やしお

ふつうの会社員の日記です。

鈴木宗男『政治の修羅場』

http://bookmeter.com/cmt/45066185

政策論より人間関係の話メインだけど、考えてみたら国会/政治家の仕事って実務より意思決定のための機関で、しかも基本は一人一人が「国民の代表」という位置づけで優劣がない状態なので、全体の意思決定に対していかに影響力を持ちうるか、自分の意思・国益を実現できるかっていうのは結局、人的ネットワークをどう構築して人を動かせるかに帰着する面がある。人間関係と政策論がセットで初めて実効性があるという。あと世間とマスコミの相互作用でできあがる政治家の人物像と、内部から見た像がいかに乖離しているかよくわかって楽しい本だった。


 それから結構、内在的な理屈がかいま見えるところも面白かった。
 例えば中選挙区から小選挙区選挙制度が変わったけど、中選挙区だと同じ党の仲間とも戦わないといけないので、差別化をはかっていかないといけなくなる。それで自身の専門性を磨いていく契機になっていく。ところが小選挙区だと基本的に他党の候補者としか戦わないので、一人で広範な問題に答えられないといけなくなる。そうするとなかなか専門性を深めていく余裕がなくなっていく、とか。


 あと首相を回していくという感覚。この人が2期4年やって、次はあの人、あいつにはもう少し我慢してもらって……という感覚。(ひょっとしたら派閥の力関係が昔とは違うので今はそうじゃないのかもしれないけど。)長期政権を築くというより、必要に応じてトップを回していくというこの感覚は、大統領制をしいている国、政治的なリーダー個人に国家を体現させるという発想とは全く違うってことだなと思った。内閣制で、首相はその名の通り大臣たちの筆頭でしかなく絶対的な存在ではない、という。国家を個人の上に体現する役割は天皇に担わせているから首相がそれを負う必要がない。
 でもそれだと首脳同士で相対する場合に、相手側からは国家を体現していると見做してくるけど実際にはそうではない、という齟齬が起きるけど、それによってどういう不都合が起きていくんだろうか。あるいは名誉職(?)として大統領を置いているけど政治的なリーダーは首相が担当しているドイツなんかとどれくらい似ているんだろうか。


 それから、国政の政治家が最低限おさえておかないといけないのは、安全保障、外交、治安、教育の4点なんだという理解が示されていてなるほどなと思った。国家という装置の外方向、内方向に対するコアの役目は何なのか、という認識がコンパクトにまとまっている。


政治の修羅場 (文春新書)

政治の修羅場 (文春新書)