やしお

ふつうの会社員の日記です。

山内昌之『イスラームと国際政治』

https://bookmeter.com/reviews/77454839 中東だけでなく、アジア・アフリカのイスラム国家や、アメリカのブラックムスリム(黒人のイスラム教徒)も解説されている。雑誌連載をまとめたもので、全体で大きな解説というより各トピックに関して歴史的な経緯や…

堀栄三『大本営参謀の情報戦記』

https://bookmeter.com/reviews/77454786 太平洋戦争中に大本営の情報参謀になった著者の、主に太平洋戦争に関する回顧録になっている。太平洋上に点在する島々を攻略することの意味や、制空権というものがどういう意味を持つのか、アメリカ軍と日本軍の戦略…

五百蔵容『砕かれたハリルホジッチ・プラン』

https://bookmeter.com/reviews/77451348 少ないルールや制約から出発してこんな複雑な戦略や戦術が導出されて実際そんな戦いが起こっている、みたいな話は、将棋でもサッカーでも読んでて興奮する。(将棋も)サッカーも見ないしやらないから正確に理解でき…

桐野夏生『メタボラ(下)』

https://bookmeter.com/reviews/77451251 主人公が二人のお話だけど、生気を徹底的に奪われた人がもう一度生き直す話と、生気に満ち溢れていた人がふいに奪われてしまう話とが、お互いがお互いをきっかけにして起動している、そんな物語になっている。「生き…

桐野夏生『メタボラ(上)』

https://bookmeter.com/reviews/77451130 桐野夏生を読んでいて気持ちいいのは、がちがちにプロットが構築されているわけじゃなくて、行き当たりばったりで出来ているというか、視点人物がある状況や人物にぽんと出会って、それに対処していくんだけど、その…

酒井啓子『9.11後の現代史』

https://bookmeter.com/reviews/77454818 9.11後のアフガン戦争、イラク戦争、アラブの春、ISやシリア内戦がどう推移したのかと、それらが第二次大戦後のどういう経緯で発生しているのかという背景を整理して解説してくれるありがたい本。WW2後イスラエルが…

本田和子『異文化としての子ども』

https://bookmeter.com/reviews/77451078 現実の子供の生態やメカニズムを解説するものではなくて、子供と大人を分けるものとは何か、大人が「子供」という枠組みで子供を見るというのはどういう機序で起こるのか、という話だった。大人にとって「整合性があ…

金井美恵子『岸辺のない海』

https://bookmeter.com/reviews/77450874 金井美恵子の小説は、具体的な生活や会話や人間が詳細に描かれていく側面が大きい作品と、書かれることへの意識が持続的に呼び覚まされるような側面が大きい作品とがあってどっちも好きなんだけど(でも例えば『ピー…

鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』

https://bookmeter.com/reviews/75013718 A受刑者が10年以上に渡る性犯罪の加害者となるプロセスがとても興味深かった。優秀な高校・大学を出た→就職して長時間労働・休日出勤・上司や同僚のプレッシャーで自殺を考えるようになる→闇サイトを見る。人が知ら…

ケネス・J・アロー『組織の限界』

https://bookmeter.com/reviews/75013674 訳者が書いている通り、この本はまず、数理経済学として市場の機能を徹底して数学的に形式化させていくという著者アローの仕事が第一にあって、それに対するカウンターとして、市場の機能に包摂されない意味での「組…

水野俊平『台湾の若者を知りたい』

https://bookmeter.com/reviews/75013621 その気がなくても「おいしいです」「また遊びに行こう」ととりあえず言うのは日本人にとって「嘘をついている」という感覚は全く無いしマナーですらあると思ってるけど、台湾の人にとって「嘘」「極めて無礼」と感じ…

清水潔『「南京事件」を調査せよ』

https://bookmeter.com/reviews/74736329 南京事件は発生した当時「中国兵が市民になりすましている」という理由で一般市民を含めた殺害が指示されていた(その指示が文書として残っている)が、米軍機が日本の民間施設・民間人に空爆や機銃掃射での攻撃を加…

田中幾太郎『三菱財閥 最強の秘密』

https://bookmeter.com/reviews/73566297 タイトルが週刊誌っぽいというか陰謀論っぽいけど、内容は三菱系企業が定例の社長・会長の懇親会を通じて現実的にどういう影響を及ぼし合っているのかという話だった。資本関係もないのに、設立のルーツが岩崎家・三…

村上龍『音楽の海岸』

https://bookmeter.com/reviews/73566245 自己を正確にコントロールしながら周りの人物を使いつつ特定の人物を破滅に追い込む、しかし破滅させた側も大ダメージを負う、と言ってしまうとよくある話だけれど、この破滅やダメージは、経済的な側面や社会的な地…

神田秀樹『会社法入門』

https://bookmeter.com/reviews/73566206 会社って社会の中に存在するのが当たり前みたいに思えるけど、実際何なのかと思うと不思議な存在だ。その存在基盤を与えているのが商法から分離独立した今の会社法で、株主と会社の間のパワーバランスを調整したり、…

福井健策『著作権の世紀』

https://bookmeter.com/reviews/73565995 著作者と利用者の間で、どうしても感情の面(人格権)とお金の面(財産権)で衝突が生じてしまうので著作権法によって調整する必要がある。どっちにどれくらいの権利を持たせるのかという調節なので、正解があるとい…

伊東豊雄、中沢新一『建築の大転換』

https://bookmeter.com/reviews/73565707 ザハ案の国立競技場について、もともと明治神宮は内苑を百年かけて完成する森として設計して外苑に文化施設を配置するというプロジェクトで、当時の科学者や技士や市民が関わって作られたもので国立競技場もその一部…

清水潔『桶川ストーカー殺人事件』

https://bookmeter.com/reviews/71829534 サイコパスと言い得る人物に偶然狙われ、日常生活を破壊され命を奪われるに至る経緯と、組織防衛のため警察が事件を「無かったこと」にして捜査せず、さらに被害者や家族を攻撃する状況と、週刊誌記者が実行犯の居場…

中田行彦『シャープ「企業敗戦」の深層』

https://bookmeter.com/reviews/71829472 マツダがフォードと、日産がルノーと提携して経営者を受け入れたことで立ち直ったのと同じように、シャープもジャパンディスプレイと提携して日本連合になるより、鴻海と提携した方が良いのでは、と著者は述べている…

松原岩五郎『最暗黒の東京』

https://bookmeter.com/reviews/71829430 日清戦争前・産業革命前の明治東京のルポ。現在の観光地のイメージだと人力車は健康的で快活なイケメン青年が引くものだけど、当時は3割の車夫が虚弱者と老人で、遅く距離も走れないが安く、お金を恵んでもらって低…

七歳までは神のうち

天然痘や麻疹と「七歳までは神のうち」という言葉について、本田和子『異文化としての子ども』で触れられていた話がとても面白かった。 確かに「子供の罹患率が高い」「致死率が高い」「しかし一度かかればもうかからない」という病というか現象が存在してい…

ノンフィクションでめちゃくちゃ面白かった本

ノンフィクションというか、ある職業の人が具体的にどう考えて何をどうしたか、といった話で、ここ1年くらいで読んだ中でものすごく面白かった本のことを忘れないうちにまとめておこうと思って。 手嶋龍一『外交敗戦』 イラクがクウェートに侵攻し、湾岸戦争…

伊勢崎賢治『武装解除』

https://bookmeter.com/reviews/71545175 東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンで紛争の後処理の現場を管理職・決定権者として担った人の本。国家の安定は、暴力装置が文民の手で独占的に一元管理できている状態が前提で、そこが崩れると紛争状態にな…

小池洋次『政策形成の日米比較』

https://bookmeter.com/reviews/71376861 アメリカの強力な政治任命制度は、そもそも労働市場の流動性の高さが基礎になっていて、学界と官界の行き来が可能だから成立する制度だろうと漠然と想像していたが、さらに立法府と政府の緊張関係によっても支えられ…

赤攝也『集合論入門』

https://bookmeter.com/reviews/71171074 直感的に正しく思われる既存の概念を拡張すると、そこから見る景色はもはや直感的には正しく見えなくなるのは刺激的だ。例えば「要素の個数」を無限集合に拡張すると「濃度」という概念が得られるが、奇数、自然数、…

ブレイディみかこ『ヨーロッパ・コーリング』

https://bookmeter.com/reviews/71396697 '14〜16年の英国の様子を内側・下側から描いたレポートだが日本と本当に良く似ている。格差社会が進行しホームレスは排除されイスラムと生活保護受給者を憎み極右政党が躍進しかけたかと思うと保守化していた左派の…

柄谷行人『内省と遡行』

https://bookmeter.com/reviews/71396640 ニーチェやソシュールやフロイトやマルクスが見せる、矛盾や断言の回避、非言及について、それを解消して整合を取ったり体系化すると彼らの何が見失われるか(そうした実際の試みとそれが何を見失ったか)が語られて…

青木人志『「大岡裁き」の法意識』

https://bookmeter.com/reviews/71436703 日本の今の法体系は、明治にドイツの法律を参考に構築し、第二次大戦後にアメリカの法思想が追加された、大陸法と英米法のハイブリッドだという認識でいたけど、実は明治初期は英・仏の影響が優位で法律の専門家も招…

相原茂『はじめての中国語』

https://bookmeter.com/reviews/71376823 中国語が母語の日本語話者が「とてもきれいのことあります」「すごくおいしいの食事」と不要な「の」を挿入する傾向は何に由来するのだろうと前から思っていたが、中国語の文法上「很」や「非常」の「とても」の意味…

丸島儀一『キヤノン特許部隊』

https://bookmeter.com/reviews/71376771 キヤノンの強力な知財戦略が、カメラメーカーだった→フィルムメーカーに「お前らのおかげで儲かっている」と言われる→消耗部品を売る必要を感じる→普通紙複写機に挑戦する→ゼロックスの強固な特許網を破る必要がある…