やしお

ふつうの会社員の日記です。

宮川眞喜雄『経済制裁』

https://bookmeter.com/reviews/63801812

経済制裁は、直接的な兵糧攻めではなく、物やサービスや金の流通を制限して流通コストを引き上げて相手国を弱体化させるか根を上げさせるという話で、流通コストが上がらないと制裁の効果がないから対象品や代替経路が条件になってくるという。後半で79年末のイランの米国大使館員人質事件を題材にして、アメリカが国際社会や国内にどういう根回しをして、各国がどう反応したり拒否したりして、どれくらいイランにダメージがあったのか具体的に経緯を追ってて、例えば一つでも具体例を知ると別のケースでそれ基準で比較して考えられるから助かる。


 日米開戦前に英米が日本に経済制裁を課してたら、日本は「じゃあ東南アジアに資源を求めよう」って結局開戦に至ってしまったのは失敗とも言えるし、でもその後日本の資源調達コストを引き上げて弱体化させて戦争に勝ったという意味では成功とも言えて、経済制裁の成否はゴールラインの設定の仕方次第だという。
 あと人道的に問題ということで国連決議でみんなで経済制裁する場合は食料や医薬品が除外される、一国単独とかで経済制裁をかける場合は調達コストが上がっても調達できないわけではないので特にそういった制約はなくなる。