やしお

ふつうの会社員の日記です。

2021-03-21から1日間の記事一覧

正垣泰彦『サイゼリヤ』

https://bookmeter.com/reviews/96952471 「サイゼリヤが大好き」という私の気持ちは、美味しい・安い・居心地がいいといった理由だけでなく、「この会社の合理的な姿勢が好き」がものすごく大きくて、読むとまさにその気持ちをより強くしてくれる本だった。…

柳瀬博一『国道16号線』

https://bookmeter.com/reviews/96952368 国道16号線を軸に、地理・歴史・文化・産業など様々な事象を統合して語る本。「反証も挙げながら妥当性の高い帰結を採用して理論構築していく」という営みではなく、「ストーリーを補強できる事実やデータのみをピッ…

馬部隆弘『椿井文書』

https://bookmeter.com/reviews/96505847 江戸末期に椿井政隆によって近畿で大量に製作された偽文書が、「本物」として受け入れられる過程を描く。変なマナー(江戸しぐさとか)が昔からあるものとして定着してしまうのにも似ている。椿井政隆は、権利(支配…

金成玟『K-POP』

https://bookmeter.com/reviews/96431429 素質の良い者を選抜し、歌・ダンス・作詞作曲・語学など極めて厳しいトレーニングを課し、チームを組んで実戦投入する。軍の特殊部隊に近い。世界最高水準に到達する人が「運良く」出現するのを待つのではなく、コン…

森功『同和と銀行』

https://bookmeter.com/reviews/96405124 闇市で喧嘩に明け暮れてヤクザになり、さらに同和団体トップとして君臨した男と、貧しい漁村に生まれ唯一スーツ姿を見た銀行員に憧れ、高卒で都市銀行に入り支店長にまで出世した男が、ある種の信頼関係で結ばれて大…

村上春樹・柴田元幸『翻訳夜話』

https://bookmeter.com/reviews/96168634 村上春樹は、翻訳でも創作でも「文体は自分を限りなく捨ててもなお残るものを自分の文体と呼び得る」という認識と、「文章は人を次に進めなければならず、そのため文章にとって最も重要なのはリズムである」という認…

森川智之『声優』

https://bookmeter.com/reviews/96168580 声優でもあるが、事務所社長として若い声優の環境を整えたり、養成所講師として声優を育成したりもしている。教育のスタイルとして、学習のきっかけは与えるが、そのきっかけを拾えるかどうかは本人の問題、という割…

増田俊也『七帝柔道記』

https://bookmeter.com/reviews/95925269 「部活もの青春ストーリー」なのに、見たことのない地獄の光景で面白い。89年の北大柔道部が舞台の自伝的小説。コミュニティの新メンバーは、肉体と精神、自尊心をズタボロに破壊された上で、自分で「所属する意味」…

田中靖浩『会計の世界史』

https://bookmeter.com/reviews/95925171 複雑なシステムを理解するには、発展の過程を見るのが有効で、本書は会計という体系でそこを見せてくれる。「どういう時代背景と必要性で、何が生まれた/加えられたか」のひとつひとつの積み重ねを見ることで「なぜ…

寺西千代子『プロトコールとは何か』

https://bookmeter.com/reviews/95618421 外務省で国際儀礼(プロトコール)を担当していた人の本。単に「マナーを守って悪印象を与えない」だけでなく、国際機構では国の大小に関わらず一国一票なので、国公賓の接遇で外国要人に自国の好印象を与えることが…

鷲田清一『ちぐはぐな身体』

https://bookmeter.com/reviews/95528680 常識やジェンダーバイアスなどの通念と、衣服や装飾がどう距離を取るのか、あるいはべったりなのかという視点でファッションを捉えていく。読んでいて退屈だったのは、ギリギリまで突き詰めて思考の拡張に至る営みと…

竹中治堅『コロナ危機の政治』

https://bookmeter.com/reviews/95453659 安倍政権下の政府+自治体のコロナ対応の流れをまとめた本。どれだけ首相周辺の権力基盤が安定して強力でも、過去の地方分権改革の影響もあって知事との協働が不可欠になる。政権(経済優先)と知事(感染対策優先)…

成田龍一『大正デモクラシー』

https://bookmeter.com/reviews/95153097 大正期の民主主義(民本主義)運動は、帝国主義と折り合いをつけざるを得ないという限界がある。本書はそうした限界点も含めて(大正デモクラシーと直接関係ない出来事も含めて)紹介している。特に植民地を持ちなが…

山崎豊子『沈まぬ太陽(5)』

https://bookmeter.com/reviews/96229524 お互い高い能力を持ちながら、信念を貫いて組織の中で苦しい立場で耐える主人公と、主人公と袂を分かって組織に迎合しながら出世していくライバル、という対比は、まあやっぱ「映える」って感じはするし、読んでて楽…

山崎豊子『沈まぬ太陽(4)』

https://bookmeter.com/reviews/96229468 本業と別に不動産業やホテル業をやるというのは、この時代の日本企業の「あるある」かもしれないし、まして航空会社は観光業とも密接につながっていて無関係ではない。しかしここまで子会社を使って「世の中の利益で…

山崎豊子『沈まぬ太陽(3)』

https://bookmeter.com/reviews/96229110 ついに御巣鷹山への墜落事故が描かれる。主人公が遺族係という視点で事故や遺族の状況が語られていく。(なお主人公のモデルになった実在の日航社員は遺族係ではなく、当時は海外勤務だったという。)この辺の話は、…

山崎豊子『沈まぬ太陽(2)』

https://bookmeter.com/reviews/96229040 主人公がパキスタン(カラチ)→イラン(テヘラン)→ケニア(ナイロビ)と、西へ西へと左遷されていく。その辛さ・悲しさを描くのがストーリー上の主眼かもしれないけれど、あの時代の中東やアフリカの地で、主人公(…

読売新聞特別取材班『トヨタ伝』

https://bookmeter.com/reviews/96197376 トヨタの歴史・技術力・政治力・労組や創業家の立ち位置など広範なトピックが整理されている。元副社長でジャストインタイムやかんばん方式などを実践・体系化した大野耐一の『トヨタ生産方式』を以前に読んだ時には…

ヤニス・バルファキス『父が娘に語る経済の話。』

https://bookmeter.com/reviews/96197305 資本主義にまつわる素朴で根本的な疑問はいくつもあって、例えば「貨幣はどうしてバーチャルな存在なのに機能するのか」とか、「世の中がどんどん便利になるのにどうして労働はなくならないのか」とか、「どうして人…

藤本和子『塩を食う女たち』

https://bookmeter.com/reviews/96197247 70年代のアメリカ南部に渡った著者が、40人以上の黒人女性へインタビューした内容をまとめた本。奴隷制の持つ人種的・階級的な矛盾を、「家族制」で擬似的に正当化したという指摘がある。奴隷所有者は、奴隷を「自分…