やしお

ふつうの会社員の日記です。

高槻泰郎『大阪堂島米市場』

https://bookmeter.com/reviews/81534861

米(石高)によって財産の多寡を表示するシステム、という世界がまずすごいけど、そのため米を金に変えるための市場が発達するし、市場ができれば金融取引も発達するし、バーチャルな市場や取引も出現するし、金融監督官庁(幕府)による制約もできるし、市場の信用を担保する技術も発達して、現在の証券取引のルールとも似通ってくる。「米」という現物の持つ制約に引っ張られている面もあって、取引は5~8月になると無休になりが特に梅雨・台風シーズンの6、7月は夜通し続く、とかも面白い。


 本書で書かれている内容をきちんと理解しようとすると、現在の証券取引の制度やルールの知識を一通りもって、そこと似ている点・異なる点の比較をしないとちょっとわからない。ゲームのルールをきちんと把握しようとすると、結局はゲームを体験してみるのが手っ取り早いということで、調べてみたらやっぱり(実際に株取引とかしなくても)そういうゲームアプリがあるのでやってみるのがいいのかもしれない。


 明治時点での商慣習でも、現金での決算が中心の江戸に対して、手形での決済中心の大阪、という違いが見られたとか、5~8月は休日も休まずに取引が続けられ、梅雨や台風シーズンの6~7月は夜通し取引が続く、6、7月以外は取引終了時刻が決まっているが、やめないので役人が水をぶっかける。ずぶ濡れになりながら専門の取引用語を怒鳴りあってひしめき合っている集団、という異様な光景になっている、とかいう話も色々面白かった。