やしお

ふつうの会社員の日記です。

井筒俊彦『『コーラン』を読む』

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日本語訳で読むということは日本語のコンテクストを引きずって全然違う景色を読んでしまうってことで、ましてコーランは時空間的に隔絶してる、だからコーランの邦訳者の私が成立の経緯や背景、文体の特徴等々をいっぱい説明してちょっとでも実際の景色に近づけてみるねって本。例えば「神を賛美する」って神すごーいやばーいって言うんじゃなくて、この世の全てがただ存在するだけで神を賛美してる、でも人間だけは賛美しない形で存在できてしまう、だから神を賛美するように=善であるように生きる、そういう含意がある、と見方を更新してくれる。


 第一章の開扉の章が、たった7節だけど、それを唱えればコーランの全部を唱えたのと同じことになる(実際、一日5回のお祈りで毎回唱えてる)、全部がそこに圧縮されている、だからそのまま読んだってだめで、その言葉ひとつひとつが引き連れてくる文脈やイメージを正確に理解しないとなんにもわからない、それで7節をまるまる一冊費やして読んでく、って本だった。
 講義録であまり整理せずにそのままに近い形で載せてるので、あんまり構成がしっかりしてないし繰り返しも多いしバランスもいびつになってる。
 神の名前について、終末ということについて、シャーマニズムとの共通点や相違点について、当時の生活(主に商人の)との関係について、先行するユダヤ教キリスト教との相対位置について、等々かなり広範なバックグラウンドを語ってくれる。


 これで仏教については渡辺照宏の『仏教』、『お経のはなし』、キリスト教については山本七平の『聖書の常識』、イスラム教についてはこの井筒俊彦の『『コーラン』を読む』を読んで、いちおう世界宗教のひととおりの聖典の解説を読んでみたことになったけど、なんかぜんぜん足りてない。


『コーラン』を読む (岩波現代文庫)

『コーラン』を読む (岩波現代文庫)