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著作者と利用者の間で、どうしても感情の面(人格権)とお金の面(財産権)で衝突が生じてしまうので著作権法によって調整する必要がある。どっちにどれくらいの権利を持たせるのかという調節なので、正解があるというより全体にとって最も得になるポイントが目指される(はず)だし、メディアや流通形態といった前提が変われば当然再調整される、という世界だった。しかも利用者がさらに創作者でもあったりする。
本書で「疑似著作権(疑似知財権)」という現象の指摘があって、法的に問題がないが、当事者はあたかも法的な権利が存在するように振る舞うという。
IOCが「オリンピック」という名称は雑誌の表紙や広告に勝手に使うなと通達を出したり、FIFAが記事中では「FIFAワールドカップ」と正式名称で書いて「TM」をつけろと通達を出したり、ラーメン屋が店の料理を勝手に写真に撮られて雑誌に使われたとか、ペットの写真を勝手に撮られてSNSに載せられた等々。
こうしたことを個別具体的に解決する、「こういう感情の害され方をしたからやめてくれ」と言うのは普通のことだとは思うけれど、これを「法的にダメだから」と(実際にはそうではないのに)考えるのは権利感覚がおかしくなっている。
- 作者: 福井健策
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/01/15
- メディア: 新書
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