https://bookmeter.com/reviews/64741738
中世でも近世でも、日本は農業(収穫高・土地)ベースで記録してたから、小作農・水呑百姓は土地もない貧しい農民と思われてたけど、公式ではない記録(ふすまに再利用されていた文書など)を辿ったら、実は大きな船を何艘も所有してた海運業者で、大金の貸し付けをしていたりしたことがわかって、実は公式記録に残らない「農業以外」で、それまでの想定よりもっと大規模、ダイナミックに流通や金融が日本で展開されてたっぽい、という話。オフィシャルな情報は整形されてて、いかにアンオフィシャルな情報を取り込めるかが正確な再現に重要なんだ。
専門家(学者)とかだと、「自分の専門外だから」とよく言及を避けることがある。それはプロとして良識的な態度だし、プロだからこそ「○○だ」と言い切るためには膨大な情報を集めて組み立てないと間違ってしまうことをよく知ってるからこその態度になっている。でも話を聞く側としては、口をつぐまずに「専門外だけど」と断った上で「こうじゃないかな?」とか「こう考えると面白いかも」といった話をしてくれた方がうれしい。
この本は著書というより講演録で、目の前にいる聞き手に向かって話しているものを収録している関係か、そういった「専門外だけど」の話がたくさん入っているおかけで、専門と専門外の両方の分野を含んだ全体の話を展開してくれるから読みやすい。(この著者の他の著書だと、その「専門外」は基本的に排除した形で語られるので、厳密だけどあんまり楽しくはなかったりする。)
- 作者: 網野善彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/07/06
- メディア: 文庫
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