やしお

ふつうの会社員の日記です。

中上健次『鳳仙花』

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マクロで見てもミクロで見てもみっちりしてる。子供だったフサが母親になる物語の中で、父の違う子を生むこと、娘を奉公に出すこと、兄=息子が大人の男になること等々が変奏されて、でも鉄道ができていたり見ている位置や時代が違う。一瞬一瞬で見ても、思考が語られてもそれが長続きする前に花や木や水の光景が具体的に描かれて思考と絡まっていく。それで遠くで見ても近くで見てもみっちりしてる。色んな人が「フサ」と呼ぶ声に満たされた中で、最後近くで突然「西村」という名字が現れて、系譜的な面が抑圧されていた事実を急に突きつけられる。

鳳仙花 (新潮文庫)

鳳仙花 (新潮文庫)