やしお

ふつうの会社員の日記です。

村上龍『愛と幻想のファシズム(下)』

http://bookmeter.com/cmt/55751605

黒幕、ラスボス設定されてた人物が結局、主人公とはっきり直接対決を迎えないまま、状況の変化に伴って物語上のラスボスの地位から曖昧に退場ってのが本当に素晴らしいよ。良質なエンタメ作家なら劇的な対決場面を用意して打ち負かしたりするけど、だって村上龍は最上級のエンタメ作家だからそういうことしない。もともとシステムのお話である以上、個人に還元しないっていう正確な態度だよ。本人も後書きで言及してるけど『コインロッカー・ベイビーズ』の双子の主題の変奏で、蓮實重彦の『小説から遠く離れて』を読み返して構造を確認したくなる。

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)