やしお

ふつうの会社員の日記です。

尾脇秀和『氏名の誕生』

https://bookmeter.com/reviews/107192449 江戸から明治になって氏名制度が変わった結果、身分や職業とのリンクが外れて自由度が上がった側面と、改名の自由度は下がった側面と、両面がある。現在の氏名制度が「明治に国家が国民を直接徴兵するための個人の…

宮内悠介『偶然の聖地』

https://bookmeter.com/reviews/107192414 なんかおもちゃ箱を見せられたような気分で楽しかった。自分の好きなものやことをわっと詰め込んで、要素も流れもそれほどガチガチに固めずにぱっと提示していく。連載前の依頼内容は「エッセイと小説の中間のよう…

田崎史郎『小泉進次郎と福田達夫』

https://bookmeter.com/reviews/107192385 小泉議員は最近「小泉構文」と揶揄されたり「こいつは馬鹿にしてOK」みたいな風潮もあるが、もともと議員になる時に「世襲議員」としてものすごい叩かれ方をした後に、ものすごい人気が出たという上がり下がりを見…

柴田伊冊『航空のゆくえ』

https://bookmeter.com/reviews/107192353 「空の自由」「以遠権」といった概念を知られただけでも有益だった。コードシェア便があるとか、LCCが利用できるとか、探せば安い航空券もあるとか、どの国の空港でも搭乗手続きや航空券のデザインが同じとか、そう…

児玉博『堤清二 罪と業』

https://bookmeter.com/reviews/107192319 漠然と「失敗した経営者」のイメージで片付けられがちだけど、やっぱり日本の消費文化に与えた影響は無視できない大きさだった。セゾングループとしては解体しても、西友、無印、LOFT、ファミマ、パルコ、リブロな…

日端康雄『都市計画の世界史』

https://bookmeter.com/reviews/107192280 その時代の社会的課題・軍事的要請・技術的制約で「理想的な街」は変わるし、資金調達や現実の街の状況で「理想的な街」への近づけ方も変わってきて、時間的な重ね合わせで都市ができていく。時代ごとの町割の流行…

江守賢治『字と書の歴史』

https://bookmeter.com/reviews/106508591 書について基礎的な知識・概要を知りたいと思って探していたら、1967年出版の古い本だけど、本書の評判が一番良さそうだった。実際にとてもコンパクトに概説されていて、特に押さえておくべき人物・用語が網羅され…

伊東祐清『自衛隊失格』

https://bookmeter.com/reviews/106508572 読み始めた時に「辞めた組織のことを悪し様に批判する本かな?」と一瞬思ったけれど全然違った。最初に批判はしても「自分もそうなり得る」「なぜそうなってしまうのか」も考えるので読んでいて嫌な気持ちにならな…

諏訪恭一『価値がわかる宝石図鑑』

https://bookmeter.com/reviews/106508541 同著者の姉妹編『品質がわかるジュエリーの見方』同様、写真も豊富できれい、十分な網羅性でこの1冊で宝石の価値体系を内面化できる。著者の見識が高く、思考や認識がとてもフラット・フェアなのも読んでいて気持ち…

山口遼『ジュエリーの世界史』

https://bookmeter.com/reviews/106508491 「日本では宝飾品が飛鳥時代~明治まで姿を消した」ことを「不思議」と感じるのは、「宝飾品を身につけることが当たり前になった時代」から見ているからで、むしろ「西欧で宝石と貴金属を使ったジュエリーが発達し…

保阪正康『瀬島龍三 参謀の昭和史』

https://bookmeter.com/reviews/106508443 瀬島龍三は、山崎豊子の小説『不毛地帯』の主人公・壱岐正のモデルと言われ、山崎自身は「複数人を重ねたもの」と否定しても、一般には壱岐の人物像を重ねて瀬島を肯定的に捉えられてしまうし、本人もあえて否定し…

横田増生『ユニクロ潜入一年』

https://bookmeter.com/reviews/105569944 「商品は良いが会社はevil」という印象通りの報告。国際NGOから東南アジアの下請け工場の労働環境の悪さを指摘されて、全く同じ工場なのにH&Mが「指摘の問題が確認されたから改善する」と回答してユニクロが「ご指…

篠田英朗『紛争解決ってなんだろう』

https://bookmeter.com/reviews/105393705 少し前に、ウクライナ侵攻に関してTwitter上で、著者の篠田英明氏を「現実の戦地・政治をリアルに感じ取ることのできない学者」と誹謗した橋下元府知事が、「この人は現場経験あり過ぎるだろ」と総ツッコミを受けて…

諏訪恭一『品質がわかるジュエリーの見方』

https://bookmeter.com/reviews/105122040 本書1冊で基礎知識と価値基準が共有されて、ジュエリーを見る解像度が上がる。写真も豊富で美しい。バランスや適材適所かをトータルで判断するもので、例えばダイヤの4Cに拘泥してマニア的に執着したり、ブランドの…

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』

https://bookmeter.com/reviews/105121993 小川洋子は10代の時にハマって全作品を読んでいたのが急に離れて、17年ぶりに読んだのが本作だった。相変わらず見事な手腕だった。「誰も見向きもしないささいなことにこだわってしまう人物」「肉体のいびつな変化…

刑部芳則『公家たちの幕末維新』

https://bookmeter.com/reviews/105569850 幕末期の公家・朝廷でも「テロで命の危険にさらされると政治権力の取り得る選択肢が極端に狭まってしまう」状況が起きていたことがよく分かる。孝明天皇含め朝廷上層部は、日本と海外の国力差を考慮して「攘夷は望…

渥美俊一『チェーンストア組織の基本』

https://bookmeter.com/reviews/105569800 サイゼリヤ正垣泰彦やニトリ似鳥昭雄ら創業者が、渥美俊一のサロンメンバーで、渥美のチェーンストア理論により国内最大手になったという話を正垣の著書で知って渥美の理論書を読もうと思った。自分が大手製造業に…

松本敏治『自閉症は津軽弁を話さない』

https://bookmeter.com/reviews/104717967 ASD(自閉スペクトラム症)では「人の行動には意図がある」という理解が困難なのだと知ると、実は自分は無意識にそれを自明の前提として生きてるんだと自覚することになる。逆にTD(定型発達)が「意図を勝手に(過…

兵藤裕己『平家物語』

https://bookmeter.com/reviews/104717780 すごくダイナミックな平家物語の理解が示されて、読んでてワクワクする本だった。静的に固定化されたテクストではなく、成立の過程、その時代の政治的・思想的背景、あの世とこの世の境目、史実としての源平合戦と…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

https://bookmeter.com/reviews/104776145 以前著者の『ヨーロッパ・コーリング』を読んで、小さい話(自分の身の回りの出来事)と大きな話(国際的な状況)、どちらか一方をできる人は多くても、両者を行き来して語れるのは貴重だと思った記憶がある。本書…

瀬木比呂志『絶望の裁判所』

https://bookmeter.com/reviews/105569711 元裁判官の筆者が、裁判所組織の中で人事権をテコにした裁判官の一元支配の構造を解説する本。憲法76条は「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。」とあるが…

高野政所『大麻でパクられちゃった僕』

https://bookmeter.com/reviews/104776047 現行犯逮捕→留置場→起訴→勾留→裁判、の一連の流れが詳細で「逮捕されると起こること」の参考になる。「大麻は違法化されるべき嗜好品ではない」と主張されていて、実際にそうかもしれない(アルコールなどと比較し…

亀石倫子・新田匡央『刑事弁護人』

https://bookmeter.com/reviews/104157479 「最高裁大法廷での弁論」という、著名な刑事弁護人でも一生に一度も経験しない舞台へたどり着いた経緯を描いて、読んでとてもドキドキするドキュメンタリーだった。刑事弁護の流れも詳細によく分かる。一方で、こ…

松岡圭祐『小説家になって億を稼ごう』

https://bookmeter.com/reviews/104157434 「宝くじの高額当選者に配られる戒めの冊子、そのベストセラー作家版」が本書のコンセプトの表現として一番しっくりくる。「舞い上がらない」「自分の仕事に専念する」「不遜な態度を取らない」「過大な要求はしな…

武光誠『知っておきたい日本の神話』

https://bookmeter.com/reviews/104157372 どの神がどの神の子供で、その神はこの神に敗れたなどの神話は、神話が整理された時点の権力者(天皇家)の正統制の保証や臣下の関係、一族の勢力関係などを反映している、ということがよく分かる。古事記・日本書…

ロラン・バルト『表徴の帝国』

https://bookmeter.com/reviews/104157306 俳句のことを「時間のなかに刻まれた軽い傷跡の一種」と言われると、あんまりにもぴったりした言い方に思えてくる。日本語、書、パチンコ、地図、文楽、顔、等々、確かに日本の様々な事象を題材に色々論じられてい…

村木厚子『日本型組織の病を考える』

https://bookmeter.com/reviews/104157284 検事が、事件の真相解明などではなく、起訴→有罪にすることに強くインセンティブが与えられているというのは、検事本人のみならず社会全体にとっても極めて不幸なことだ。逮捕起訴された経験談だけでなく、本書は、…

辻井喬『茜色の空』

https://bookmeter.com/reviews/104157258 元首相・大平正芳の生涯を見ると、自民党宏池会の「大蔵省の官僚が時代状況に要請されて国会議員となってグループを形成していった」という源流がよく分かる。「政治家になりたくてなった」わけでも「親が政治家だ…

鏡リュウジ『タロットの秘密』

https://bookmeter.com/reviews/104157224 神秘的なわけでもない賭博・ゲーム用のカードが、どういうわけか「古代エジプトに起源を持ち運命を読むもの」とされていった歴史が描かれる。そうした客観的な経緯を把握しながら、それでもなお「占い」ができるの…

小沢健志『幕末 写真の時代』

https://bookmeter.com/reviews/102521892 150年以上前でもかなり高い解像力で非常にクリアーな写真が残されていて、転倒した感覚だけど、時代劇の俳優を今写したみたいだという不思議な気持ちになった。幕末の時点では人生(場合によっては生命)をかけて、…