やしお

ふつうの会社員の日記です。

石田敏郎『交通事故学』

http://bookmeter.com/cmt/49112287

「そもそも交通事故って何だ?」という問いを徹底して問うことなしに、「交通事故」の要因を並べ立てただけのものを「学」と呼ぶことは許されないはずだ。本を読むのは、既知の事実や常識を追認してなぐさめてほしいからではなく、それらを疑い直してよりクリアな視界をもたらす契機がほしいからだ。事故要因にはこれがあります、なので気を付けた方がいいよね、という話の羅列だけではその契機を期待するのは難しい。著者が悪いんじゃなくて新潮新書の性格だと思ってる。でも未知の話もあって(センターライン廃止で事故抑制とか)時々面白かった。


 へえーと思ったあれこれのメモ。

  • 人間の反応時間が最も短いのが20代で、60代になると倍近くまで伸びる。
  • 運動残効:信号待ちで停止したときに自車が後退しているように感じる現象。速度感への順応に時間がかかるために起こる。(ひょっとして信号待ちでずるずる前進する車はこれが要因の一つなのかな?)
  • クロソイド曲線:かつてアウトバーンを真っ直ぐに作ったら事故が多発したので、日本の高速道路はわざと真っ直ぐにならないように作られている。
  • 運転中の携帯電話使用での事故遭遇率は、ビールを大瓶1本半飲んだのと同じくらい。
  • 青信号前のフライング発進を調査したら、東京1.84秒、大阪4.92秒、ロンドン0.37秒、シュツットガルト1.27秒、マンハイム0.10秒で、日本、特に大阪が悪かった。調査中、大阪では赤信号のうちに左折を完了した車さえあった。
  • センターラインは道幅が5.5m以上あると義務付けられる。愛知県警では路側帯を大きくとってわざとセンターラインを失くした。センターラインがあると車が優先意識を持ってしまい減速を怠る傾向にあるため。実際、施行した15路線で事故が半減した。ただしセンターライン不在が長く続くとドライバーにストレスを与えるため、距離を調整した。


 あと、20代前半はリスクテイキングな運転が多いという話を聞いて、実感としてもよくわかる気がした。ほんとにスピードも出してたし、車間距離も詰めてたし、ギリギリを狙ってみたりしてた。それが20代中頃からもうどんどん穏やかな運転になっていった。
 たぶん心的な余裕がなかったんだと思う。自分は優秀だ! と思いたがっていた(自分への不安の裏返しとして)ことの一種の現れだと思う。
 リスク回避的な行動というのは、目に見えるような「車間距離を開ける」とかだけじゃなくて、「一応ブレーキペダルに足を移しておく」みたいなあまり顕在化しない部分が結構大きいんだろうなと思った。


交通事故学 (新潮新書)

交通事故学 (新潮新書)