やしお

ふつうの会社員の日記です。

中原昌也『悲惨すぎる家なき子の死』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/19860434

「書くことがない」「書きたくない」という作中小説家の吐露を作者の心情と直結して、現代に小説を書く困難や欺瞞云々を語ったり、醜悪な場合にはそれをただのポーズと見做して非難や激励することが完全に無益とは言わないまでも、その前に、もっと単純に、この短編集はすげえ面白いってまず言いたくなるよ。短編の間で時間と出来事が交錯する感覚が好きだし、その中で不可解なイメージが重ね合わされたり、あちこちで吹き出させられたり……それらを個別にできる人はどれだけでもいるけど、同時に実現してなお切実であり得る人はどれだけもいない。

悲惨すぎる家なき子の死

悲惨すぎる家なき子の死