やしお

ふつうの会社員の日記です。

伊東祐清『自衛隊失格』

https://bookmeter.com/reviews/106508572
読み始めた時に「辞めた組織のことを悪し様に批判する本かな?」と一瞬思ったけれど全然違った。最初に批判はしても「自分もそうなり得る」「なぜそうなってしまうのか」も考えるので読んでいて嫌な気持ちにならない。「特殊部隊のために構築した内外の人的ネットワークを組織に活かすために自分が組織を離れる」という特殊な理由で退職していて、例えば外交官だった佐藤優が逮捕された際に「インテリジェンスの掟を守る」という特殊な方針で裁判に臨んだように、自己の利益を度外視した選択を個人が取るのは(真似するのが難しい分)本当に面白い。

諏訪恭一『価値がわかる宝石図鑑』

https://bookmeter.com/reviews/106508541
同著者の姉妹編『品質がわかるジュエリーの見方』同様、写真も豊富できれい、十分な網羅性でこの1冊で宝石の価値体系を内面化できる。著者の見識が高く、思考や認識がとてもフラット・フェアなのも読んでいて気持ちがいい。著者は2016年刊行の本書で「宝石は今後(新規の採掘ではなく)還流による流通が主になるはず」という認識を示しているが、22年開催の科博の宝石展の図録の寄稿でも同様の認識を示しつつ、「強制労働や紛争につながる乱開発をやめること」にも一歩踏み込んでいて、還流の程度は思いの外進んでいないのかもしれない。

山口遼『ジュエリーの世界史』

https://bookmeter.com/reviews/106508491
「日本では宝飾品が飛鳥時代~明治まで姿を消した」ことを「不思議」と感じるのは、「宝飾品を身につけることが当たり前になった時代」から見ているからで、むしろ「西欧で宝石と貴金属を使ったジュエリーが発達した不思議」を明らかにしないと逆なんだろうなと思った。網羅性はないが、ティファニーハリー・ウィンストンの歴史など、読み物として面白かった。文庫化は2016年だが元の刊行は1987年で情報が古いと思われるところや、著者の思い込み・独断と思われる書きっぷりが散見されて快適な読書体験ではない面もある。