やしお

ふつうの会社員の日記です。

後藤明生『首塚の上のアドバルーン』

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マンションの窓の風景、から始まって色んな「首」関係がめちゃくちゃにたち騒いでくる。史跡、歴史、自分の身体、出来事、テクスト、地図、等々にぱっと入って関係あるようなないような繋がりで、迂回に迂回を重ねながら真相とでも言えそうなものに近づきそうになるとぎりぎりで回避して、でもそうしたスリルをあからさまにはせずにぬるぬると連なって、最初に戻るような戻らないような。小説の小説性は、論理体系を次々に適用させてみても人を馬鹿にしてるみたいにどんどんすり抜けていくものだけど、その運動そのものを見せてくるような変な小説。


 ズレに敏感で、ホンモノとニセモノ、史実と偽史、フィクションとノンフィクションの奇妙な重なり具合を見逃さずにどんどん突いていて、でも境界を確定させるみたいな不埒な振舞いは絶対に慎むという。


首塚の上のアドバルーン (講談社文芸文庫)

首塚の上のアドバルーン (講談社文芸文庫)