やしお

ふつうの会社員の日記です。

刑部芳則『公家たちの幕末維新』

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幕末期の公家・朝廷でも「テロで命の危険にさらされると政治権力の取り得る選択肢が極端に狭まってしまう」状況が起きていたことがよく分かる。孝明天皇含め朝廷上層部は、日本と海外の国力差を考慮して「攘夷は望むが即刻攘夷は望まない」という意思でも、そうした現実的な状況を知らない下層部の過激な即刻攘夷派の圧力をかわしきれない。幕府・佐幕派倒幕派の双方とも、プロセスで朝廷を無視せず重視する状況が具体的に描かれている。明治後に元公家たちが記録作成に心血を注いでいてなんか感動した。

渥美俊一『チェーンストア組織の基本』

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サイゼリヤ正垣泰彦やニトリ似鳥昭雄ら創業者が、渥美俊一のサロンメンバーで、渥美のチェーンストア理論により国内最大手になったという話を正垣の著書で知って渥美の理論書を読もうと思った。自分が大手製造業に勤めていて、「小売業だとそんな基本ができてないの」と驚く内容も多々あって、しかしこれは小売業で数店舗→数百店舗と組織拡大が早いために、規模-組織体制をリンクさせる難しさに由来するのかもしれない。体系的・普遍的に整理された理論書だが実践は困難で、実践できた会社が規模を適切に拡大できるのだろうと感じた。

松本敏治『自閉症は津軽弁を話さない』

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ASD自閉スペクトラム症)では「人の行動には意図がある」という理解が困難なのだと知ると、実は自分は無意識にそれを自明の前提として生きてるんだと自覚することになる。逆にTD(定型発達)が「意図を勝手に(過剰に)読み取ってしまう」のも一種の不具合になり得、TDの側も「意図を読まない/言葉通りに受け取る」トレーニングが必要だと感じる。素朴な現場の疑問を一つずつ辿っていくことで、「方言って何だ」「ASDのコアの特性って何だ」「コミュニケーションって何だ」といった根本的な問いに辿り着いて、楽しいプロセスだった。