やしお

ふつうの会社員の日記です。

森功『官邸官僚』

https://bookmeter.com/reviews/88967450

「側近官僚に全幅の信頼を寄せる首相」と「その期待に応えようとする官僚」の相互依存があって、そこに「政治主導・官邸強化の体制」が組み合わさると、とことんまで「国民のためではなく政権維持(支持率の維持)だけを自己目的化する政府」が出来上がってしまうんだろうな、と読みながら思った。ノンフィクション作家として本当に丁寧に取材と情報収集を重ねていて、ど真ん中の当事者(今井首相補佐官兼秘書官)のインタビューまでできているのは「ここまで書かれていると自分で言った方がいい」と思わせるレベルの情報量だからだろう。


 ここに出てくる官邸官僚は東大法学部卒ばかりで、たぶん一人一人がものすごく頭が良くて、それは「誠実である」とか「自分の役割に自覚的である」とかいう意味で頭が良いというより、「理屈を構築する能力がすごい」という意味で、理屈って前提の取り方次第でどんな結論でも原理的に無謬のまま導けるので、そういう無謬な話を持ってこられるとあたかも合理的な話に見えて納得してしまう。きっとこれが官僚が政治家を説得する能力で、これを仕掛けられて対抗するのはすごく大変だろうと思う。跳ね返そうとするにはどれだけ彼らの理屈を相対化できるかにかかっていて、それには政治家が別の情報チャネルをどれだけ持っているかが重要になってくるけど、かつての中選挙区制の方がその点では政治家側に自分で勉強したり官僚と対抗するインセンティブが働いていたのかもしれない。
 官邸機能の強化、政治家主導脱官僚を進めた後で、自力で考えたり情報を収集できる能力に欠けた政治家が重要な地位を占めると、「政治家が主導できるシステムだけど、官僚が主導する」という状況が生まれて、「官邸を満足させて政権を維持できる官僚がはびこる」「官僚が全体の奉仕者ではなく官邸の奉仕者になる」が出現する、政治家と官邸官僚の共依存が生まれるんだろうな、と読んでて思った。


↓は本書が面白かったので、本書とその他の書籍やネットの記事も総合して官邸官僚のメンバーをまとめてみた記事。
安倍政権での「第二官僚」のメンバー - やしお


官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪

官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪

  • 作者:功, 森
  • 発売日: 2019/05/31
  • メディア: 単行本