やしお

ふつうの会社員の日記です。

富士急ハイランドで命かんじる

 昨日いってきた。忘れないうちにメモする。


 去年はじめてディズニーシーに行った。遊園地にいくのは十数年ぶりだった。コースターなどのびっくりマシーンにもとても久しぶりに乗った。これは生命の危機を感じるってことなんだなと思った。特にタワー・オブ・テラー(勢い良く上下するやつ)でそう思った。普段の生活で味わうことのない加速度の方向や大きさを与えられて、無重力になったりして(死ぬ!)って感じる。理性的には絶対に安全だとわかっているから実際には(死ぬ!)という言葉を想起しないけど、感じ方としては死。
 それをもっと強度を増して味わったらどうなのかなと気になっていたので、富士急ハイランドに行こうと思った。


 びっくりマシーンとしてはFUJIYAMAとドドンパと高飛車に乗った。(数日前にオープンしたばかりの富士飛行社にも乗ったけど、恐怖のびっくりマシーンというのではなかった。)
 やっぱりディズニーのおシーで確認した通り、まずは生命の危機かんじた。「おぉーっ」「うぉーっ」「うわーっ」と自然に叫びながらわかったのは、このとき全身で対処しようとしていたということだ。足を踏ん張ったり、手に力をこめたり、逆方向に体を寄せたり、ほとんど無意識に対処行動をとっていた。それを全力でやっているので、恐怖する気づかれとは別に、終わったあと肉体的にもくたくたに疲れている。
 これは「どれだけ体ががっちり固定されているか」で恐怖と疲労感が変わるのだということがわかった。身体固定度で言えばドドンパ>高飛車>FUJIYAMAで、FUJIYAMAは身体が浮くたびに一生懸命ふんばったりしていてとても疲れた。一方ドドンパは体ががっちり固定されていてあまり怖いと思うところがなかった。
 ドドンパは時速170kmで飛び出すという売りで、速く動くためにあまり細かな動きを入れられないのも怖くない要因だったのかもしれない。気持ちよかった。
 がっちりホールドされていると怖くない。よくわかりました。


 そしておシーと異なるのは、この「怖くて一生懸命対処している」状態で終わらなかったということだ。FUJIYAMAと高飛車では、途中まではあの全力で免れるようとする行動が続いていたのに、あるときふいに、全部あきらめてしまうのだ。途中から突然、絶叫するのもやめて、体に力を入れるのもやめて、恐怖だけをそのままにして、ただ身を任せている。ふと自覚するのだ。(こんな風に叫んだり、頑張ったりしなくても別にいいんだ、もうどうでもいいんだ)とはっきり思って、そこから黙っている。これは精神的な気絶だと思った。
 もしビル火災や、テロ集団の人質にされたりしたら自分はたぶん、(ああ、もういいです、もう楽にさせてください……)とすぐ諦めるタイプなんだろうなと前々から思っていたけれど、それが実証されたのかと思ってとても新鮮だった。おシーではそこまで追い詰められないので確認できなかったことだ。生きるのを諦めるということを体験できるなんて驚きだった。


 そうやって諦めのフェーズに入っても、別に怖さが低減する訳じゃない。いちばん怖かったのは、高飛車の真ん中あたりで仰向けでゆっくり最高ポイントに上昇していくところだった。さんざんぐるぐる回されて、もう諦めの中に入ったところで、これがきた。
 このときもう、「ううぅぅぅぅん……うぅぅん……」とずっと小さな声で唸っていた。風邪をひいて発熱してつらいときに唸っているのと似た感覚だった。そして最高ポイントに到達したあと、逆にうつむきになって地面を向かされたところで、一瞬停止している間も「はぁー……」とため息をただついていた。
 ただもう息を吐いてストレスに耐えている。諦めのあとでなお怖ければこんな風になるのかと知ってとても面白かった。面白いというのは事後にふりかえってのことだ。


 ちなみに、ええじゃないかは乗らなかった。時間がなかったのと、外から見ていてもあれは、人間扱いじゃないと思った。「人がゴミのようだ」というセリフが眺めていてぴったりだった。非人道的な扱いをあえて受けるには及ぶまい。
 ええじゃないかに限らず、とにかく人間をあんな風にふりまわしていいわけがないということだ。ちゃんと真っ直ぐに立って歩く、座る、横になる、重力方向に対して人間にとって適切な位置関係を守ることだ。


 列に並びながら、中高生がグループで楽しみにきているのを見るとどこか羨ましい気になって、でも自分はみんなでわいわいする学生時代を送っていなかったので、しょうがないです。さみしい気もするけど、この30手前のおっさんになった今でないと、こんな風に考えたり捉えようとしたりはしなかったはずだと思えば、とても幸せなことだ。
 大変疲れたのでもう行きたくはないけれど、かなり色々なことが実感としてよくわかったので有意義だった。




 全くの余談だけど、園内パンフレットに訂正の紙が入っていた。



 富士飛行社が19日オープンだからそれに合わせてパンフレットを作り直したんだろうけど、それが間違ってたみたいだ。
 でもグレートザブーンは20年前に開業しているというのに、どうして全箇所で「クール ジャッパーン」というありもしない名前に変わっちゃうのか。
 本当に不思議だし、どんな事務手続き上の齟齬やミスや経緯があったのかと思うと、本当にこういう「事故」は(担当者の気持ちを棚に上げれば)楽しいし大好きだよ。