やしお

ふつうの会社員の日記です。

山崎豊子『沈まぬ太陽(1)』

https://bookmeter.com/reviews/90594927 御巣鷹山の日航機墜落事故をモチーフにした小説という漠然とした理解で読み始めたら、いきなり主人公がアフリカのサバンナでゾウを狙撃していたので驚いた。現在の感覚では、企業による懲罰人事(内部告発やリストラ…

立川吉笑『現在落語論』

https://bookmeter.com/reviews/90594901 落語が伝統性と大衆性に引き裂かれるという話は、例えば小説が純文学とエンタメに二分されるのと同じで、恐らくジャンルやメディアに関係なく芸術一般が過去の成果に対してより微細な差異を追求して高度化していくと…

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!』

https://bookmeter.com/reviews/90529582 国谷裕子が『キャスターという仕事』の中で、テレビというメディアが視聴者の感情を一体化するように働き、さらに強化する特質があると指摘していた。国谷氏がキャスターとしてその特質に抗うように仕事をしていた姿…

河野稠果『人口学への招待』

https://bookmeter.com/reviews/90529521 人口に影響するのは、出産・死亡・移動の3要素だが、そのうち最も大きな影響を与えるのが出産であるため、本書は大半が少子化・出生率に関する様々な学説や理論、データの紹介に充てられている。出生率の高低が、実…

広瀬和生『21世紀落語史』

https://bookmeter.com/reviews/90529442 客を笑わそうとするのではなく、つい笑ってしまうようでないといけない、何気ない会話の中で二人の関係性が浮かび上がってこないといけない、と考える柳家小三治が、08年に「千早ふる」を演りながら二人の会話を聞い…

柄谷行人『マルクスその可能性の中心』

https://bookmeter.com/reviews/90529387 一旦構造が形成された後から見ると、構造の結果がその原因としてしか見えなくなり結果と原因を取り違えてしまう(遠近法的倒錯)という指摘がされる。そしてこの倒錯に立脚して考えることで、さらに起源が見えなくな…

斉須政雄『フレンチ十皿の料理』

https://bookmeter.com/reviews/90529349 専門家の独特の言語感覚や概念を知るのは楽しい。神田裕行『日本料理の贅沢』もそうだが、全ての工程と素材の選択には合理性があり「こうすることになっているからそうしている」は一切排除されている。「なぜそうす…

板橋拓己『アデナウアー』

https://bookmeter.com/reviews/90529305 アデナウアーが首相として強権的に長期政権を維持したことでドイツは第二次大戦後に民主主義を定着し得たという指摘は、一見逆説的なようだが、「アラブの春」により中東各国で長期独裁政権が倒されたがチュニジア以…

中沢新一『アースダイバー』

https://bookmeter.com/reviews/90529244 こうしたインチキの体系を構築・提示するところに中沢新一の魅力がある。例えば占星術の精緻な体系がその精緻さそのものに魅力があり、時に新たな視点を人に与えるのと似ている。東京を沖積層(かつて海だった低い湿…

野口孝行『脱北、逃避行』

https://bookmeter.com/reviews/89506328 前半が中国→ベトナム→カンボジア→日本と脱北者を逃がす仕事(成功例と失敗例)の話、後半が中国の地方で8ヶ月間の拘置所生活の話で、どっちも想像したことすらない話ですごく面白い。拘置所は厳しい面とものすごく緩…

川北隆雄『財界の正体』

https://bookmeter.com/reviews/89506289 財界(日本経団連や同友会)が一貫して消費増税賛成なのは、法人税引下げと厚生年金・健康保険の企業負担引下げの財源にしてほしいから(ただし日商は中小企業の代表であり消費増税によるダメージの方が大きいから消…

デイヴィッド・ハルバースタム『ベスト&ブライテスト(上)』

https://bookmeter.com/reviews/89506252 よく日本の政策決定(特に大平洋戦争時の意思決定)は外国より非合理的だと語られるが、たとえ米国であっても状況が重なると取り得る選択肢を狭めてベトナム戦争の泥沼に突入してしまう、という実例を丁寧に描いてい…

明智カイト『誰でもできるロビイング入門』

https://bookmeter.com/reviews/89506130 ロビイングって、業界団体がお金の力を背景に利益誘導をしていく漠然としたイメージがあったけれど、本書が描くのは社会的弱者や見過ごされがちな課題をいかに官僚や政治家に届けて政策に反映させていくかという手法…

岩崎育夫『物語 シンガポールの歴史』

https://bookmeter.com/reviews/88951329 なぜマレー半島の先っぽに小さな国家が独立して存在するのか、なぜ経済的には自由主義なのに政治的には独裁なのか、というシンガポールへの素朴な疑問があった。植民地時代に経済的に発展し過ぎた+中国系住民がマレ…

二井将光『薬学教室へようこそ』

https://bookmeter.com/reviews/88951838 「薬物代謝酵素」の概念が知られてよかった。細胞の膜は油になじみやすい、だから薬は脂溶性になっているが、最後は排出しないとダメなので、尿に溶けやすく水溶性に変えたり、排泄されやすいよう分子量を大きくする…

岩渕美智子『東日本大震災と政治 政治は動いていないのか』

https://bookmeter.com/reviews/88951162 ニュースだけを見ていると首相や主要閣僚の言動は見えても、他の副大臣・政務官・官房副長官・首相補佐官といった行政府に入った国会議員の動きは分かりにくい。特に災害時などの非常事態でどう動いているんだろうと…

今井良『内閣情報調査室』

https://bookmeter.com/reviews/88960954 第二次以降の安倍政権で、官邸官僚の中でも首相に最も重用されているのが、今井尚哉首相補佐官兼秘書官と北村滋国家安全保障局長(前内閣情報官)で、前者が政策面、後者がインテリジェンス面で支えている(むしろ首…

森功『官邸官僚』

https://bookmeter.com/reviews/88967450 「側近官僚に全幅の信頼を寄せる首相」と「その期待に応えようとする官僚」の相互依存があって、そこに「政治主導・官邸強化の体制」が組み合わさると、とことんまで「国民のためではなく政権維持(支持率の維持)だ…

唐亮『現代中国の政治』

https://bookmeter.com/reviews/89506111 中国は出張で時々行くけどあまり政治・社会体制もよく理解していなかったので、知りたいと思って読んでみたけどその辺がすっきり解説されているわけではなかった。著者の主要な関心は中国の民主化の経緯と展望にあっ…

佐野眞一『凡宰伝』

https://bookmeter.com/reviews/88950990 小渕元首相は合気道四段で実際に強い、大学時代に国会の乱闘を見て政治家に必要な技術と思って習得、という話で笑ってしまった。色んな議員が、世襲だから無能だと言われがちだけど、むしろ党のブランドで当選する小…

クロード・レヴィ=ストロース『仮面の道』

https://bookmeter.com/reviews/88967573 北米西海岸のネイティブアメリカンに伝わるお面の意味を浮かび上がらせていく営み。こうしたお面を博物館で目にする機会はあっても、単にフォルムが面白いとか力強いなくらいにしか考えたことがなかった。面の特徴を…

ジェフ・サザーランド『スクラム』

https://bookmeter.com/reviews/89506060 料理でも「なんか分からんが美味く/不味くできた」ということはあるが、条件や手順を明らかにして、言語化して再現性のある技術にまで持っていくのと同じように、仕事でもチームの生産性が妙に上がる/下がる場合が…

佐藤優『交渉術』

https://bookmeter.com/reviews/89506021 交渉の技術を体系的に整理した本ではなく、著者が外交官として体験したり見聞きしたエピソードを並べたもので、他の著書をいくつか読んでいれば特に目新しいものではなかった。それでも、90年代後半~00年代初頭、橋…

MB『最速でおしゃれに見せる方法』

https://bookmeter.com/reviews/86652010 感覚的に共有されたものを、言語化・体系化する試みはやっぱり面白い。「街着でダサくない状態」を構成する原則が何かを提示して、そのバランスを取る作業を言語化して「ファッション感覚」の高い人が内的にどういう…

井上寿一『戦争調査会』

https://bookmeter.com/reviews/86651976 プレイヤー全員が日米開戦回避を目指していて、それぞれ方針や戦略を持って対応していたら、全体ではバラバラな動きになって最悪の選択を最終的にする、みたいな光景がここでも確認されている。敗戦直後でまだ関係者…

隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』

https://bookmeter.com/reviews/86651946 いい意味でタイトル詐欺というか、「日本は文系と理系に分かれている」理由より、そもそも学問の分野って何、どうして分類される必要があるんだ、って話を、大学組織が世界で誕生した地点に遡って考えていく本だった…

池上彰、佐藤優『ロシアを知る』

https://bookmeter.com/reviews/89507364 基本的なロシアの感覚として、国境の外側に自国軍を展開できるバッファがないと不安、というものがあって、その観点でバルト三国やフィンランド、ウクライナや中央アジア、あるいは極東での意思決定のロジックが理解…

国谷裕子『キャスターという仕事』

https://bookmeter.com/reviews/86248751 クローズアップ現代で国谷裕子キャスターを初めて見た時、「ライブでこんなにクリアーに喋れる人がいるのか!」と衝撃を受けた。今まで国谷キャスターのバックグラウンドを知らなかったけれど、「どのような環境で彼…

宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』

https://bookmeter.com/reviews/86495152 IQは100程度ないと今の社会では生き辛いという言及があって、でもIQは真ん中が100なので、じゃあ世の中の半分の人が生き辛いってことになる。「えっ」と思うけど、実際そんな苦しみでできた世界なのかもしれない。軽…

塙宣之『言い訳』

https://bookmeter.com/reviews/86106014 ああ、M-1の審査員ってここまで考えてやってるんだ、ってある種の感動を覚える。観客の感情に作用させることを目的とした営み、演劇や芸術を言語化するのは困難だとは思うけど、きっと本人が「ウケる/ウケないの差…