やしお

ふつうの会社員の日記です。

中川右介『松竹と東宝』

https://bookmeter.com/reviews/115499412
京都の芝居小屋の売店の子として生まれた双子(白井松次郎大谷竹次郎)が、劇場をひとつずつ手に入れて最終的に歌舞伎界を制覇する話と、山梨の裕福な商家に生まれて高い学歴を積んだエリート銀行員(小林一三)が、電鉄ビジネスを手掛ける過程でショービジネス(宝塚歌劇団東宝等)にも傾倒していく話とが交差しながら語られていく。もともと宝塚が少女歌劇なのは女性・子供だと賃金が安いからという理由もあったとか、映画が出てきた時の歌舞伎界の動きなども詳細で面白かった。

柄谷行人『ニュー・アソシーショニスト宣言』

https://bookmeter.com/reviews/115499402
新自由主義の弊害が見えてくると、福祉国家へ舵を切れという主張が増えてくるが、もともと福祉国家が維持できなくなったことで新自由主義が出てきている経緯を考えると実は非現実的で、そうではなくて「資本=ネーション=国家」の枠組みの外側を考えないといけない、という指摘が示唆的だった。NAMという活動自体がその「外側」を目指したものになっている。そういう活動は主流にはなり得ないし、主流を目指さないけど、現行の支配的なシステムが壊れた時のショックアブソーバーになるから必要だという。


 資本主義が行き詰ると戦争・暴力・侵略に向かう(交換様式Cが限界を迎えるとDではなくBに向かう)話も、現実にそうだなと思った。

出口保夫『午後は女王陛下の紅茶を』

https://bookmeter.com/reviews/115499381
80年代に書かれた英文学教授による紅茶にまつわる優雅なエッセイ集。もともとイギリスでティと言えばミルクティが当然だったのが「最近は」プレーンティが増えてきている、と当時の変化に言及されていて面白かった。お茶の嗜まれ方、茶器(器だけでない周辺アイテム)、銘柄等々の紹介がされる。読んでてなんか「YouTube見てるみたい」と思ったけど逆で、YouTubeというかVlogがエッセイみたいなんだよね、と思い直した。