やしお

ふつうの会社員の日記です。

平野久美子『テレサ・テンが見た夢』

https://bookmeter.com/reviews/99999811 テレサ・テンは、母親経由で大好きになった。単に「歌謡曲の歌手」ではなく、その生涯は台湾・華人社会の歴史と強くリンクしている。父親は共産党に敗れ台湾に渡った国民党の軍人で、貧困の中で育つ。偽造旅券事件も…

磯田道史『近世大名家臣団の社会構造』

https://bookmeter.com/reviews/99999790 武士と一口に言っても、内部は侍・徒士・足軽の3層構造になっていて、各層の経済構造や世代交代・階層移動の様子は大きく異なっていたという。それも江戸時代の初期か後期かでも変化がある。一つの家・人物など個別…

半沢隆実『銃に恋して 武装するアメリカ市民』

https://bookmeter.com/reviews/99194576 アメリカの銃規制反対派の言い分を紹介する本。そういうロジックになっているのかと面白かった。「国家権力に一定の縛りをかけて市民社会を守る」が民主主義のベーシックな考え方だという理解はあったけど、それが「…

齊藤忠光『都道府県と市町村の成り立ち』

https://bookmeter.com/reviews/99194530 日本の地方行政区分を古代~現代まで時間軸に沿って概説する本。主に明治期の藩→県への編成の変遷や、市町村体制が形成されていく過程がメインで扱われている。なぜ全て県ではなく都道府県の4種類あるのかとか、「郡…

中川淳一郎『電通と博報堂は何をしているのか』

https://bookmeter.com/reviews/98946499 広告代理店(特に電通)の、ブラック、中抜き、利権などのネガティブイメージが生じる構造が少しわかった。広告の仕事がもともと明確なゴールを持ちづらく「際限なく時間をかけられる」ため、長時間・大人数をかけが…

和田泰明『小池百合子 権力に憑かれた女』

https://bookmeter.com/reviews/98946483 炎上しそうな案件を見つける→問題を言い立てて炎上させる→正義・大義名分の側にポジション取りする、という一連の動きが小池都知事はめちゃくちゃ上手くて、そのサイクルを躊躇なく回せるので、ポピュリズムが成立し…

浦賀和宏『殺人都市川崎』

https://bookmeter.com/reviews/98946429 気付いたら人生の3分の1以上を川崎市で暮らしていて、土地へのご挨拶みたいな気持ちで本作を手に取った。この小説でいう「川崎」は、川崎市ではなく川崎駅以東ないし川崎区で、武蔵小杉が対局に位置付けられる、とい…

富岡多恵子『漫才作者 秋田實』

https://bookmeter.com/reviews/99999763 現代の漫才が形成されてきた過程の中で、漫才師ではなく漫才作者として大きな役割を果たした秋田實を、詩人の富岡多恵子が描く本。(富岡は上方お笑い大賞の審査員を務めていて、審査員長が秋田實、という縁がきっか…

小倉磐夫『カメラと戦争』

https://bookmeter.com/reviews/99999725 単純な国産カメラの戦後発展史というより、色んなアイデアが現れて、消えるものもあれば残ったものもあるし、商品化されなかったものもある、そんな歴史の幅を具体的に見せてくれる本だった。話題も開発者・設計者ば…

蓮實重彦『見るレッスン』

https://bookmeter.com/reviews/98946402 蓮實重彦が『シン・ゴジラ』をバッサリ否定しているのを見て、その立場だと当然そうなるよね、という気持ち。みんなが面白いと肯定した「官僚のやり取り」も「あんなのない方がいい」と切り捨てている。映画という形…

稲葉義泰『ここまでできる自衛隊』

https://bookmeter.com/reviews/98946375 自衛隊の活動が、各種ルール(国際法・憲法・自衛隊法)でどう縛られているか・根拠づけられているかを解説する本。装備や組織体系を解説する本はたくさんあるけど、この種類の本はちょっと珍しい気もするし、まさに…

架神恭介・辰巳一世『完全教祖マニュアル』

https://bookmeter.com/reviews/98946213 読んでいてふいに高専の美術部で部長をしていたことを思い出した。部長の私を含めて部員2名で、毎年一応勧誘はしていたけれど、ほとんど入らず、入っても定着しなかった。当時、部の活動は自由で縛りがないことを美…

小林秀雄『モオツァルト・無常という事』

https://bookmeter.com/reviews/99194612 天才の描き方のお手本みたい。読んでいるとモーツァルト、西行、源実朝といった人物やその作品が本当に素晴らしく、史上の宝物のように思えてくる。ただ、反証可能性がないというか、批評として開かれているという感…

正垣泰彦『サイゼリヤ』

https://bookmeter.com/reviews/96952471 「サイゼリヤが大好き」という私の気持ちは、美味しい・安い・居心地がいいといった理由だけでなく、「この会社の合理的な姿勢が好き」がものすごく大きくて、読むとまさにその気持ちをより強くしてくれる本だった。…

柳瀬博一『国道16号線』

https://bookmeter.com/reviews/96952368 国道16号線を軸に、地理・歴史・文化・産業など様々な事象を統合して語る本。「反証も挙げながら妥当性の高い帰結を採用して理論構築していく」という営みではなく、「ストーリーを補強できる事実やデータのみをピッ…

馬部隆弘『椿井文書』

https://bookmeter.com/reviews/96505847 江戸末期に椿井政隆によって近畿で大量に製作された偽文書が、「本物」として受け入れられる過程を描く。変なマナー(江戸しぐさとか)が昔からあるものとして定着してしまうのにも似ている。椿井政隆は、権利(支配…

金成玟『K-POP』

https://bookmeter.com/reviews/96431429 素質の良い者を選抜し、歌・ダンス・作詞作曲・語学など極めて厳しいトレーニングを課し、チームを組んで実戦投入する。軍の特殊部隊に近い。世界最高水準に到達する人が「運良く」出現するのを待つのではなく、コン…

森功『同和と銀行』

https://bookmeter.com/reviews/96405124 闇市で喧嘩に明け暮れてヤクザになり、さらに同和団体トップとして君臨した男と、貧しい漁村に生まれ唯一スーツ姿を見た銀行員に憧れ、高卒で都市銀行に入り支店長にまで出世した男が、ある種の信頼関係で結ばれて大…

村上春樹・柴田元幸『翻訳夜話』

https://bookmeter.com/reviews/96168634 村上春樹は、翻訳でも創作でも「文体は自分を限りなく捨ててもなお残るものを自分の文体と呼び得る」という認識と、「文章は人を次に進めなければならず、そのため文章にとって最も重要なのはリズムである」という認…

森川智之『声優』

https://bookmeter.com/reviews/96168580 声優でもあるが、事務所社長として若い声優の環境を整えたり、養成所講師として声優を育成したりもしている。教育のスタイルとして、学習のきっかけは与えるが、そのきっかけを拾えるかどうかは本人の問題、という割…

増田俊也『七帝柔道記』

https://bookmeter.com/reviews/95925269 「部活もの青春ストーリー」なのに、見たことのない地獄の光景で面白い。89年の北大柔道部が舞台の自伝的小説。コミュニティの新メンバーは、肉体と精神、自尊心をズタボロに破壊された上で、自分で「所属する意味」…

田中靖浩『会計の世界史』

https://bookmeter.com/reviews/95925171 複雑なシステムを理解するには、発展の過程を見るのが有効で、本書は会計という体系でそこを見せてくれる。「どういう時代背景と必要性で、何が生まれた/加えられたか」のひとつひとつの積み重ねを見ることで「なぜ…

寺西千代子『プロトコールとは何か』

https://bookmeter.com/reviews/95618421 外務省で国際儀礼(プロトコール)を担当していた人の本。単に「マナーを守って悪印象を与えない」だけでなく、国際機構では国の大小に関わらず一国一票なので、国公賓の接遇で外国要人に自国の好印象を与えることが…

鷲田清一『ちぐはぐな身体』

https://bookmeter.com/reviews/95528680 常識やジェンダーバイアスなどの通念と、衣服や装飾がどう距離を取るのか、あるいはべったりなのかという視点でファッションを捉えていく。読んでいて退屈だったのは、ギリギリまで突き詰めて思考の拡張に至る営みと…

竹中治堅『コロナ危機の政治』

https://bookmeter.com/reviews/95453659 安倍政権下の政府+自治体のコロナ対応の流れをまとめた本。どれだけ首相周辺の権力基盤が安定して強力でも、過去の地方分権改革の影響もあって知事との協働が不可欠になる。政権(経済優先)と知事(感染対策優先)…

成田龍一『大正デモクラシー』

https://bookmeter.com/reviews/95153097 大正期の民主主義(民本主義)運動は、帝国主義と折り合いをつけざるを得ないという限界がある。本書はそうした限界点も含めて(大正デモクラシーと直接関係ない出来事も含めて)紹介している。特に植民地を持ちなが…

山崎豊子『沈まぬ太陽(5)』

https://bookmeter.com/reviews/96229524 お互い高い能力を持ちながら、信念を貫いて組織の中で苦しい立場で耐える主人公と、主人公と袂を分かって組織に迎合しながら出世していくライバル、という対比は、まあやっぱ「映える」って感じはするし、読んでて楽…

山崎豊子『沈まぬ太陽(4)』

https://bookmeter.com/reviews/96229468 本業と別に不動産業やホテル業をやるというのは、この時代の日本企業の「あるある」かもしれないし、まして航空会社は観光業とも密接につながっていて無関係ではない。しかしここまで子会社を使って「世の中の利益で…

山崎豊子『沈まぬ太陽(3)』

https://bookmeter.com/reviews/96229110 ついに御巣鷹山への墜落事故が描かれる。主人公が遺族係という視点で事故や遺族の状況が語られていく。(なお主人公のモデルになった実在の日航社員は遺族係ではなく、当時は海外勤務だったという。)この辺の話は、…

山崎豊子『沈まぬ太陽(2)』

https://bookmeter.com/reviews/96229040 主人公がパキスタン(カラチ)→イラン(テヘラン)→ケニア(ナイロビ)と、西へ西へと左遷されていく。その辛さ・悲しさを描くのがストーリー上の主眼かもしれないけれど、あの時代の中東やアフリカの地で、主人公(…