やしお

ふつうの会社員の日記です。

金井美恵子『岸辺のない海』

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金井美恵子の小説は、具体的な生活や会話や人間が詳細に描かれていく側面が大きい作品と、書かれることへの意識が持続的に呼び覚まされるような側面が大きい作品とがあってどっちも好きなんだけど(でも例えば『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』みたいにその両面ともが物凄く高度に実現された小説もある)、詩人から小説家になるこの最初の長編『岸辺のない海』は、その両面の萌芽が含まれながら、でも「書かれること」についてかなり直接的に語られているのが珍しいなと思った。

岸辺のない海 (河出文庫)

岸辺のない海 (河出文庫)