やしお

ふつうの会社員の日記です。

リドリー・スコット 『ワールド・オブ・ライズ』

 結局、局所的にはともかく、大局的には他人の掌の上で躍らされていたのみで、自らの意図どおりには進んでいないにもかかわらず、それについての悔しさは別に表明せず、あっけらかんと幸福そうな顔で幕を引く主人公・レオナルド・ディカプリオのやっぱりどうしても聡明さとは縁遠い顔を楽しむ映画。
 ところで、『アメリカン・ギャングスター』同様、リドリー・スコットが冒頭に字幕で「これは現実の出来事なのだ」と入れるのはフィクションに対する臆病さによる。映画にせよ小説にせよ漫画にせよ科学にせよ、<作家は、一方において、自己の作品全体を「仮構」と断言し得ることによって、まさしく作家の名に値し、他方において、自己の作品全体を「真実(現実的)」と主張し得ることによって、たしかに作家の名に値する。>残念ながら、ついにフィクションでしかあり得ないことへの意識の欠如は、リアリティをもたらしはしない。