やしお

ふつうの会社員の日記です。

斎藤美奈子『モダンガール論』

https://bookmeter.com/reviews/86008146

めちゃくちゃ面白かった。日本で女性のキャリアパスが明治以降どう変化してきたかを大量の資料を参照しながら、実証的に語る。「キャリアパス」と言っても当事者にとって選択的なものじゃないし、望むと望まざるとに関わらず時代背景や経済状況に左右される。そうした構造も明確に描かれて、当事者の価値観や生活の推移も見せてくれる。「一億総中流」「専業主婦が当たり前」は全然普通ではなく一瞬だけ成立した構造だったんだとわかる。

モダンガール論 (文春文庫)

モダンガール論 (文春文庫)

増川宏一『伊予小松藩会所日記』

https://bookmeter.com/reviews/86021569

江戸時代を通じて取潰しも転封も免れきった小藩の記録。1万石で藩士70人+足軽等100人って規模感としては中小企業くらいだろうか。武士と農民の間の境目は想像よりも緩やかで、姻戚関係を結んだりしている。分類上は百姓でも現実にはみんな兼業農家で多彩な職業を持っていて、むしろ農業の方が副業のような人もいたり、商人や庄屋も一代限りで苗字帯刀を許されていたり、イメージよりずっと柔軟性のある世界だ。訴訟関係、係争処理の話も現代との価値観の違いが見えて面白い。

伊予小松藩会所日記 (集英社新書)

伊予小松藩会所日記 (集英社新書)

高山文彦『麻原彰晃の誕生』

https://bookmeter.com/reviews/86021584

オウム真理教以降の麻原彰晃というより、オウム以前の松本智津夫の話。まっとうな努力や勉強の仕方が分からない、でも「自分はすごい」とどうしても信じたい、そうした特性が、地道にやるのではなく虚飾やオカルトや宗教で一足飛びに「自分はすごい」を実現してしまおうとする。しかもそれが「成功」してしまったところに悲劇がある。目が見えるのに盲学校に入れられた子供時代に、親に捨てられた被害者意識と、周囲を圧倒するアドバンテージ(目が見える)を自動的に得て優越者の意識を持ってしまう、というストーリーでここでは語られている。

麻原彰晃の誕生 (文春新書)

麻原彰晃の誕生 (文春新書)