やしお

倉山満『政争家・三木武夫』

https://bookmeter.com/reviews/92967785

非主流の少数派閥でも、上手に争点を作り出してキャスティングボートを握っていく。権力の中心でも周辺でもなく、亜周辺に留まるようにバランスを取って、最終的には首相になる。首相になるにしても色んな戦略があるんだなと思うと面白い。評価が低くても派閥の長や首相になる政治家はやっぱり普通じゃないことをしている。著者は人物や物事を単純な認識やストーリーに押し込めて、簡単に断罪・断言する。しかしそれは複雑さを正確に整理して単純化する営みとは似て非なるものだ。本書はそのため、解説としても資料的価値としても水準が低い。

デイヴィッド・J・リンデン『快感回路』

https://bookmeter.com/reviews/94986484

実は「知らないことを知る歓び」のような抽象的な快感も、タバコ・薬物・食事・性行為などのよりダイレクトな快楽と、脳内では同じ「快感回路(報酬系)」の働きで快感を感じているという話が面白かった。神経生物学的に言うと「快楽」の反対は「痛み」ではなく「倦怠=興味の欠如」だという話も面白かった。快感という働きの全般を脳の快感回路が共通して担っているとしても、他の部位と関連した働きはそれぞれ違っていて、そこに快感の「色付け」の違いが生じる、という感じらしい。