やしお

ふつうの会社員の日記です。

読書メモ

徳成旨亮『CFO思考』 人を元気にさせるような内容だった。単に「CFOの役目」の話に留まらず、グローバルな視点で日本や日本企業がどう見えるのかを含めて語る点が本書を面白くしている。それは著者が三菱UFJやニコンのCFOとして、海外の投資家・機関と相対す…

猿谷要『ハワイ王朝最後の女王』

https://bookmeter.com/reviews/115499475 「本人が望んだわけではない立場にあって、しかしその責任を全力で全うしようとした人」は本当に立派だし尊敬する(人命救助とか会社経営とか政治家とか)。リリウオカラニ女王がハワイ王国の王位を継承した1891年…

佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』

https://bookmeter.com/reviews/115499453 さかなクンや藤井聡太氏もだけど、究極的には「キャリア形成の方法」なんかより「常人離れして対象を愛して追求し続けられる」才能なのだと思う。佐渡裕氏も、自らチャレンジしたり人の懐に飛び込んだりはしていて…

南学編著『横浜 交流と発展のまちガイド』

https://bookmeter.com/reviews/115499432 横浜は、明治の開港以降、直線的に発展しているわけではない。戦後の連合国による接収解除が遅れ、高度経済成長のさなか、50年代半ば以降に解除が進んだという。東京のベッドタウンとしてスプロール現象が進展しつ…

中川右介『松竹と東宝』

https://bookmeter.com/reviews/115499412 京都の芝居小屋の売店の子として生まれた双子(白井松次郎・大谷竹次郎)が、劇場をひとつずつ手に入れて最終的に歌舞伎界を制覇する話と、山梨の裕福な商家に生まれて高い学歴を積んだエリート銀行員(小林一三)…

柄谷行人『ニュー・アソシーショニスト宣言』

https://bookmeter.com/reviews/115499402 新自由主義の弊害が見えてくると、福祉国家へ舵を切れという主張が増えてくるが、もともと福祉国家が維持できなくなったことで新自由主義が出てきている経緯を考えると実は非現実的で、そうではなくて「資本=ネー…

出口保夫『午後は女王陛下の紅茶を』

https://bookmeter.com/reviews/115499381 80年代に書かれた英文学教授による紅茶にまつわる優雅なエッセイ集。もともとイギリスでティと言えばミルクティが当然だったのが「最近は」プレーンティが増えてきている、と当時の変化に言及されていて面白かった…

森功『腐った翼 JAL65年の浮沈』

https://bookmeter.com/reviews/115499361 著者のルポは面白いし複数読んでるけど、どうしても構図を描くまでで、構造を示してはくれない。歴代経営陣の派閥争い、規制産業であることの甘え、複数の労働組合の反発等々の事象がJALの腐敗を招いたとしても、そ…

渡辺努『世界インフレの謎』

https://bookmeter.com/reviews/115499327 物価変動は人々の予想によるもので、何かの実体に紐付いたものではなく基本的には遊離したもの。ただ予想に影響を与える要素が多岐に渡る。日本で90年代後半から30年近くに渡って形成されてきた、消費側の値上げ忌…

宮本輝『優駿(下)』

https://bookmeter.com/reviews/115499301 基本的にプレイヤーそれぞれが何かしらの後ろめたさ・暗さを抱えていて、その暗さが物語を進める力として機能している。その中にあってこの長編の冒頭を飾った博正だけが光のように明るく存在していて、最後までそ…

宮本輝『優駿(上)』

https://bookmeter.com/reviews/112037775 長編だけど、第1章の競走馬が誕生し、牧場の青年が川へ祈る神話のような話単体でも、物語の強度が高く、ひとつの短編として成り立ちそうだ。競走馬そのものは、人間のような意思を持たず、各章の視点人物にはなり得…

伊藤嘉章監修『図解 日本のやきもの』

https://bookmeter.com/reviews/115499249 日本の陶磁器について、産地別ではなく経時的にコンパクトに整理された本。プロローグの中で、焼き物の産地を問うことは、一義的には①焼かれた場所、同時に②特徴や技法の両者が含まれる(産地ごとに歴史に基づく作…

鳥集徹『医学部』

https://bookmeter.com/reviews/115028764 「職業訓練校に国の成績トップの学生が集中する」状況が異常と改めて言われると、めちゃくちゃいびつだなとは思った。医師に高い能力が必要なのは間違いなくても、研究者でも高級官僚でもなく「医者(臨床医)を育…

辻陽『日本の地方議会』

https://bookmeter.com/reviews/115028706 「二元代表制で(日本の国政と違い)議会が首長を支える必要がないのに、(米国の議会と違い)議会の権限が小さい」という特性があると、議会の役割が不明確になって無責任化しやすいというのは、なるほどと思った…

佐々木秀憲監修『産地別すぐわかるやきものの見わけ方』

https://bookmeter.com/reviews/115028671 産地別に陶磁器の特徴・歴史がカラー写真で概説されていて、コンパクトによく整理されていてありがたい。(たださすがに実際に数を見ないと「見わけ方」が「すぐわかる」ようになるとは思えないけれど。)ある程度…

江守賢治『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』

https://bookmeter.com/reviews/115028629 読んでると「字形の正しさ」って何だろうという気持ちになってくる。極端に言えば「読めればいい」となって何でもありだけど、やはりその字が持っている成り立ちと、過去に書かれてきた字形の集積があって、そこか…

陳建志『品味故宮 書法の美』

https://bookmeter.com/reviews/115028612 台湾の故宮博物院のミュージアムショップで買った本で、コンテンツというよりモノとしての思い入れのある本。膨大な収蔵品の中から、書・陶磁器・絵画と分野別に代表作をセレクトして各国語版で出してくれて本当に…

広瀬公巳『インドが変える世界地図』

https://bookmeter.com/reviews/115028546 インドの政治・経済状況の概観に手頃な本。長らく政権を独占してきたネルー/ガンディー一族(マハトマ・ガンディーとは別)の国民会議派と、メディア戦略に長けたモディ首相率いるインド人民党の対立軸、という基…

上原浩『純米酒を極める』

https://bookmeter.com/reviews/115028485 高度なベテラン技術者による業界批判は、めちゃくちゃ面白い。技術的な話と、業界構造と、歴史的な経緯とが、ものすごく具体的に語られるので、読んでてエキサイティングだった。著者の方向性は明確で、日本酒がワ…

髙野てるみ『職業としてのシネマ』

https://bookmeter.com/reviews/113340821 映画の配給プロデューサーは、少し刑事弁護人に似ていると思った。作品が自分の好みかは無関係に、職業人として宣伝しなければならない。著者は、新聞記者としてスタートし、雑誌・広告のエディター・ライターとな…

大須賀祐『図解 これ1冊でぜんぶわかる! 貿易実務』

https://bookmeter.com/reviews/113340837 輸出入・貿易は、「船や飛行機で物を送る」という概要のイメージし易さと、実務の「細かなルールや関係するプレーヤーがたくさんあって難しい」とのギャップが大きい分野だと感じていた。このギャップを少し埋める…

中村恵二・佐々木亜希子『映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本』

https://bookmeter.com/reviews/113340791 映画産業を俯瞰して体系的に解説がなされているわけではなく、個別のトピックとデータを羅列して紙数を埋めたような本になっている。著者が業界解説本のライターと活弁士の2名構成で、業界構造を内部的な視点で把握…

赤瀬浩『長崎丸山遊郭』

https://bookmeter.com/reviews/113340753 遊郭のイメージが変わる。交易地という長崎の特殊性が、「海外⇔上方間で流通する富を長崎に回収する装置」としての遊郭を生じさせる。丸山の遊女は他地域の遊女と異なり、「親に売られ、閉鎖空間に閉じ込められて性…

井上智洋『MMT 現代貨幣理論とは何か』

https://bookmeter.com/reviews/113340722 マクロ経済学者がMMTの位置付けをフラットかつ平易に解説する。「財政規律を無視できる(自国通貨があり過度なインフレになければ)」結論の妥当性には納得できる一方で、EUの構成国について「ユーロから離脱すべき…

柳澤健『完本 1976年のアントニオ猪木』

https://bookmeter.com/reviews/113340706 「自分は偉大である」と信じ込むこと。そして「偉大な自分」の幻想に、現実の自分を合わせようとすること。それをできるのは大きな才能だろうと思う。「天才」と呼ばれ得る人は、心底その対象への興味が尽きず没頭…

日本経済新聞社編『金融入門<第3版>』

https://bookmeter.com/reviews/112037668 金融にかかわる仕組みや組織を、官民問わず幅広くコンパクトにフラットに解説していて便利な一冊。事実関係を曖昧に記憶していた事柄(そういえば量的緩和策は最初は小泉内閣の時期で、その後アベノミクス前までは…

桂歌丸『歌丸不死鳥ひとり語り』

https://bookmeter.com/reviews/112037716 古典落語を演じるのは、単なるコピーではなく、噺を分解し、コアを取出し、現代の観客や自分自身の特性などの条件を基に、そのコアが最高の効果を発揮できるように再構築していく営みになっている。歌丸は、当初は…

三木義一『日本の税金 第3版』

https://bookmeter.com/reviews/112037634 改めて日本の税制を概観しても「取れるところから取る」「あえて複雑にして分かりづらくする」姿勢が至る所に見えてくる。「低所得者が増税を、高所得者が減税を主張する」姿が正常でも、逆進性が強く低所得者の負…

中谷巌『マクロ経済学入門 第2版』

https://bookmeter.com/reviews/112037553 本当に「〇〇学入門」の名にふさわしい書物で感動する。世の中には著者が好き勝手に放言するだけで「学」の名に値しない本や、理論体系の全体像や前提の意味、適用可能域の示し方が不十分で「入門」になり得ていな…

藤井聡『超入門MMT』

https://bookmeter.com/reviews/112037502 MMT(現代貨幣理論)がどういう理論なのか肝心の説明がされない。様々な主張が「MMTによると」と説明されるが、マネタリーベース拡大は貨幣数量説・リフレ派の、財政拡大は財政原則(量出制入)の旧来の主張の域を…