やしお

ふつうの会社員の日記です。

溝口敦『ヤクザ崩壊 半グレ勃興』

https://bookmeter.com/reviews/92967752

暴対法でヤクザを締め付けると、マフィア化して見えにくくなったり、ヤクザ以外の反社勢力に取って代わられたりしていく。社会からドロップアウトしてしまう人、暴力や犯罪に頼って生きざるを得ない人たちの総量自体が実はそんなに変わらないのだとすると、警察が実態を把握してしっかり組織化されて規律で縛られたヤクザみたいな集団に包摂された方が、社会全体としては治安が安定するのだろうか、とは思ってしまう。

伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

https://bookmeter.com/reviews/92083440

情報を入力される場所(器官)でカテゴライズして考えるのではなくて、どう処理されるのかで分類した方が、より正確に視覚障害者を捉えられる、っていう認識の逆転が面白い。例えば「読む」という行為も視覚情報だと単純に見なしてしまうと、視覚を失った人は「読めなくて大変」になるけれど、情報の処理のされ方で考えるともっと幅広く「読む」行為が存在していることが分かる。入力器官で考えると視覚を第一にしたヒエラルキーになってしまうが、その認識を変えないといけないという。



 本書は視覚障害者がどのように工夫して暮らしているか、どこに困っているか、といったエピソードを色々紹介するというより、むしろ健常者が障害者に対して無意識に前提してしまうような優位性のありかを特定して転倒させるような試みになっている。その意味で、どちらかというと抽象的なというか形而上学的な話のボリュームの方が多くなっている。ただ本書の帯はどちらかというと前者を紹介するような見た目になっていて(ミスリードとまでは言わないけれど)ちょっと思っていた内容と違った。個別具体的な話ももっと知りたかったのでその点物足りなく感じた(が、それは本書のせいではなく、単にミスマッチだっただけ)。

清武英利『プライベートバンカー』

https://bookmeter.com/reviews/92083390

節税目的のシンガポール移住は(表立った活動ができないので)引きこもり気質の人でないと向かないけど、引きこもり気質の人はお金持ちにはなりにくい、というジレンマがあって、バイタリティ溢れるお金持ちは相続税対策で移住すると心が死ぬ、というのはちょっと面白い機序だなと思った。日本で資産家に対して証券マンや銀行員、税理士といった職業があるけど、プライベートバンカーという「資産面での執事」みたいな職業があるのは知らなかったし、どういう働き方をしているのか具体的な事例を見せてもらって面白かった。