やしお

ふつうの会社員の日記です。

鈴木大拙『大乗仏教概論』

http://bookmeter.com/cmt/59883944

400ページにわたる大乗仏教に関する西欧の誤解の批判とコア認識の解説を読み終えたと思ったら、訳者後記で「この本は誤謬だらけで、事実誤認と都合の良い取捨選択で成立しており大乗仏教の解説ではない」と全否定されていて、でも「これが真の仏教」みたいな顔で自説を展開するのが経典だから、「大拙大乗経」だと思えば偉大って擁護が入ってほっとしてたら、続く解説で「実はこの本は別の人の本のパクリです」って指摘が紹介されて自説の展開ですらない、えっ、じゃあ俺が読んでたのはいったい何だったんだ、と途方に暮れる、すごい体験だった。


 鈴木大拙は生前、本書(もともと英語で執筆されていた)の再版を拒絶し続けてきたらしいけど、そりゃパクリで書いた上に、誤りを徹底的に批判されてたら、黒歴史だよね。
 それでこの本で展開されている説は、本来の大乗仏教というよりは日本に根付いた仏教に近いもので、むしろヒンドゥーに近い考えになっている、という。そうやってちゃんと訳者と解説者が相対化してくれているのはありがたいことだよ。