やしお

ふつうの会社員の日記です。

外国人を労働力の機械にするシステム

 NHKスペシャルの『夢をつかみにきたけれど ルポ・外国人労働者150万人時代』(7/13放送)を見て、こんな風に人の人生と労働力を掠め取る仕組みなんだなと思った。留学生・技能実習生の問題は色んなところで散々指摘されて今さらのような気もするけれど、現在進行形の話でもあるし(今年の4月に入管法が改正されて拡大している)、自分が忘れないように整理しておこうと思った。
 番組ではベトナム人に絞って事例が紹介されていた。


 留学生の20代の青年が、退学して密漁に加わって転覆して死ぬまでの事例を追っていた。
 日本語を習得して日本での学習・労働実績もあれば、帰国後も日系企業に就職できて高収入が望める。またベトナムの平均月収は17,000円だから、仕送りもできる。貧しい村で生まれたその青年は高校卒業後にベトナム国内で働いていたが、20歳で一念発起して日本へ留学する。ここで100万円の借金を負う。


 日本で語学学校に入学するが、授業の質は低く、同級生たちはアルバイトで疲弊して授業中に眠っている。講師は起こそうともしない。彼はSNSで隣で机に突っ伏して眠る同級生を背景に自撮りをアップして「勉強はしているが、悲しい」とコメントを残している。
 このあたりの話は、クローズアップ現代『留学生が"学べない" 30万人計画の陰で』(6/27放送)でも、主に東京福祉大の事例で特集されていた。留学生を受け入れて働かせ、授業料を徴収する。当時の総長が「4年間で120億円入る」「ガバチョ、ガバチョだろう」と発言した音声が放送されていた。校舎はただのビルのテナントの一室、教科書は留学生向けでも何でもない市販の書籍。学校が留学生にアルバイトを斡旋して夜8時から朝5時まで働く。学校側が「誰がどのバイトをしているか」リストを作って管理する。学費や家賃・光熱費を支払うと手元に所持金がほとんど残らず週千円で暮らす。そんな実態が報告されていた。


 Nスペの留学生も似たような状況に陥って、ついに退学してしまう。まともな授業も生活のサポートも提供してくれない、自分のスキルアップに寄与しているとは信じられない学校に、安くない授業料を払い続けるのが嫌になるのは当然だ。純粋に搾取されている、と感じるのは当たり前の感覚だろうと思う。それにアルバイト代では借金を返すペースが遅いとも言っていた。どうせ学校でスキルが得られないなら、授業料で持っていかれる分を借金返済に充てて早く必要な金を稼いで引き上げたいと考えるのも自然だ。
 しかし退学すると在留資格を喪失するため不法滞在となってしまい、さらに立場が弱くなっていく。過酷で危険で違法な仕事の勧誘を受ける。最後は千葉の銚子で密漁に加わり、転覆して海で亡くなる。26歳だった。
 彼が亡くなる前まで共同生活していたアパートのベトナム人達にもインタビューしていて「ここにいる人間はもう行くとこまで行くしかない」と語っていた。


 ベトナムで青年の両親にもインタビューしていた。不法滞在になったと聞いた時、帰国するよう説得したが聞いてくれなかったという。月収1万7千円の国で、100万円の借金を抱えて、このまま帰れば「自分の選択のせいで」まるごと借金を背負わせると分かっている中で、帰るという選択肢は取りようがなかったんだろうと思う。
 両親は「息子が帰ってこなければお金なんて意味がない」と語っていた。母親が息子の墓にすがって号泣しながら、何かお経のような歌のようなものを歌っていた。そんな場面を見ながら、月並みだけど人の人生や命って何なんだろう、こんな風に他者を純粋に使い捨てにするってことが自分の住んでる社会で現に起こってるんだなと思うと堪らない気持ちになる。


 番組では留学生だけでなく、技能実習生の事例にも触れていた。愛知や岐阜や滋賀で清掃や梱包などの単純労働をして、脳梗塞を発症し半身不随になった30代のベトナム人男性の話。日本へ来るための100万円と入院治療費の400万円の合計500万円の借金を抱えて、強制送還される。外国に来て、3年間働いて、その成果が500万円の借金と不可逆的に破壊された身体だっていう話だった。涙を流して「日本に来たことを後悔している」と語っていた。自分がこの人の立場だったら、これならいっそ死んだ方が良かった、と思うことさえあるだろう、帰国しても家族や親族からそう思われてるんじゃないかという気持ちになったりするかもしれない、と想像するとつらい。


 技能実習生になって、良い実習先や良い仕事に割り当てられる人もいるが、それは運次第だという。一度入った実習先は原則変更不可というのが現行の制度だという。悪い職場にあたって殴られたり罵倒され、実習先を管理している団体に職場の変更を申し入れても聞き入れられず、川辺の木に電気コードで首を括って自殺した20代のベトナム人の青年の事例が紹介された。
 留学生のパートでも、ベトナムの斡旋業者が「上手くいけば2万5千円~5万円くらい仕送りができる。でも成功するのは2割くらい」と語っていた。この「上手くいく人も実際にいる」というのがくせ者なんだと思う。仮に良くない噂を聞いても、今の生活を良くしたいと考えて、これ以外の選択肢がないと信じている間は、そのリスクに目が向きにくい。一種の正常性バイアスが働いたりするのかもしれない。


 日本行きを決意するタイミング、退学を決意するタイミングで、一段ずつ罠が張られている。現状を少しでもマシにする選択肢を選ぼうとするとより苦しい状況に追い込まれるような、そんな罠が何重にも張られている。そして一度そっちに進んでしまうと借金や在留資格といった軛によって逃れられなくなる。川に沈めて魚を捉える罠みたいだ。中に餌があって入ると返しがあってもう出られない。留学生や実習生の側から見れば、日本の学校も会社も制度もよってたかって自分を食い物にしているように見えるだろう。
 でも、例えばこのことを50年後とかに「労働搾取はありませんでした」「本人達は自発的な意思で選択しただけです」って政府は言うのかもしれない、みたいな想像をしたりもする。


 以前、警察24時的な番組で(警察じゃないけど)、不法滞在の外国人を摘発するシーンを見たことがある。潜伏先(というか自宅)を特定して踏み込む場面だった。ネットとかでも「違法だから許すな」といったコメントを見かけることがある。でも、日本国憲法の第22条は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」だ。
 「何人も」とされていながら現実的には外国人にはこの自由に制限が加えられている。(外国人以外にも、例えば皇族や受刑者も制限される。)このことは、ある人物の基本的人権をどの国家が一義的に保障するかを特定した方が、現実的には基本的人権の実現のために有効である、そのために国籍でラベリングして「自国民の基本的人権を国家は保障する」というロジックが背後にある。
 留学生・技能実習生は、「まずは自国民の基本的人権を実現させる」という話を、あたかも「自国民にのみ人権は保障すればよく、外国人は除外して構わない」というロジックにすり替えるような、逆用というか悪用に近い感じなんじゃないかと思う。そしてこれを曖昧に肯定しているのは、「ルールに反していなければいい/反しているからダメだ」という理屈だけど、この理屈は「ルールが無謬かつ合理的である」という前提がなければ成り立たない。でもその前提を忘れることで「違法だから許すな」と簡単に言えてしまう。前提や背景を見捨てて狭い範囲だけを見ることでしか成立しない。


 なにか、集団での未必の故意、みたいな感じなのかもしれない。制度を設計している人達も、学校も、実習先の管理団体も、職場も、「放っておけばこの人達の人生を台無しにするかもしれない」と思いながら、でも「本人がそれを選択した」という言い訳を残しておくことで、「自分が積極的に手を下した訳じゃないし」と自己弁護することができる。責任をみんなで薄めた上で、決定的な責任は本人に負わせるような構造なんだろうと思う。


 今年4月に施行された改正入管法は、昨年12月8日の未明に参議院で与党の賛成・野党の反対で成立した。採決の前日、12月6日午前の参院法務委員会で、立憲民主党有田芳生委員がこうした実態について指摘していた。

 例えば、ベトナムハノイの空港から、お父さん、お母さんに送られて、若い二十六歳の男性あるいは女性たちが技能実習生として働くために日本にやってきた。ホーチミンでも、あるいは中国からも、モンゴルからも、タイからも、多くの若者たちがこの日本にやってまいりました。しかし、技能実習生の実態というのは、前回もお話を伺いましたように、非常に過酷なものがある。今でも続いています。
 法務省が調査した結果、自らを守るために失踪せざるを得なかった若者たち二千八百七十人の調査の結果明らかになったことは、法務省がこれまで明らかにしたように、最賃以下、二十二人、〇・八%どころか、六七%、約、二千人近い人たちが最賃以下で働かざるを得なかった。さらには過労死、その水準の環境の下で働かざるを得ない人たちが一割いたということが私たち野党の調査、分析によって明らかになりました。
 しかし、事はそんな状況にはありません、実は。今から驚くべき新しい事実、資料を明らかにいたします。
 過労死水準で働いていた人たち、今でも全国各地にいる。これは法務省が作成した資料です。技能実習生でどれだけ多くの人たちが命を奪われたか、失っているか。
 例えば、平成二十七年一月四日、中国からやってきた三十二歳の女性、溺死。一月七日、中国からやってきた二十八歳の男性、凍死。二月二十一日、モンゴルからやってきた三十四歳の男性、自殺。三月二十六日、ベトナムからやってきた二十五歳の男性、自殺。ラオスからやってきた二十九歳の男性、急性心筋梗塞。中国からやってきた二十一歳の女性、自殺。ベトナムからやってきた二十一歳の女性、低酸素脳症。中国からやってきた二十三歳の男性、くも膜下出血。中国からやってきた三十三歳の男性、溺死。ベトナムからやってきた二十五歳の男性、小脳出血ベトナムからやってきた二十七歳の男性、脳出血ベトナムからやってきた二十一歳の女性、溺死。中国からやってきた二十九歳の男性、溺死。中国からやってきた三十五歳の男性、急性心不全。中国からやってきた二十八歳の男性、急性呼吸促進症候群。中国からやってきた二十二歳の女性、くも膜下出血
 ごく一部です、今御紹介したのは。多くの、若者たちですよ。日本にやってきて凍死、溺死、自殺、病死、ずうっと続いている。今だって続いているんですよ。これが技能実習生の実態ですよ。これ法務省の資料ですよ。大臣、これ御存じですか。

 この質問に対して、山下貴司法相は「もとより、この資料については承知しております。」と回答し、有田委員が入管当局でどう対応・調査したのか質問すると、政府参考人の和田雅樹入管局長は「調査しているかどうかにつきましては、私には、こちらでは、当局として把握していないということでございます。」と回答して紛糾したのだった。
 この時山下法相は「まだ足らざるところが今ないか、それは弁護士であります門山政務官をトップとしたこの技能実習の運用に関わるプロジェクトチームについて、その方策についてしっかりと検討していきたいと考えております。」とも回答している。このPTは採決の約2週間前、11月19日に発足したもので、「技能実習生の失踪問題が国会審議等において注目を集めたことにより」(「調査・検討結果報告書」の「設置の経緯及び目的等」より)設置されたものだった。
※「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」の「調査・検討結果報告書」は発足から4ヶ月後の今年3月に発行されている。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/ginoujisshukyougikai/190425/4_pjteam.pdf


 委員会は午後になって安倍首相が出席し、有田委員が改めて質問する。

 私が言いたかったのは、そういう外国人の技能実習生が日本にやってきて、自殺、凍死、溺死。溺死はこの三年間で七人ですよ。おかしいでしょう。何でこんな事態になっているのかということを今朝入管局長に聞いても、法務省は分からない。そんな異常な事態が起きているのに何で調べないのか、総括しないのか、対策取らないのか。おかしいでしょうということをお聞きしたいんですよ、法務省の対応として。
 だから、具体的なこと聞いているんじゃないんですよ。溺死とか自殺とか、そういうことがあるのに法務省は分からないという体制を総理はどうお考えですかという質問なんです。

 これに対して、安倍首相の答弁は以下の通りだった。

私はその表も見ておりませんからお答えのしようがないわけでございますが、亡くなられた事案、今、溺死された方が三名ですか、三名おられるという御指摘ございますが、私はその事実もその表も知りませんし、その事実が果たしてどういう結果そうなったか、実際に三名おられるのかどうかも含めて、じゃ、どういう結果でそうなったかということについても、これは存じ上げませんのでお答えのしようがないわけでございますが、これは、法務省において、もしそれが異常な数値であれば、当然それはどうしてそうなったかということは対応していくことになるんだろうと、こう思うわけでございますが、いずれにいたしましても、今までの実習制度等々、あるいは留学生の方々がアルバイトで働くこと等々において様々な御指摘がございました。そういう御指摘を踏まえた上で、今回、新たな制度をつくり、法務省の中において出入国在留管理庁をつくって、しっかりと直接そこが指導監督を行っていくことになるんだろうと、こう思います。

 映像で確認すると安倍首相はこの発言の前半でへらへらと笑っている。ただそれは亡くなった人達を笑っているというより、野党の追求を「難癖やいちゃもんを付ける野党と、呆れて笑う自分」といったイメージで片付けようとする癖が付いてしまっているために、ここでもそれが出ているだけだろうと思う。「実際に三名おられるのかどうか」というエクスキューズも、「野党による印象操作の被害を受けている自分」という被害者意識から来るのかもしれない。「私は総理大臣ですから、森羅万象すべて担当しております」(19年2月6日参院予算委)と語ったり、あるいは「自分は行政府の長である」という発言をよくするところからも、強いリーダーとして自分がコントロールしているんだという自負はあっても、こうした場面では「(法務省で)対応していくことになるんだろうと、こう思うわけでございます」と他人事のように語られる。それを聞くとやっぱり、嘘でもいいから真剣な顔で「人権侵害は必ず私が解決する」と言い切ってほしいな、と虚しい気持ちになる。
※12月6日の参院法務委員会の議事録と映像は以下。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/197/0003/19712060003008.pdf
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php


 労働力の不足が深刻だから改正入管法を通します、でも現行制度での人権侵害などの問題点は後から検討します、と言われてしまうと他国からも「労働搾取だ」と見えても仕方のないことだろうと思う。
 資本主義の基本的なメカニズムとして、価値体系の差分がどこかにあれば均される方向に進むのはどうしようもない。賃金のレートに差があれば、そこが利用されること自体は現行のシステムでは今すぐ変えることは難しい。事実、相対的に賃金の高い国でタクシー運転手や清掃員やベビーシッターを周辺の賃金の低い外国人が担っているのは世界的にもありふれた光景になっている。労働者がすなわち消費者であるという産業資本主義の原則(ここが奴隷性とは異なる点になっている)に従って、外国人労働者内需の下支えにも寄与する。
 ただその選択がせめて自由であってほしい、フェアであってほしいだけだ。借金や違法性で立場を弱くして縛り付けるのはヤクザのやり方だ。番組は「国際社会から労働搾取だと批難されている」と指摘する。他国の制度設計も調べて比較しないとフェアじゃない、って言い分もあるかもしれないけど、「あいつが殴ってるんだから俺も殴っていい」という道理は通らない。
 そうして搾り取れるだけ搾るのはやっぱり、あんまりにもあんまりだ。人間は手段じゃなくて目的だ。


 『月曜から夜更かし』(6/17放送分)で外国人在留者に街頭インタビューをしていて、彼らは一様に「コンビニ店員になれる外国人はすごい、リスペクトしている」と答えていた。接客できるレベルで日本語を習得して、多様な仕事も覚えるのは大変なことだという。VTRが明けてマツコ・デラックスが「そう聞くと見方も変わるよね」と言って、観覧席にいた若い人たちがうんうん頷いていた。
 そしてインタビューを受けた外国人達は日本や日本人が好きだから来たと言っていた。その一方で日本に行くという選択肢を後悔しながら帰国したり、あるいは帰国できずに亡くなる人達がいる。自分の生活がそうした犠牲で成立していることを思い知らされるのもしんどい。例えば50年くらい経って、逆に日本人の若者が外国でそうした働き方を強いられる未来もあるのかもしれない、みたいなことを番組を見ながら考えていた。

ロシア旅行(2019年6月)事情のアップデート

 関係ない人にはまるで無関係だけど、知りたい人にはすごく助かるのが技術系や旅行の情報で、サンクトペテルブルクに4日間、モスクワに2日間一人で旅行してきて、ガイドブックやネットの情報と違っていたことや違わないけど実感として思ったところを参考までに置いておくのがネットへの恩返しだろうと思って。
 旅行先の貧弱な回線で重い写真を大量に読み込ませられるのつらいからファイルサイズは小さめにした。


ビザ

 日本のパスポートはかなりの国をビザ免除で行けて便利だけど、ロシアは観光でもビザがいる。必要な書類の情報とかは他の人が書いてる通りだけど、大使館の受付けの状況が変わってた。(業者に全部頼む人は関係ない話。)
 ネットで調べた時は「大使館での整理券の配布は1日70枚くらいで、朝9時半に行けば間に合う」となっていたけど、自分が5月中旬に行った時は整理券は25枚、8時前には並ばないと取れない(早い人は6時くらいから並んでいる)状況だった。実は今年(2019年)の4月から「公式ロシアビザセンター」というのが開設されていて、そっちとの兼ね合い?で枚数が激絞りになっていたのかもしれない。大使館の張り紙を見て初めてビザセンターの存在を知って徒歩20分ほどで向かったらそっちは空いていて無事に申請ができた。ただし大使館だと無料だけどセンターだと4500円かかる。センターのサイト↓


  https://interlinkservice.world/japan/jp


 交通費と手数料と手間を考えると業者に頼んだ方が安上がりだなと思った。
 大使館のサイトの案内も最新情報が集約されていなくてものすごく分かりにくい。本体の解説とプレスリリースを自分で総合して読み込まないと正確に理解できないような感じ。整理券の情報も載っていない。
 状況はまたすぐ変わってしまうのでググる時も期間指定して検索したり、あとTwitterでも検索した方がいいなと思った。


英語

 ガイドブックでも、昔ロシアに行ったことのある人に聞いても、英語があまり通じなくてつらいとのことで不安だったけど全然そんなことなかった。観光地だからだとは思うけど、ここ10年くらいでかなり変わったみたい。レストランやカフェでもすぐ英語のメニューを出してくれたし、英語で注文しても分かってくれた。
 さすがにホノルルやソウルや台北の日本人観光客が大量にいる地域みたいに日本語の案内も完備で店員も日本語ぺらぺらみたいなことはあり得ないから、英語が全く無理ならちゃんと添乗員をつけないときついとは思った。


 一方で中国語の案内はほぼ完備されていて、韓国語も多少はあったけど日本語は皆無という状況だった。クレムリン中韓のパンフはあっても日本語はなかった写真↓



 中国と韓国はビザの免除があるけど日本はない、という違いがここに現れているのかもしれない。実際、中国人の団体客はどの瞬間にもいたし、韓国人もよく見かけたけど、日本人は期間中で2回しか見なかった。日露平和条約が締結されればビザも免除になるのだろうか。


 英語で事足りるけど、それでも「ありがとう」「おいしかったです」くらいのロシア語は瞬間的に口から出せるように練習した方がやっぱりいいと思った。日本で外国人旅行者に道や電車を訊ねられることも時々あって、英語で話しかけられるのは当然で別に失礼だとも思わないけど(それが覇権言語の性質だと思うし)、でも日本語で「ありがとう」と言われれば悪い気もしないのと同じで、ロシア語でひとこと言うだけでも相手は「うんうん」って感じでちょっと嬉しげにしてくれることもあるし、別に無反応の時もあるし。
 その土地の言語を話したら相手にほんとに通じた、っていう実績がたとえ0.01でも「ゼロじゃない」っていうのはやっぱりうれしい。


交通

 サンクトペテルブルクではヤンデックスタクシーをずっと使っていた。ロシアではウーバーがヤンデックスに買収されたそうで、ウーバーのアプリをロシアで開いたら「ヤンデックスのアプリをインストールしろ」というメッセージが出た。
 日本のクレジットカードが登録できなくて、他のサイトでもそう書かれていたので自分だけじゃなかったみたい。現金払いもできる。ドライバーはみんなちゃんとお釣りを渡してくれようとしたけど、50円未満の小銭だから毎回「いりません」って断った。ドライバーはほとんどの人が英語を喋れないと思うけど、行き先の指定も値段の提示もアプリ通りなので話す必要がないので別に問題はなかった。
 日本のタクシーと比べるとすごく安くて、そこそこ移動してるつもりでも3~500円くらい。副業でやってるとしても、あれで稼げてるのかしらと心配になる。


 モスクワでもヤンデックスタクシーは使えたけど、旧ソ連時代の駅がきれいなので(というかソ連っぽさがあるので)地下鉄を使った。約100円でどこまででも行ける。ものすごい過密ダイヤで運行してるのか2分間隔くらいで次の電車が来る。交通費はとにかく安かった。鉄道もバスもとにかく安いと、タクシーもそこに合わせて安くなってしまうんだろうなと思った。
 新しい車両だとドアのとこに赤いランプがついてて、点灯するともうすぐ閉まる合図だから駆け込むな、というシステムみたいで、ちょっといいなと思った。次がすぐ来るからそもそも駆け込むインセンティブが働かない面もあるのかもしれない。



支払い

 ガイドブックだとクレジットカードが使えない、機械があっても拒否されて近くのATMでキャッシングさせて現金で払わせられる、という話を見て、多目に両替して行ったら全然そんなことなかった。これも観光地だからだとは思うけど。
 空港の送迎はつけてて、ロシア人の日本語ガイドさんとお話しする機会が少しあったけど、「どこでも使えます。カード社会。」とのことだった。これも10年くらいの話なのかもしれない。日本もずっと使えなかったマクドナルドでようやく2年前から使えるようになったし、同じようなものかもしれない。


 3万円両替して、でも使う機会があまりなくて、最後の2日くらいでせっせと現金払いをしても減らなくて、空港でなんとか使いきろうとして、もうお土産も一通り買っちゃったし、自宅にそんなにマトリョーシカは必要ではないし(もう買った)、人にむやみにマトリョーシカを贈るのもどうかなという気もして(人の分ももう買った)、時間もないし、お店も歩き回って、困って、スターウォーズのレゴを買った。ミニフィグ(レゴの人形)が前から欲しかったし、と思い込むことにした。
 デンマークの会社が作ったアメリカのキャラクターのおもちゃをロシアの空港でかなり割高で買って日本に持って帰るのって何なんだろう、と思ったけどしょうがない。
 他のミニフィグがいるところにチューバッカたちも置いた。目にするたびにこの世で私一人だけは(これロシアで買ったやつ)と思うから。



ガイドブック

 種類がなさすぎて、情報がちゃんと集約されているものだと「地球の歩き方」一択だった。ネットで調べればいいって話もあるかもしれないけど、情報がまとまってないしフォーマットが違うものを網羅的に見ようとするにはすごく不便だし、現地でも最悪の時は紙の地図や情報があるのは安心だよ。
 あとキリル文字の一覧表があるのが嬉しかった。だんだん慣れてきて例えば「ресторан」がペクトパーじゃなくレストランと読めるようになってきたりした。たぶんすぐ忘れる。


犯罪

 特に怖い思いをする場面はなかった。話しかけられることもほとんどなかった。スリと置き引きには気を付けろとガイドブックでもネットでも送迎の人にも言われたので気を付けたりはしたけど、それはロシアに限ったことでもない。


ネット規制

 LINEは使えないという話はその通りだったけど、他は特に何もなかった。出張で中国へ何度か行っているけど、金盾でLINEもGoogleTwitterも何も見られないけど、ロシアはそこまで厳しい状態ではなかった。


昼の長さ

 サンクトペテルブルクは夜がなかった。厳密な白夜ではないけれど、夜だなって思える時間が午前0時半~1時くらいで、その間も「日の出前」くらいの明るさだった。日中も太陽が低い位置であまり高さに変化がないので、未明から深夜まで午後3時くらいの明るさがずっと続く、という感じだった。たまたま選んだ日程が夏至を含んでいた。
 ガイドブックとかで事前に知っていたけど、体験するとかなり変な感じだった。今まで意識したことがなかったものの普段、影の長さや光の強さ・当たり方で時間を把握してて、「もうすぐ夜だな」とか「そろそろご飯」とか「寝る準備」とかの感覚にリンクしてるんだなって思った。


 ずっと同じ明るさだし、お店もずっとやってるし、みんな普通に出歩いてるから、「ご飯を食べる時間」がまず狂ってくる。普段は夜9時に夕食だと「遅すぎる」って思うけど、違和感がなくなってくる。睡眠も浅くなる。
 睡眠不足のはずなんだけど全然眠くならないなー、と思ってたら、地下の照明の薄暗いレストランで注文を終えた直後に、寝落ちする寸前、手に力が上手く入らないレベルの眠気に突然襲われたので、明るさは大事なんだなと思った。
 ヘルシンキストックホルムオスロサンクトペテルブルクと同じくらいの緯度なので事情は同じようなものなんだろう。


 モスクワはだいぶ南なので、東京と比べれば高緯度だし夜も長いけど、しっかり夜があるのでちゃんと眠れた。


赤い帆祭り

 空港送迎の時に「明後日お祭りがあるんですよ。卒業生を祝うお祭り」という話を聞いて、調べたらサンクトペテルブルグで最大の「赤い帆祭り」というものだった。ロシアやヨーロッパからも100万人がくるお祭りだという。夏至にやってて、たまたま時期が被った。ガイドブックにも載ってなかったから、教えてもらわなければ知らないままだった。
 この旅行者の記事(2016年)を参考にして出掛けた。


  『3連休でサンクトペテルブルク ~白夜祭Алые паруса~』サンクトペテルブルク(ロシア)の旅行記・ブログ by MARIELさん【フォートラベル】


 あと英語で「scarlet sails」で検索したら開催日時がちゃんと出てきた。22時からエルミタージュ美術館広場前の大規模コンサート(チケット必要)、0時40分から花火+赤い帆船の運行(チケット不要)だという。
 かなり広範囲に交通規制がされていた。Googleマップだとよく分からないけど、ヤンデックスだと(タクシーの配車アプリなので)赤く範囲が区切られていて分かりやすかった。



 ただこの中もさらに歩行者の進入エリア規制が複雑に設定されていて、正直行ってみないとよく分からなくて、人の流れに身を任せるみたいな感じだった。
 花火(と帆船)がメインイベントみたいで午前0:40開始。1時間以上前に来たのに川沿いはゲキゲキの混み混みで平日朝の田園都市線みたい。



 このままさらに混んでくる中でじっと立って待つのしんどいなと思って、急いで交通規制の外のエリアに移動してヤンデックスタクシーでホテルに0:30くらいに戻って、部屋から花火が見えた。(AZIMUTというホテルだった。)花火は約20分間。イサク聖堂をシルエットにして大きな花火が幅広にわーっと一斉に開くのを、明かりを消した真っ暗な部屋の中からずっと見ながら、ありがたいこっちゃでと思った。





 サンクトペテルブルクはどこを見渡しても欧州の古都って感じで町並みがめちゃくちゃきれいで初めて来た時(うわーーっ)ってなったし、モスクワはソ連感のある建物がたくさん残っているし首都だし、見て面白かった。京都と東京みたいな立ち位置。他の欧州の人気エリアに比べると、ツアーも少なくて情報も少ないからますます旅行先として選ばれないけど、航空会社と旅行会社がしっかり企画すれば十分大人気になりそうなところだな(実際中国人はめちゃくちゃ来てるし)と思った。すでに欧州の人気エリアがいっぱいあるからあえて注力する必要性を感じないのかもしれない……。
 行く前はビザ取得はめんどくさいし、クレジットカードも英語も使えないらしいし、犯罪も多いと聞いて気が重かったけど、そんなことなくて終わってみたら行って良かったなと思った。例えば中国だとネット規制もあってクレジットカードも英語もほぼダメなので滞在中とにかく不便で(あと衛生面の感覚の差が大き過ぎて)、出張では今後も行くけど旅行先にはたぶん選ばないな、と思っててロシアもそれに近いのかと思っていた。でも(観光地にいる分には)他の海外旅行と比べて不便や危険ってこともなくて楽しかったことを報告します。

2000万円が偶然ある

 老後に2千万だか3千万円が必要だという。もちろん退職金と個人年金はある前提で。とても簡単なことだ。


 まず男に生まれること。これは大前提だ。女性が安定して高い給与を得られる社会になっていない。男が稼いで女は子育てと家事というモデルは国家の経済的な後退によってすでに終了しながら、その価値観だけはいびつに残存し、「結婚や出産で退職する可能性が高いから」と最初からキャリアを捨てさせ給与水準を抑え込まれる。
 さらに逆算して「だから学業もそこそこでいい」という価値観も押し付けられる。医者の大学が入学試験で男に下駄をはかせて、「だって女はキャリア積めないでしょ」と公然と言い放つような社会なのだ。「女はコミュ力があるからその分点数さっ引かないとフェアじゃないから」と平気な顔で言う。コミュ力を高くしなきゃ生きていけない、周囲から「女は気を遣えて当然」という理不尽な期待を押し付けられ、それで能力を伸ばしたら今度は「能力が高すぎるのであらかじめ評価を下げておきました」という。
 自力で稼ぐには最初からハードルを上げられていて、じゃあ収入の高い男性を捕まえろなどと主体性を奪われる。だから、まず自力で男として生まれてくることが大前提になる。


 生まれ年もきちんと選ぶ必要がある。
 就職氷河期に新卒になるなんてもってのほかだ。例えば2010年に新卒になるように生まれてはいけない。リーマンショックの影響で新卒採用が絞られている。2009年も内定辞退が社会問題化した。きちんと2008年入社になるように生まれないといけない。それが新卒一括採用・終身雇用制という労働市場流動性の低い社会で生まれた者の当然の作法だ。


 親を選ぶのも当然だ。
 奨学金というハンデを負っていたら金は貯まらない。家が金持ちならラッキーだけど、貧しくてもいい。ちょうどいい貧しさを選べばいい。例えば高専に入って授業料免除を受けられる程度に、親が離婚していて家計が苦しいといい。免除が受けられる程度には貧しくて、奨学金を借りずに生活できる程度には余裕がある、ちょうどいい貧しさの家を選ぶ。貧し過ぎてもいけないし、貧しくなさ過ぎてもいけない。
 そして親は60代前半くらいに突然死するといい。なにせ介護も自助努力が求められる世界だから、経済的な負担を減らすにはそうでないといけない。
 そんな親を選んで生まれてこないといけない。


 金の新陳代謝を低くする。筋肉があったり運動をしていたりすると代謝が高く太りにくい。金も同じことで、代謝が下がれば太る=金が貯まる。衣食住へのこだわりを捨てる。家賃の安いアパートに住み、酒を飲み歩いたりせず、服も「人におかしく思われない程度」で満足する。趣味も映画や読書がいい。山や海へ行ってはいけないしバイクや車を買ってもいけない。場所も金もかかるからコレクターになってはいけない。他人にケチだとかつまらない奴と言われても無視しないといけない。快楽を自主的に断念しないといけない。
 子供の時に貧しくて我慢を重ねていると、就職して手元に金できた途端にタガが外れる恐れがある。子供の頃は我慢せずに暮らせる程度の余裕があり、大学生くらいの時には授業料免除を受けられる程度に貧しくて、そのまま親への罪悪感から贅沢を自分に禁じる体質になれればいいだろう。そういう意味でも生まれる家をちょうど選ぶ必要がある。


 こつこつ貯める、こつこつ努力する、といった行為には、一定程度の自己肯定感がないといけない。自分の手で自分の未来をコントロールできるという信頼は、他人からの肯定や成功体験の積み上げが必要になる。そこそこの学校をそれなりの成績で出たり、会社内である程度の立場を確保するには「こつこつやれる」という性質がどうしても必要になってくる。「お前はバカだ」と否定し続ける親を選んではいけないし、主体性を根こそぎ奪って全てを指図するような親を選んでもいけない。


 住むのは首都圏がいい。「地方住みの方が家賃も物価も安くて得」と言われるがまやかしだ。家賃は間違いなく地方の方が安い。だが地方は車がないと生きられない。家賃の差が吹き飛ぶ。そして物価なんて日本全国で言うほど差はない。物価の差より給与水準の差の方がはるかに大きい。仕事の選択肢も狭くなる。首都圏、せめて大都市圏でボーナスの出る大企業にでも就職していればいい。
 首都圏には人が集中しているという絶対的なメリットがある。公共交通機関は発達し、イベントなども充実している。空路だって日本の国際線のほとんどが羽田と成田に集中している。関空セントレアとの格差がはっきり存在する。地方からイベントや海外に行こうとすれば、交通費は余計にかかるし前泊だって必要になる。


 そして結婚したり子供をつくるなんてもってのほかだ。子育ては自己負担で何とかしろという社会では経済的に不利に決まっている。その上、女性は社会的に給与水準を低く抑えられている。パートナーを作れば自分の持ち出しが増えるだろう。一人で生きてろ。寂しいなどと言っていては2千万円は作れない。
 逆に言えば、子供を諦めればちょうど2千万円ができるかもしれない。


 株やFX、住宅投資なんてバカなことをしてはいけない。戦うだけの知識も時間も持ち合わせていない鴨がネギを背負っていくのは愚かだ。お前には本業があるはずだ。「今これがアツい!」とニュースでやっているのを見て知る時点でもう遅い。
 しかし全てを預金に回すと実質的には目減りしていく。投信のインデックスでも組み合わせて世界全体の市場を小さく再現して、そこに時間的に分散して投資していく。
 近くで見るとギザギザしているグラフも、遠くから見るとなだらかな右肩上がりになっている、というのが基本原則だ。これは産業資本主義を続けている以上は変わらない。資本の全体はゆっくり増大していく、そのレールに金を乗せておくのが重要で、細かなノイズに賭けるのは無謀だ。「細かなノイズ」と言っても人間の時間スケールでは無視できない大きさで、数年単位になる。だから、投入するときも時間的に分散し、取り出す時も時間的に分散する必要がある。毎月少額を投入していき、折り返しの40代半ばから少しずつ引き出して債権など低リスクなものへ移していく。
 濡れ手で粟の大もうけなんて夢を見ずに、得もしないが損もしないし時間も手間もかけない方法と言えば、せいぜいこれくらいしかない。
 少し古いが、例えば橘玲の著作がこの原則をコンパクトにまとめている。

臆病者のための株入門 (文春新書)

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 ただしこの資産形成は、一定程度の収入がコンスタントにあることが前提だから結局、先に挙げた性別と親と生まれ年を事前に適切に選んでおかないといけない。
 その上で欲望も子供も親も捨てれば、60代を待たなくても30代前半には2千万円ができるだろう。実に簡単なことだ。




 子育ても介護も自己負担でやれ、でも税も社会保険料も上げる、あと自力で2、3千万円ほど用意しておけ、と平気な顔で言う。「平気な顔で言う」ならまだしも「そんなこと言ってない。俺は言ってないからな」と政府が真顔で嘘をつく。
 そんな無茶振りに応えるのは難しい。


 独身男性で2008年入社で奨学金の返済もなく首都圏で大企業に勤めていて両親が早死にしている。それが自分の場合で、2千万円のニュースを見たとき(ああ、もうある……)と思った。安堵感と罪悪感がないまぜになった。戦争でたまたま自分が戦死せずに済んで安堵感と罪悪感を覚える、みたいな感じかもしれない。でも怖くて手放せない。両親と同じ64歳で死んで8割寄付して2割甥っ子にあげれば罪悪感の帳尻が合う気もするけど、そんな上手く踏ん切りつけられないだろうとも思う。子供がいたらもっと感覚が違ったんだろうか。


 そんな無茶振りに応えられるわけないだろう、とみんなが怒って、自分もそりゃそうだと思いながら、(でも自分はもうある……)という後ろめたさがあった。黙っていた方が叩かれずに済むとも思ったけど、どういう「たまたま」が重なって「2, 3千万円」ができるのか事例を残した方が、どういう意味でそれが「無茶振り」なのかはっきりするかもしれないと思って。言うまでもなく別にこれが唯一の達成条件でも何でもないし、子育てしつつ夫婦2人で退職までにマイルドに資産を形成してくって理想形もあるだろうけど、それももう「典型例」ではなくて似たり寄ったりの偶然の重ね合わせでしか得がたいケースなんじゃないかと思う。
 条件が偶然重なれば生き残れます、その生き方が幸せかどうかは知りませんけど。じゃあ後は頑張って下さい、と国から言われている様子がよりはっきりするかもしれない。