http://book.akahoshitakuya.com/cmt/9959558
「これ、もっと小さくした方がいいなら手伝いましょうか……?」(p.203)の瞬間、笑いを通過して呆然としてしまった。一瞬の後、大笑いしたけれど、これはひどい。みんないなくなって残された女二人なのに決定的に他人なのだ。絶対に相手は自分を分かってくれないし、自分は相手を分からない。その他人でしかあり得ない二人がその後、無償の(何の役にも立ちはしない)奇跡にたった二人で立ち会うのだ。それを私たちが見ている。なんだこれは。それにつけてもこの二人をそこへ追い込むために舞台を整え、謎も提示し、解決してゆく技術力の確かさ。
と思う気はまったく嘘ではないんですが、やっぱりこの人の小説は、どうしても感覚的に分かる気がして、そしてそれ以上ではないように思えて、手放しで面白いとは思えないのでした。
ストーリーテラーとして本当にしっかりしている、例えば最後の最後の奇跡にしたってp.67のスプーン曲げのところで伏線がきっちり張られているわけだし、と思うのだけれど、それでも使われていく言葉の選び方がどうしても分かってしまうので少しだけ退屈でした。音にも色にも匂いにもしっかり気を配ってあるなあ、描写してるなあ、とも思うけれど、ほどほどなのね。そう冷静に考えてしまう暇も与えずに唖然とさせてほしいんだ! と人のことを言うのはいくらでも簡単ですね。
あとどうしても、いくらなんでも、と思うのはp.202の「終わる」の連続で、安直に過ぎるぜとは思うのでした。あんな処理の仕方はガッカリ。一瞬で読み飛ばしちゃう。
- 作者: 本谷有希子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/05/15
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 74回
- この商品を含むブログ (219件) を見る