やしお

ふつうの会社員の日記です。

新自由主義の自己責任・競争社会が生み出す景色

新自由主義経済が進むと格差社会になる、苦しい社会になる、とはよく聞く話だけど、金敬哲(キム・キョンチョル)著『韓国 行き過ぎた資本主義』はそれが具体的にどういう世界なのかを見せてくれる。 韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談…

合理的な選択の末に、いつの間にか世の中に取り残される感覚

自分が10~20代の頃に、両親がパソコンを使えない、ケータイでメールが出せない、スマホが使えない、という姿を見ていて漠然と「そんなもんか」と思っていたけれど、自分自身が30代半ばになってちょっとその感覚が分かる気がしてきた。 「年老いてくると単に…

緊急事態宣言のあとで、普通と異常が相半ばしながら慣れていく感覚

4月の頭に緊急事態宣言が出された時に、その当時の憤りに近い不安感や、会社の対応などについて↓に書いていた。 緊急事態になった明日も、不要不急の仕事で外出する - やしお 「その当時こんな経緯があった」「こんな気持ちだった」という話は、後から思い出…

Go Toも目的と手段を分けて断絶に向かわないようにする

Go To トラベルキャンペーン批判で、 感染拡大防止にむしろ注力すべき その予算を他(医療機関や生活困窮者)に回すべき 富裕層や大企業への再分配になっている 自民党(二階幹事長)の利権になっている などはよく見かけるし「その通りだなあ」と思って「Go…

民主党政権を今さら振り返る

安倍首相の辞任表明とは無関係に、そういえば民主党政権ってどうだったっけと思って今月本を読んでみたのだった。民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)作者:日本再建イニシアティブ発売日: 2013/09/21メディア: 新書 民主党が2012年末…

タイの王政と軍政

最近タイのBLドラマが流行っていて、少し見たりするうちにタイに興味が湧いてきた。「タイの普通の生活」の(詳細かつコンパクトな)本を探したものの手ごろなものが無かったので、歴史と現在の政治状況を書いた新書を2冊読んだら面白かったので忘れないよう…

大型SNS第二種免許

自動車が「走る凶器」と呼ばれるのは、その重量と速度によって人や物を容易に傷つけ得るからで、徒歩で移動する限りであれば絶対に起こさないような大事故が起き得てしまう。SNSなんかも、見知らぬ人にまでリーチする影響範囲や拡散速度のせいで、周囲の顔見…

尊厳死・安楽死の制約のありか

母が入水自殺で他界した時、真っ先に考えたのが「安楽死制度が整っていればこんな死に方をせずに済んだのだろうか」ということだった。母の一人暮らしのアパートにあったiPadのブラウザの閲覧履歴には、死んだその日に頸動脈の切り方をあれこれ調べていた様…

信じない上で信じるような読み方

しばらく前に「ミモレ丈」とつづ井さんの「助け合い」が(ネット上の極一部で)話題に上がった。前者は嘘を書いているのではないかという書き手への疑い、後者は書かれていない要素に対する書き手への非難だった。同日に起こったこの2件は相互に独立して無関…

山崎豊子『沈まぬ太陽(1)』

https://bookmeter.com/reviews/90594927 御巣鷹山の日航機墜落事故をモチーフにした小説という漠然とした理解で読み始めたら、いきなり主人公がアフリカのサバンナでゾウを狙撃していたので驚いた。現在の感覚では、企業による懲罰人事(内部告発やリストラ…

立川吉笑『現在落語論』

https://bookmeter.com/reviews/90594901 落語が伝統性と大衆性に引き裂かれるという話は、例えば小説が純文学とエンタメに二分されるのと同じで、恐らくジャンルやメディアに関係なく芸術一般が過去の成果に対してより微細な差異を追求して高度化していくと…

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!』

https://bookmeter.com/reviews/90529582 国谷裕子が『キャスターという仕事』の中で、テレビというメディアが視聴者の感情を一体化するように働き、さらに強化する特質があると指摘していた。国谷氏がキャスターとしてその特質に抗うように仕事をしていた姿…

河野稠果『人口学への招待』

https://bookmeter.com/reviews/90529521 人口に影響するのは、出産・死亡・移動の3要素だが、そのうち最も大きな影響を与えるのが出産であるため、本書は大半が少子化・出生率に関する様々な学説や理論、データの紹介に充てられている。出生率の高低が、実…

広瀬和生『21世紀落語史』

https://bookmeter.com/reviews/90529442 客を笑わそうとするのではなく、つい笑ってしまうようでないといけない、何気ない会話の中で二人の関係性が浮かび上がってこないといけない、と考える柳家小三治が、08年に「千早ふる」を演りながら二人の会話を聞い…

柄谷行人『マルクスその可能性の中心』

https://bookmeter.com/reviews/90529387 一旦構造が形成された後から見ると、構造の結果がその原因としてしか見えなくなり結果と原因を取り違えてしまう(遠近法的倒錯)という指摘がされる。そしてこの倒錯に立脚して考えることで、さらに起源が見えなくな…

斉須政雄『フレンチ十皿の料理』

https://bookmeter.com/reviews/90529349 専門家の独特の言語感覚や概念を知るのは楽しい。神田裕行『日本料理の贅沢』もそうだが、全ての工程と素材の選択には合理性があり「こうすることになっているからそうしている」は一切排除されている。「なぜそうす…

板橋拓己『アデナウアー』

https://bookmeter.com/reviews/90529305 アデナウアーが首相として強権的に長期政権を維持したことでドイツは第二次大戦後に民主主義を定着し得たという指摘は、一見逆説的なようだが、「アラブの春」により中東各国で長期独裁政権が倒されたがチュニジア以…

中沢新一『アースダイバー』

https://bookmeter.com/reviews/90529244 こうしたインチキの体系を構築・提示するところに中沢新一の魅力がある。例えば占星術の精緻な体系がその精緻さそのものに魅力があり、時に新たな視点を人に与えるのと似ている。東京を沖積層(かつて海だった低い湿…

「安定した政権は全て良い政権である」という感覚

「安倍首相をどうして支持するのか」という実感を綴った記事が非常に面白かった。 安倍総理は何故ここまで叩かれるんだろう - えすけーぷ37のブログ 支持者の内在的なロジックは非支持者からは極めて見えにくい。それが一定程度可視化された点で貴重であり…

クリエイターに編集や校正の技術が必須の時代

ここ最近で、平田オリザやソフトバンク新入社員が叩かれたり、あるいはナイナイ岡村への矢部の公開説教が批判されたりするのを見かけた。論旨そのものはおかしくなくても、細部や印象で違和感を持たれると叩かれてしまう。 それを防ぐには、先回りして叩かれ…

野口孝行『脱北、逃避行』

https://bookmeter.com/reviews/89506328 前半が中国→ベトナム→カンボジア→日本と脱北者を逃がす仕事(成功例と失敗例)の話、後半が中国の地方で8ヶ月間の拘置所生活の話で、どっちも想像したことすらない話ですごく面白い。拘置所は厳しい面とものすごく緩…

川北隆雄『財界の正体』

https://bookmeter.com/reviews/89506289 財界(日本経団連や同友会)が一貫して消費増税賛成なのは、法人税引下げと厚生年金・健康保険の企業負担引下げの財源にしてほしいから(ただし日商は中小企業の代表であり消費増税によるダメージの方が大きいから消…

デイヴィッド・ハルバースタム『ベスト&ブライテスト(上)』

https://bookmeter.com/reviews/89506252 よく日本の政策決定(特に大平洋戦争時の意思決定)は外国より非合理的だと語られるが、たとえ米国であっても状況が重なると取り得る選択肢を狭めてベトナム戦争の泥沼に突入してしまう、という実例を丁寧に描いてい…

明智カイト『誰でもできるロビイング入門』

https://bookmeter.com/reviews/89506130 ロビイングって、業界団体がお金の力を背景に利益誘導をしていく漠然としたイメージがあったけれど、本書が描くのは社会的弱者や見過ごされがちな課題をいかに官僚や政治家に届けて政策に反映させていくかという手法…

岩崎育夫『物語 シンガポールの歴史』

https://bookmeter.com/reviews/88951329 なぜマレー半島の先っぽに小さな国家が独立して存在するのか、なぜ経済的には自由主義なのに政治的には独裁なのか、というシンガポールへの素朴な疑問があった。植民地時代に経済的に発展し過ぎた+中国系住民がマレ…

二井将光『薬学教室へようこそ』

https://bookmeter.com/reviews/88951838 「薬物代謝酵素」の概念が知られてよかった。細胞の膜は油になじみやすい、だから薬は脂溶性になっているが、最後は排出しないとダメなので、尿に溶けやすく水溶性に変えたり、排泄されやすいよう分子量を大きくする…

岩渕美智子『東日本大震災と政治 政治は動いていないのか』

https://bookmeter.com/reviews/88951162 ニュースだけを見ていると首相や主要閣僚の言動は見えても、他の副大臣・政務官・官房副長官・首相補佐官といった行政府に入った国会議員の動きは分かりにくい。特に災害時などの非常事態でどう動いているんだろうと…

今井良『内閣情報調査室』

https://bookmeter.com/reviews/88960954 第二次以降の安倍政権で、官邸官僚の中でも首相に最も重用されているのが、今井尚哉首相補佐官兼秘書官と北村滋国家安全保障局長(前内閣情報官)で、前者が政策面、後者がインテリジェンス面で支えている(むしろ首…

森功『官邸官僚』

https://bookmeter.com/reviews/88967450 「側近官僚に全幅の信頼を寄せる首相」と「その期待に応えようとする官僚」の相互依存があって、そこに「政治主導・官邸強化の体制」が組み合わさると、とことんまで「国民のためではなく政権維持(支持率の維持)だ…

唐亮『現代中国の政治』

https://bookmeter.com/reviews/89506111 中国は出張で時々行くけどあまり政治・社会体制もよく理解していなかったので、知りたいと思って読んでみたけどその辺がすっきり解説されているわけではなかった。著者の主要な関心は中国の民主化の経緯と展望にあっ…