やしお

ふつうの会社員の日記です。

平家物語の建付け・構造

今年の2月に兵藤裕己『平家物語 <語り>のテクスト』を読んですごく面白かった。平家物語のバリエーションの違いや生成される過程も考えて、平家物語がどういうテクスト・構造になっているのかを見ていく営みになっている。 その頃はアニメの『平家物語』も…

羽根田治『山岳遭難の教訓』

https://bookmeter.com/reviews/110423187 自分自身は山登りを一切しないが、ネットで遭難の記事を見かけると何となく読んでしまう。8日間さまよって自力で下山した64歳の事例を見ると、角幡唯介『空白の五マイル』(チベットの未踏の峡谷を探検するルポ)を…

小泉悠『現代ロシアの軍事戦略』

https://bookmeter.com/reviews/110839420 ロシアのクリミア侵略は「認知空間・サイバー空間での攻撃がすごい」と言われがちだけど、結局は旧来の軍事力がメインで、サブ的な要素に過ぎない、といった指摘をされると、たまたま直前に全然関係ない谷川浩司『…

谷川浩司『藤井聡太論』

https://bookmeter.com/reviews/110839405 普段は将棋の真理を追求する研究者、対局の序中盤は将棋の新しい世界を築く芸術家、終盤は勝利を求める勝負師、と3つの顔を棋士は持つべきという話は、意味の解釈/新たな解釈の実践/技術の追求のような、文芸なら…

山本紀夫『トウガラシの世界史』

https://bookmeter.com/reviews/109889732 こうして見ると、日本の「激辛ブーム」は、今生きてる人間からは単に「ブーム」に見えても、歴史全体で俯瞰するとトウガラシの受容プロセスの一環、不可逆的な浸透の過程になるのかなと思った。コロンブスが南米か…

すが秀実『1968年』

https://bookmeter.com/reviews/109889755 中核派を始めとする新左翼は、ベースの価値観がナショナリズムとナルシシズムで成り立ってた、という話はすごく腑に落ちるというか、現在の自称保守派と似てる。それを真正面から面前で批判したのが、1970年7月7日…

山田登世子『シャネル』

https://bookmeter.com/reviews/109889609 本書の解説では「ココ・シャネルの様々な特質は『嫌悪』の精神に集約される、本書はそれを証明している点で傑作」と書かれてはいるけど、本文を読むとむしろ、経済構造の転換期で、世の中のライフスタイルや価値観…

中村恵二、榎木由紀子『最新ホテル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版]』

https://bookmeter.com/reviews/109889565 コロナで旅行の機会が減ってから、なんとなくYouTubeで旅行やホテル滞在の動画を見るようになって、もうちょっと体系的にホテルの基礎知識を得たいという気持ちになってきて、あれこれ探して本書に行き着いた。業界…

奥田英朗『イン・ザ・プール』

https://bookmeter.com/reviews/109889517 刊行直後に16歳の時に買ってゲラゲラ笑って読んだ小説で、思い出深い。20年後に36歳の自分がもう一度読んだらどう感じるかなと思って買って読み直した。ゲラゲラ笑いはしなかったし、「当時はこのレベルのジェンダ…

荻上チキ『いじめを生む教室』

https://bookmeter.com/reviews/110839300 センセーショナルないじめ死亡事件が起こると、ワイドショーで「学校から逃げろ」と言われるが、現実のデータを見れば、言われるまでもなく学校から逃げて身を守っている生徒が現に大勢いて、教育機会から阻害され…

黒田草臣『終の器選び』

https://bookmeter.com/reviews/110423158 著者の両親が北大路魯山人の家の2階に住んでいた時期があり、その後も父親の遣いで魯山人のところへ通ったという。本書は陶磁器全般に関する解説書だが、魯山人がどういう人物で、やきものの世界に与えた影響も知ら…

鈴木哲也『セゾン 堤清二が見た未来』

https://bookmeter.com/reviews/110423133 児玉博『堤清二 罪と業』で清二の生涯や家族などの話はわかったので、もう少し具体的にセゾングループを構成していた各企業(西武百貨店・西友・無印・LOFT・ファミマ・パルコ・リブロ・インターコンチネンタルホテ…

松尾弌之『大統領の英語』

https://bookmeter.com/reviews/110423089 単に大統領のスピーチの紹介だけでなく、その大統領が登場した文脈やキャラクターと、使用される英語の特徴とを結びつけて解説されるので面白かった。Mr. Presidentという呼びかけが、大統領の呼び方が議論された際…

吉川景都・BAパンダ『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』

https://bookmeter.com/reviews/109889247 BAと漫画家の対話で進む漫画パート、「眉毛の描き方変えるといいよ」「眉毛!?」とか「眼球と骨のこと考えるといいよ」「眼球と骨!?」とか、「キーワードを単に絶叫するリアクション」が頻出するのに一度気付いてし…

志賀櫻『タックス・イーター』

https://bookmeter.com/reviews/110423060 目に見えて分かりやすい使途不明の税金(震災・コロナ・五輪等)は問題視されたり報道されるとしても、もっと恒常的に構造的に流出しているものの方は、仕組みが複雑で見えづらかったりして、政治家にとっても利益…

翁邦雄『日本銀行』

https://bookmeter.com/reviews/110423030 財務省悪玉論(財務官僚が政治家を増税に仕向けて日本の景気後退の原因になっている)は、財政規律を重視しない前提とセットでよく見かけるけど、そう単純じゃないはずだ、官僚が集団で馬鹿だと考えるのは不自然じ…

伊東ひとみ『キラキラネームの大研究』

https://bookmeter.com/reviews/110423000 「研究」というより事例紹介と軽い考察だった。新潮新書というレーベルとしては正しい軽さかもしれない。第二次大戦の敗戦・GHQの占領政策の中で、漢字使用の大幅な簡略化(5万字から1850字の当用漢字への縮小)で…

小山登美夫『現代アートビジネス』

https://bookmeter.com/reviews/110422959 この1冊で、美術のマーケットや現代美術がどういう考えで動いているのかが、かなりの部分理解できるかと思う。現代アートも、作品単体で見るとよく分からなくても、その美術史上の文脈を含めて見たときに価値が発生…

柄谷行人・浅田彰『柄谷行人浅田彰全対話』

https://bookmeter.com/reviews/110422847 「日本には露悪趣味的な共同体の作り方が伝統的にある」という指摘が印象深かった。偽善や建前を嫌い、本音を語ることを良しとする文化。理念を語る人には「自分は弱い、だがお前も弱い」と弱さの側へ引きずり込も…

大西美智子『大西巨人と六十五年』

https://bookmeter.com/reviews/110422817 ごく個人的な体験として、18歳で大西巨人の作品に出会って(こんな小説があるのか)とものすごく驚いて、巨人の小説・随筆を集中的に読んだ時期をもったことが、自分の人格や思想の形成に最も影響を与えていた。そ…

柴田友厚『ファナックとインテルの戦略』

https://bookmeter.com/reviews/110422770 米国の工作機器メーカーが衰退したのは「当時の主要顧客の声を聞きすぎたから」という指摘は、他の業界でもよくある話だと思った。主要顧客が自動車・航空産業で、高精度の切削を要求された結果、技術的に劣る新技…

大草直子『大草直子の”考えるおしゃれ”』

https://bookmeter.com/reviews/110422705 著者の自分語りのボリュームが多く、あまり体系的にファッションが語られてもいなくて、他の人のレビューでもその点で不満を持たれているようだった。これはたぶん、現状の固定化した自分のファッションを一旦解体…

尾脇秀和『氏名の誕生』

https://bookmeter.com/reviews/107192449 江戸から明治になって氏名制度が変わった結果、身分や職業とのリンクが外れて自由度が上がった側面と、改名の自由度は下がった側面と、両面がある。現在の氏名制度が「明治に国家が国民を直接徴兵するための個人の…

宮内悠介『偶然の聖地』

https://bookmeter.com/reviews/107192414 なんかおもちゃ箱を見せられたような気分で楽しかった。自分の好きなものやことをわっと詰め込んで、要素も流れもそれほどガチガチに固めずにぱっと提示していく。連載前の依頼内容は「エッセイと小説の中間のよう…

田崎史郎『小泉進次郎と福田達夫』

https://bookmeter.com/reviews/107192385 小泉議員は最近「小泉構文」と揶揄されたり「こいつは馬鹿にしてOK」みたいな風潮もあるが、もともと議員になる時に「世襲議員」としてものすごい叩かれ方をした後に、ものすごい人気が出たという上がり下がりを見…

柴田伊冊『航空のゆくえ』

https://bookmeter.com/reviews/107192353 「空の自由」「以遠権」といった概念を知られただけでも有益だった。コードシェア便があるとか、LCCが利用できるとか、探せば安い航空券もあるとか、どの国の空港でも搭乗手続きや航空券のデザインが同じとか、そう…

児玉博『堤清二 罪と業』

https://bookmeter.com/reviews/107192319 漠然と「失敗した経営者」のイメージで片付けられがちだけど、やっぱり日本の消費文化に与えた影響は無視できない大きさだった。セゾングループとしては解体しても、西友、無印、LOFT、ファミマ、パルコ、リブロな…

日端康雄『都市計画の世界史』

https://bookmeter.com/reviews/107192280 その時代の社会的課題・軍事的要請・技術的制約で「理想的な街」は変わるし、資金調達や現実の街の状況で「理想的な街」への近づけ方も変わってきて、時間的な重ね合わせで都市ができていく。時代ごとの町割の流行…

江守賢治『字と書の歴史』

https://bookmeter.com/reviews/106508591 書について基礎的な知識・概要を知りたいと思って探していたら、1967年出版の古い本だけど、本書の評判が一番良さそうだった。実際にとてもコンパクトに概説されていて、特に押さえておくべき人物・用語が網羅され…

伊東祐清『自衛隊失格』

https://bookmeter.com/reviews/106508572 読み始めた時に「辞めた組織のことを悪し様に批判する本かな?」と一瞬思ったけれど全然違った。最初に批判はしても「自分もそうなり得る」「なぜそうなってしまうのか」も考えるので読んでいて嫌な気持ちにならな…