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物語の推移や描写があまりに無防備に型通りなので恥ずかしくなる。例えば「夜空の雲をくぐりながら、楽しそうな表情の三日月に見つめられているとも知らずに。」(p.32)やヒロインの登場のさせ方等々。でもこの小説ではいいやと思える。だってこれは、浩遠が他人の思考を、相対化する術も持たずに必死で語るって話なんだ。だから相対化なしの紋切り型の語り口と、ぴったりパラレルなの。そして生活の必要に迫られて浩遠の浮ついた思想に印刷会社の仕事が混ざり込んでゆくにつれて、描写も地に足の着いた実証的なものへと少しシフトしてるんだ。
- 作者: 楊逸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 文庫
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