やしお

ふつうの会社員の日記です。

フォークナー『響きと怒り(上)』

http://bookmeter.com/cmt/53803113

この第一章、聾唖で知的障害の33歳男の、時空間が混然となって記憶が次々に誘発されていく一人称の語りを、正確にコントロールしてしかも、ちょう切ないって、こんなこと可能なの。読んでると言語のへりを勝手に押し広げられる感覚、このために小説読んでるって気になる。巻末の注で時空間処理が詳述されててすばらしいけど、最初は注を見ずに、何のいつのどこの話か全く定かじゃないまま身を委ねてふいに読んだ言葉の記憶が次々にざわつきだして、主観的な記憶そのものに暴力的に巻き込まれていくって体験をもっと味わえば良かったと後悔してる。

響きと怒り (上) (岩波文庫)

響きと怒り (上) (岩波文庫)