やしお

ふつうの会社員の日記です。

角幡唯介『空白の五マイル』

https://bookmeter.com/reviews/85463059

極限状態まで行ってギリギリ生き残る話を見ると、人間は本当にあっさり死ぬこともあれば、しぶとく死なないこともあって、強いのか弱いのか分からなくて不思議な感じがしてくる。でもそれは運で全部決まるわけじゃなくて、経験や準備によって「より生きられる確率の高い選択肢」を重ねることで生き残ってるっていうのが本書を読むとよく分かる。高山や雪山で遭難や滑落する話はいくつか読んだことあったけど、谷を攻める話は初めて読んで、谷も恐ろしい。絶対に誰も助けてくれない空間にたった一人いる感覚を想像すると途方もない気持ちになる。

矢野香『一分で一生の信頼を勝ち取る法』

https://bookmeter.com/reviews/85464052

聴衆への話し方のハウツー本。会社で「話し方の研修」を強制受講したんだけどあまり得るところがなくて、その分野で面白い本がないかなと思って探したら評判良さそうだったのが本書で、実際読んでみたら面白かった。「聴衆を不安にさせない=敵対的な気持ちにさせない」「相手に負荷をかけずに理解させる」が基本コンセプトとしてあるのかなと思った。体系的というより技術の話で、具体的に何秒・何文字でどの順で話すべきか、身体をどう使うかという話なので、読んで終わりじゃなくて日常的に意識して訓練しないと身に付くことはない。

【NHK式+心理学】 一分で一生の信頼を勝ち取る法―NHK式7つのルール―

【NHK式+心理学】 一分で一生の信頼を勝ち取る法―NHK式7つのルール―

佐藤優『官僚の掟』

https://bookmeter.com/reviews/85511781

既存の官僚機構を無化する形で「第2官僚」が形成されていくプロセスが語られているのが面白かった。自民党内部にあった「日本経済再生本部」を内閣に移し、民主党政権下で停止されていた「経済財政諮問会議」を復活させ、そこに経産省を中心に首相に近い官僚(や官僚OBや学者)を任用する。そうした官邸官僚が外交や労働行政、教育行政を本来の専門性を持った省庁に代わって主導する。専門性もなく責任の所在も曖昧な、「全体の奉仕者」ではない「官邸の奉仕者」が、法的な根拠もなく形成されてしまう状況が今観察されるという。

官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態 (朝日新書)

官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態 (朝日新書)