http://book.akahoshitakuya.com/cmt/40402693
地理的条件を起点にマクロに歴史を組織する点で見事だけど、ミクロな要素に物語が脅かされない点で退屈、という上巻の感想以上のものは特になし。例えば本書で一瞬言及されたソシュールの方が圧倒的なパワフルさで組織して唖然とさせられるし、社会形態の展開で言えば本書のリニアなモデルより柄谷行人が4象限モデルで経済も統治機構も貫いてみせた姿の方がわくわくさせられるし、そんな記憶の前でちょっと退屈だった。でも、人種や文化の劣等性で説明する連中を黙らせるために、一つの反証を提示して無効化しておくという働きだけでも有意義な本。
文庫で上下分冊計800ページはいくらなんでも冗長すぎる。新書で1冊にまとめてくれれば、もっと気持ちよく(ああ、よかったなあ)の気持ちで読み終えることができた気がする。
「地理的な条件だけでマクロな人類史(なぜヨーロッパが制覇したか)は記述できる」という主張でまとめると上の図みたいな感じ。ちなみにほぼ同条件の欧州に中国が敗けたのは、中国の海岸線が滑らか過ぎて(朝鮮半島と台湾くらいしかない、日本は少し離れすぎている)一国支配が可能になって競争原理が消失したからとのこと。
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
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