https://bookmeter.com/reviews/94989225
文化人類学者(33)が70年代のタイで僧侶になってみた話。異世界転生みたいで面白い。日本で「修行」と言うと「肉体や精神を追い込んで内面的に成長する」みたいなイメージだけど、タイの仏僧修行は全然違う。内面がどうとかは関係なく、戒律を外形的に正確に守っているかが重要になっている。かえってその方が誠実じゃないかと思えて、価値転倒を体験させてくれる。タイ人にとっての徳や業は重苦しいものではなく、日常的にプラスとマイナスを考えてバランスを取るものという考え方も面白かった。なお著者は30年後に文化庁長官になっている。
その頃、タイの反日感情が高まっている点にも触れられていた。↓の「野口ジム事件」にも名指しは避けつつ言及されていた。タイの伝統的ボクシング(ムエタイ)を「キックボクシング」という名前で普及させようとした野口修が、バンコク市内に「キックボクシングジム」を開設して、タイ人からは「経済面だけでなく日本は国技さえタイから奪おうとしている」と大きな反発を食らったという。
野口ジム事件
- 作者:青木 保
- 発売日: 1979/02/10
- メディア: 文庫