やしお

ふつうの会社員の日記です。

陰謀論の行方

 たとえば原発がらみの大規模なデモがそんなに報道されなかったり、芸能人のだれそれを急に見なくなったりすると、どこそこから圧力がかかったんだ! みたいな陰謀論が出てきて、そんなのを目にするたびに、たぶんちがうんだろうなと思ってるの。
 具体的に利害関係のあるところから直接圧力がかかったというより、先回りして自粛した結果なんだっていう方が自分の中ではリアルだよ。もちろん、信じられないくらい上の方から突然話が下りてきて、現場の人間が「課長ッ! どうなってるんすか!!」「俺だって悔しい。……しかしここは、我慢してくれ」「くそっ! くそっ!!」とかいう話のほうが夢がある(?)けど、現場か、せいぜい部長レベルくらいまでが「いやぁー、これまずいよなあ」と言って自主的に控えてる姿の方が、ある程度大きな会社で働いてるサラリーマンの自分としてはイメージしやすい。そして誰かが控えるのを見て控えるの連鎖で、本当はごく小さな単位がめいめい勝手に整列しただけなのに、ほとんど時間をおかずにぴったり目に見えて一方向への整列が現れてしまうものだから、まるで一元的にどこかから圧力が加わったように見えてしまうという。なにせ空気を読み合うことが強要されてる社会だからね。
 ま、ほんとのところどっちかなんて、ぼくは知らないよ。誰も知らないからこそ出てくる陰謀論なんだしね。


 ちなみに今までで一番びっくりした陰謀論は、さかなクンに関するやつだ。
 ぼくが知り合いと一緒に部屋でテレビを見てたら、旅番組か何かで魚市場だかを見学してた。芸能人たちの一人にさかなクンがいて、相変わらずギョギョーッ! ギョエーッ! って叫んでた。もうずーっと叫んでて、フレームアウトして本人の姿は見えないのにギョギョーッ! ギョギョーッ! どころかとうとう、ティンッ! ティィーンッ! ヒィヤァーァ! とか叫んでて、ぼくはもうゲタゲタ笑ってたの。でも知人はまじめな顔して「これ、ヤラセじゃないの……」とか言い出した。
 彼が言うにはこうだ。このさかなクンの声はロケでその場で録られたものではなく、後からつけ足されたものだ。つまり、ヤラセだと。
「意味がわかんない!」
「でもいくら何でも、こんなにずっと叫んでるなんておかしいよ」
「いやいや、おかしかったとしても、後から声を足す方がおかしいでしょ!」
「いや、盛り上げるためにさ」
 最初、冗談で言ってると思ったんだ。でも彼は本気で言ってた。
 もうぼくは、ただでさえ可笑しかったのに、変な陰謀論まで出てきたもんだから、ゲータゲタ笑って息ができないし、知人はむっつり黙ってるし、テレビからは姿も見えないのにピヤーッ、ピギャーッ! って聞こえてくるし、もう、とんでもない幸福だった。