やしお

ふつうの会社員の日記です。

地震後の帰宅途中で目にした黒人のことと、私が鈴木になりたい話

 12日は8時間かけて約32kmの道のりを歩いて帰宅しました。(歩いたのは正味7時間ほど。)1人では無理ですが同期6人いたので頑張れました。
 途中で目にしたことについて、2つほど。

その1

 比較的早いうち(19時少し前)に珍しく開いていたローソンに寄ったときのこと。ガタイのいい黒人男性がレジに並びながらずーっと割と大きな声で独り言を言っていました。神がどうのうこうの、カレーがどうのこうのという話をしていました。周りの人はうつむいて黙って彼だけが話し続けていました。
 レジが彼の番になると思いっきり店員さんに向かって神云々の話をし始めたので店員さんは困った顔をしながら「はあ」とか何とか答えるばかり。ついに清算も済んだところで黒人男性は「アリガトウ」とさわやかに言い残し、店員さんも「ありがとうございましたー」と返したので、私はにっこりしました。
 最初は何だろう何だろうとどきどきしましたが後で、ああ、あれは混乱していたんだな、不安だったんだなと想像。ただ、彼の不安の表し方に不慣れな私たちが受け止めてあげられずに浮いていただけで。


 カレー云々は、たぶん彼がカレー味のカップ麺を買ってたからだと思います。(おにぎり、パン、カップ麺はほとんど売り切れの中、なぜかカレー味のカップ麺だけが残っていました。)

その2

 歩いていたら、NTTの人たち(どこの事業所かは忘れた)が事業所の門前で暖かい缶コーヒーを配っていました。
 私たち6人も受け取って、有難い事だと言い合っていると、そのうちの一人が「みんな微糖なのに、俺だけちゃんとブラックになってる」と言い出しました。彼の苗字に「黒」の字が入っていたからです。
 私が対抗して「だったら俺には家がもらえるのかな」と言いました。私の苗字に「家」の字があるからです。けれど本当に家が必要なのは私じゃない。被災地の人たちなのだ。私の苗字を寄付してみんなの家が確保されるなら、私は「鈴木」とかでいいです。




 しかし現実には私の苗字ではどうしようもないので募金することにしました。三菱東京UFJ銀行が、NGO:ジャパン・プラットフォームを窓口として募金用の口座を開設したとのことで、そこに2万円を振り込みました。
http://www.bk.mufg.jp/news/news2011/pdf/news0312_02.pdf
 家の頭金にすら到底及ばない額でしかないけれど、せめて。


 今まで募金なんて数百円のレベルでしかしたことなかったけれど、こうして8時間歩いて左の太ももの裏だけがまだ妙に痛くて(歩き方がたぶん下手くそ)、この痛みを引き起こしたのと同じ原因によって、比較にならない程の苦痛に苛まれている人たちがいるというのは、何か、本当に、他人事ではないという気にさせられます。
 もしかするとこの募金は、「自分は左太もも裏が痛いだけで済んだのに向こうではそれどころではない」という状態を、不公平さとして(理性的にというより感情的に)捉えた自分の、心理的な負担を軽くするためだけの利己的な行為なのかもしれない、とは思うものの、それで一方で自分が救われて、他方で現実的には多少でも役に立つなら、いいか、と思うことにしています。
 本当に、変な苗字をもらうよりも、きっと現実的にはずっと役に立つはずと信じています。