やしお

ふつうの会社員の日記です。

柴田友厚『ファナックとインテルの戦略』

https://bookmeter.com/reviews/110422770
米国の工作機器メーカーが衰退したのは「当時の主要顧客の声を聞きすぎたから」という指摘は、他の業界でもよくある話だと思った。主要顧客が自動車・航空産業で、高精度の切削を要求された結果、技術的に劣る新技術(マイクロプロセッサ)に移行できず、従来技術のハードワイヤードに固執せざるを得なかった。一方で日本メーカーの主要顧客は高精度より柔軟性を求める中小企業だったために新技術に十分に取り組めたという。産業力全体が国全体として劣っていたことが、縛りをなくして追い抜くための素地になっている。


 たとえばデジタル一眼レフカメラが、ニコンキヤノンが強かったが、ミラーレス一眼へ移行した際にソニーに大きく水をあけられたのも似たような話かもしれない。電子ビューファインダーより、物理的なミラー+ペンタプリズムで作るファインダー像の方が性能が高く(遅延などがない)ユーザーの期待を裏切らないためになかなかミラーレスへ移行できなかった。


 あと、既存事業と新規事業は目標や課題が異なるので組織として完全に分離して、ただし経営層は外部環境(既存分野の衰退や新規分野の伸長)を見極めながら、資源(人員や資金)を配分していく、というセオリーを紹介していて、頭でわかっていてもなかなか現実には成功しないんだろうと思った。