やしお

ふつうの会社員の日記です。

伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

https://bookmeter.com/reviews/92083440

情報を入力される場所(器官)でカテゴライズして考えるのではなくて、どう処理されるのかで分類した方が、より正確に視覚障害者を捉えられる、っていう認識の逆転が面白い。例えば「読む」という行為も視覚情報だと単純に見なしてしまうと、視覚を失った人は「読めなくて大変」になるけれど、情報の処理のされ方で考えるともっと幅広く「読む」行為が存在していることが分かる。入力器官で考えると視覚を第一にしたヒエラルキーになってしまうが、その認識を変えないといけないという。



 本書は視覚障害者がどのように工夫して暮らしているか、どこに困っているか、といったエピソードを色々紹介するというより、むしろ健常者が障害者に対して無意識に前提してしまうような優位性のありかを特定して転倒させるような試みになっている。その意味で、どちらかというと抽象的なというか形而上学的な話のボリュームの方が多くなっている。ただ本書の帯はどちらかというと前者を紹介するような見た目になっていて(ミスリードとまでは言わないけれど)ちょっと思っていた内容と違った。個別具体的な話ももっと知りたかったのでその点物足りなく感じた(が、それは本書のせいではなく、単にミスマッチだっただけ)。