やしお

ふつうの会社員の日記です。

網野善彦『異形の王権』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35189466

後醍醐天皇のときに「天皇の家に変な人入ってきて汚したりするからやめて」って禁止する法律を政府が出した、って紹介があってびっくりする。鎌倉→室町の転換点に位置し、異形の者どもを周囲に置き、自らも法衣で幕府の滅びを祈祷する異形の天皇。いったいどんな点で異形なのか、どんな状況から出てきたのかの論考が3章で、1、2章は異形ってなんだ、というお話。服装(頭巾や柿色の服)、アイテム(棒とか)、仕草(石を投げること)などを絵資料を見つつ考える。被差別民が元は聖性を帯びていたり、逆に聖→俗の転換の指摘もあっておもしろい。


 基本的に、「服や持ち物や仕草が変わるというのは、人々の意識の変化も伴っているはずだ」という認識があるのかもしんない。
 見た目が変わるから意識が変わるのか、意識が変わるから見た目が変わるのか、っていう鶏-卵論争みたいな問題設定じゃなくて、ただ、どうしようもなく両方変わっちゃう、だから文字の資料と絵の資料の両方を見てかなくちゃだめだ、っていう意識。


 近い話でも着物がスーツになってネクタイしてたのがクールビズになって崩れてきて、みたいなところにだって意識の変化と服装の変化が両輪みたいにして起こってるんだろうし。
 なにかきっかけになる出来事はたしかにあったのかもしれないけど、きっかけがあればそれで進むかというとそんなことないもんね。ダムに穴があいたって、もとから水位が同じなら水も流れない。水位差があるからきっかけがきっかけとして機能するんだ。


異形の王権 (平凡社ライブラリー)

異形の王権 (平凡社ライブラリー)