やしお

ふつうの会社員の日記です。

デイヴィッド・J・リンデン『快感回路』

https://bookmeter.com/reviews/94986484実は「知らないことを知る歓び」のような抽象的な快感も、タバコ・薬物・食事・性行為などのよりダイレクトな快楽と、脳内では同じ「快感回路(報酬系)」の働きで快感を感じているという話が面白かった。神経生物学…

上野裕和『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』

https://bookmeter.com/reviews/94986607将棋の序盤戦法の解説書。本旨とは違うが、「プロ棋士」と言っても色んな生き方があるんだよなと思えてくる。タイトル戦に登場するトッププロだけが棋士の生き方じゃない。著者はアマチュア向けの講師や解説書の執筆…

早瀬圭一『大本襲撃』

https://bookmeter.com/reviews/95035178日本の現代史で最大の宗教弾圧、大本事件のノンフィクション。大本の教祖 出口なお・王仁三郎に比べて知名度の低い、2代教主・出口すみにスポットライトを当てた点に特色がある。6年以上に渡って収監されても、警察署…

水島治郎『ポピュリズムとは何か』

https://bookmeter.com/reviews/94986834民主主義の中に「間接民主主義」と「直接民主主義」の対立が内在している、という話になるほどと思った。例えばタイは、農村部を大票田にしたポピュリズム政権(タクシン派)が生まれ、都市部の知識層がそれを否定し…

溝口敦『ヤクザ崩壊 半グレ勃興』

https://bookmeter.com/reviews/92967752暴対法でヤクザを締め付けると、マフィア化して見えにくくなったり、ヤクザ以外の反社勢力に取って代わられたりしていく。社会からドロップアウトしてしまう人、暴力や犯罪に頼って生きざるを得ない人たちの総量自体…

伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

https://bookmeter.com/reviews/92083440情報を入力される場所(器官)でカテゴライズして考えるのではなくて、どう処理されるのかで分類した方が、より正確に視覚障害者を捉えられる、っていう認識の逆転が面白い。例えば「読む」という行為も視覚情報だと…

清武英利『プライベートバンカー』

https://bookmeter.com/reviews/92083390節税目的のシンガポール移住は(表立った活動ができないので)引きこもり気質の人でないと向かないけど、引きこもり気質の人はお金持ちにはなりにくい、というジレンマがあって、バイタリティ溢れるお金持ちは相続税…

高埜利彦『江戸幕府と朝廷』

https://bookmeter.com/reviews/92083347以前、熊倉功夫 『後水尾天皇』を読んで、江戸時代初期に天皇・朝廷がどのように幕府によって体制に組み込まれて、政治的実権から疎外されていったか、そこにどう抵抗/順応したかなどの話が面白かったので、ではその…

日本再建イニシアティブ『民主党政権 失敗の検証』

https://bookmeter.com/reviews/92967731「悪夢の民主党政権」と一言で片付けたり、鳩山が愚かだった、菅がダメだった、小沢が壊した、と属人化することも、ストーリーが分かりやすくなって信じられやすいけど、単純化に抗って複雑さに耐えないと正確に認識…

浅見雅男『華族誕生』

https://bookmeter.com/reviews/92083315政治体制が大きく変わった時に旧勢力をどう処遇するかは、対応を間違えると体制の不安定化に繋がる。明治維新の場合は「華族制度」を作って、公卿(公家のうち堂上家)と諸侯(武家のうち大名家)という旧体制の権威…

岩佐淳士『王室と不敬罪』

https://bookmeter.com/reviews/92083267タイは民主化すると利権政治になってしまい、それを倒すにはクーデターに頼らざるを得ず、今度は軍政になって民主化から遠ざかる、という「利権政治か軍事政権の2択」を選ばされる状況になっている。その上、抑制的で…

柿崎一郎『物語 タイの歴史』

https://bookmeter.com/reviews/92083232タイはインドシナの他の国がみんな植民地になる中で独立を保って、第2次世界大戦でも日本に迫られて枢軸国になりながらも被害を最小限で留めた、というのは優れた面だけど、その結果で古い憲法(国会より君主優位)の…

蓮實重彦『帝国の陰謀』

https://bookmeter.com/reviews/94997637「ナポレオンの甥」でしかない男が、大統領になって第2帝政を確立し肯定ナポレオン3世になる経緯を描いた本。モチーフ自体はマルクス『ブリュメール18日』と同じでも、ナポレオン3世の義弟ド・モルニーに着目する点が…

井出穣治『フィリピン』

https://bookmeter.com/reviews/95122865フィリピンは国民の1割が海外で出稼ぎ労働をしていて、また海外のバックオフィスとしても機能することで、00年以降高成長を続けているという。英語が普及している(米国映画が字幕なしで上映されるレベル)ためだが、…

荻上チキ『彼女たちの売春』

https://bookmeter.com/reviews/95122787売春・ワリキリのルポ。キスはNGにしてるから彼氏は裏切っていないとか、風俗で働いてないから本腰は入れていないとか、目的のために必要な額を稼いでいるだけだ、といったある種の道徳的な規範や内在的なロジックが…

デイヴィッド・A・プライス『ピクサー』

https://bookmeter.com/reviews/95122724影も形も存在しない長編CGアニメを60年代から夢見て、遂に95年に『トイ・ストーリー』で世界で初めて実現する。その間、実用化・収益化にはほど遠い状態で、長編CGアニメ映画の野望を隠しながらどこかから金を調達し…

老川慶喜『日本鉄道史 昭和戦後・平成篇』

https://bookmeter.com/reviews/95122635戦後に国鉄が国営から公共事業体になり、昭和末期にJRへ分社化していく流れが詳細に描かれる。87年4月1日にJR7社体制がスタートするが、そこへ至るまでに国鉄総裁が分社化反対派の役員を道連れに辞任したり、労働組合…

竹下節子『ローマ法王』

https://bookmeter.com/reviews/95122566他の教会ではなくローマ教会が権威を獲得していった経緯や、19世紀(日本の明治時代初頭)に国家を一旦(約60年間)失ったことで現在の世界的なネットワーク構築の素地になったことなどが概観される。出版当時の教皇…

新自由主義の自己責任・競争社会が生み出す景色

新自由主義経済が進むと格差社会になる、苦しい社会になる、とはよく聞く話だけど、金敬哲(キム・キョンチョル)著『韓国 行き過ぎた資本主義』はそれが具体的にどういう世界なのかを見せてくれる。 韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談…

山崎豊子『沈まぬ太陽(1)』

https://bookmeter.com/reviews/90594927 御巣鷹山の日航機墜落事故をモチーフにした小説という漠然とした理解で読み始めたら、いきなり主人公がアフリカのサバンナでゾウを狙撃していたので驚いた。現在の感覚では、企業による懲罰人事(内部告発やリストラ…

立川吉笑『現在落語論』

https://bookmeter.com/reviews/90594901 落語が伝統性と大衆性に引き裂かれるという話は、例えば小説が純文学とエンタメに二分されるのと同じで、恐らくジャンルやメディアに関係なく芸術一般が過去の成果に対してより微細な差異を追求して高度化していくと…

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!』

https://bookmeter.com/reviews/90529582 国谷裕子が『キャスターという仕事』の中で、テレビというメディアが視聴者の感情を一体化するように働き、さらに強化する特質があると指摘していた。国谷氏がキャスターとしてその特質に抗うように仕事をしていた姿…

河野稠果『人口学への招待』

https://bookmeter.com/reviews/90529521 人口に影響するのは、出産・死亡・移動の3要素だが、そのうち最も大きな影響を与えるのが出産であるため、本書は大半が少子化・出生率に関する様々な学説や理論、データの紹介に充てられている。出生率の高低が、実…

広瀬和生『21世紀落語史』

https://bookmeter.com/reviews/90529442 客を笑わそうとするのではなく、つい笑ってしまうようでないといけない、何気ない会話の中で二人の関係性が浮かび上がってこないといけない、と考える柳家小三治が、08年に「千早ふる」を演りながら二人の会話を聞い…

柄谷行人『マルクスその可能性の中心』

https://bookmeter.com/reviews/90529387 一旦構造が形成された後から見ると、構造の結果がその原因としてしか見えなくなり結果と原因を取り違えてしまう(遠近法的倒錯)という指摘がされる。そしてこの倒錯に立脚して考えることで、さらに起源が見えなくな…

斉須政雄『フレンチ十皿の料理』

https://bookmeter.com/reviews/90529349 専門家の独特の言語感覚や概念を知るのは楽しい。神田裕行『日本料理の贅沢』もそうだが、全ての工程と素材の選択には合理性があり「こうすることになっているからそうしている」は一切排除されている。「なぜそうす…

板橋拓己『アデナウアー』

https://bookmeter.com/reviews/90529305 アデナウアーが首相として強権的に長期政権を維持したことでドイツは第二次大戦後に民主主義を定着し得たという指摘は、一見逆説的なようだが、「アラブの春」により中東各国で長期独裁政権が倒されたがチュニジア以…

中沢新一『アースダイバー』

https://bookmeter.com/reviews/90529244 こうしたインチキの体系を構築・提示するところに中沢新一の魅力がある。例えば占星術の精緻な体系がその精緻さそのものに魅力があり、時に新たな視点を人に与えるのと似ている。東京を沖積層(かつて海だった低い湿…

野口孝行『脱北、逃避行』

https://bookmeter.com/reviews/89506328 前半が中国→ベトナム→カンボジア→日本と脱北者を逃がす仕事(成功例と失敗例)の話、後半が中国の地方で8ヶ月間の拘置所生活の話で、どっちも想像したことすらない話ですごく面白い。拘置所は厳しい面とものすごく緩…

川北隆雄『財界の正体』

https://bookmeter.com/reviews/89506289 財界(日本経団連や同友会)が一貫して消費増税賛成なのは、法人税引下げと厚生年金・健康保険の企業負担引下げの財源にしてほしいから(ただし日商は中小企業の代表であり消費増税によるダメージの方が大きいから消…