やしお

ふつうの会社員の日記です。

桐野夏生『メタボラ(下)』

https://bookmeter.com/reviews/77451251

主人公が二人のお話だけど、生気を徹底的に奪われた人がもう一度生き直す話と、生気に満ち溢れていた人がふいに奪われてしまう話とが、お互いがお互いをきっかけにして起動している、そんな物語になっている。「生きる能力」って「真面目で勤勉、頑張っている」という性質の中にあるというより、「他者と関係を構築すること」にあって、そこを疎かにしたり失敗すると生きられなくなる、そんな光景になっている。「生き上手」な人と「生き下手」な人がいる。

メタボラ(下) (朝日文庫)

メタボラ(下) (朝日文庫)

桐野夏生『メタボラ(上)』

https://bookmeter.com/reviews/77451130

桐野夏生を読んでいて気持ちいいのは、がちがちにプロットが構築されているわけじゃなくて、行き当たりばったりで出来ているというか、視点人物がある状況や人物にぽんと出会って、それに対処していくんだけど、その過程で各人物の性質や考え方がにじみ出てくるし、事態もそれによって駆動されていく。それって現実もそういう風だから、リアルに見えてくる。特に「メタボラ」は新聞連載だったからその感じが強いのかも、と思った。

メタボラ(上) (朝日文庫)

メタボラ(上) (朝日文庫)

酒井啓子『9.11後の現代史』

https://bookmeter.com/reviews/77454818

9.11後のアフガン戦争、イラク戦争アラブの春、ISやシリア内戦がどう推移したのかと、それらが第二次大戦後のどういう経緯で発生しているのかという背景を整理して解説してくれるありがたい本。WW2後イスラエルがアラブ共通の敵になった際、アラブ諸国のリーダーだったのがエジプトだったのが、最初にイスラエルと和平を結んでリーダーの地位を追われ、その後盟主になったサウジアラビアが今はイスラエルと接近して、現状アラブ諸国イスラエルは敵対関係にはないという。