やしお

ふつうの会社員の日記です。

2020-06-24から1日間の記事一覧

山崎豊子『沈まぬ太陽(1)』

https://bookmeter.com/reviews/90594927 御巣鷹山の日航機墜落事故をモチーフにした小説という漠然とした理解で読み始めたら、いきなり主人公がアフリカのサバンナでゾウを狙撃していたので驚いた。現在の感覚では、企業による懲罰人事(内部告発やリストラ…

立川吉笑『現在落語論』

https://bookmeter.com/reviews/90594901 落語が伝統性と大衆性に引き裂かれるという話は、例えば小説が純文学とエンタメに二分されるのと同じで、恐らくジャンルやメディアに関係なく芸術一般が過去の成果に対してより微細な差異を追求して高度化していくと…

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!』

https://bookmeter.com/reviews/90529582 国谷裕子が『キャスターという仕事』の中で、テレビというメディアが視聴者の感情を一体化するように働き、さらに強化する特質があると指摘していた。国谷氏がキャスターとしてその特質に抗うように仕事をしていた姿…

河野稠果『人口学への招待』

https://bookmeter.com/reviews/90529521 人口に影響するのは、出産・死亡・移動の3要素だが、そのうち最も大きな影響を与えるのが出産であるため、本書は大半が少子化・出生率に関する様々な学説や理論、データの紹介に充てられている。出生率の高低が、実…

広瀬和生『21世紀落語史』

https://bookmeter.com/reviews/90529442 客を笑わそうとするのではなく、つい笑ってしまうようでないといけない、何気ない会話の中で二人の関係性が浮かび上がってこないといけない、と考える柳家小三治が、08年に「千早ふる」を演りながら二人の会話を聞い…

柄谷行人『マルクスその可能性の中心』

https://bookmeter.com/reviews/90529387 一旦構造が形成された後から見ると、構造の結果がその原因としてしか見えなくなり結果と原因を取り違えてしまう(遠近法的倒錯)という指摘がされる。そしてこの倒錯に立脚して考えることで、さらに起源が見えなくな…

斉須政雄『フレンチ十皿の料理』

https://bookmeter.com/reviews/90529349 専門家の独特の言語感覚や概念を知るのは楽しい。神田裕行『日本料理の贅沢』もそうだが、全ての工程と素材の選択には合理性があり「こうすることになっているからそうしている」は一切排除されている。「なぜそうす…

板橋拓己『アデナウアー』

https://bookmeter.com/reviews/90529305 アデナウアーが首相として強権的に長期政権を維持したことでドイツは第二次大戦後に民主主義を定着し得たという指摘は、一見逆説的なようだが、「アラブの春」により中東各国で長期独裁政権が倒されたがチュニジア以…

中沢新一『アースダイバー』

https://bookmeter.com/reviews/90529244 こうしたインチキの体系を構築・提示するところに中沢新一の魅力がある。例えば占星術の精緻な体系がその精緻さそのものに魅力があり、時に新たな視点を人に与えるのと似ている。東京を沖積層(かつて海だった低い湿…