やしお

ふつうの会社員の日記です。

鈴木理生『江戸はこうして造られた』

https://bookmeter.com/reviews/86021623

人が密集して住むには上下水道の整備が必須になる。電力のない時代は水の流れを地理的な高低差、ポテンシャルエネルギーに頼るしかない、という観点から見つめると江戸は確かにそんな作りになっているという。あるいは江戸城を建造するには大量の資材を運び込む必要がある。そのためには港が必要になるし、建設が終われば防衛上その他の理由で閉ざされる。そうした種々の経緯や制約を多面的に追いながら、江戸が(家康以前の時代も含めて)どのように巨大な都市として形成されてきたかが詳細に描かれる本だった。


 面白かったけど、読んでいるとたびたび(それは恣意的な解釈なのでは?)(自分のストーリーに合わせ過ぎでは)と感じる箇所があって、それは「複数の解釈の可能性がある中で一つに断定している(ように見える)」箇所なのだけど、本書を読む以前に兵藤裕己『後醍醐天皇』を読んでいて、こっちは過去の通説をいかに複数の資料を突き合わせることでその解釈が現代の価値観や研究者の思い込みに沿ったものだったかを丹念に検証するような本だったから、余計にそう感じてしまう。

角幡唯介『空白の五マイル』

https://bookmeter.com/reviews/85463059

極限状態まで行ってギリギリ生き残る話を見ると、人間は本当にあっさり死ぬこともあれば、しぶとく死なないこともあって、強いのか弱いのか分からなくて不思議な感じがしてくる。でもそれは運で全部決まるわけじゃなくて、経験や準備によって「より生きられる確率の高い選択肢」を重ねることで生き残ってるっていうのが本書を読むとよく分かる。高山や雪山で遭難や滑落する話はいくつか読んだことあったけど、谷を攻める話は初めて読んで、谷も恐ろしい。絶対に誰も助けてくれない空間にたった一人いる感覚を想像すると途方もない気持ちになる。

矢野香『一分で一生の信頼を勝ち取る法』

https://bookmeter.com/reviews/85464052

聴衆への話し方のハウツー本。会社で「話し方の研修」を強制受講したんだけどあまり得るところがなくて、その分野で面白い本がないかなと思って探したら評判良さそうだったのが本書で、実際読んでみたら面白かった。「聴衆を不安にさせない=敵対的な気持ちにさせない」「相手に負荷をかけずに理解させる」が基本コンセプトとしてあるのかなと思った。体系的というより技術の話で、具体的に何秒・何文字でどの順で話すべきか、身体をどう使うかという話なので、読んで終わりじゃなくて日常的に意識して訓練しないと身に付くことはない。

【NHK式+心理学】 一分で一生の信頼を勝ち取る法―NHK式7つのルール―

【NHK式+心理学】 一分で一生の信頼を勝ち取る法―NHK式7つのルール―