やしお

ふつうの会社員の日記です。

鈴木理生『江戸はこうして造られた』

https://bookmeter.com/reviews/86021623

人が密集して住むには上下水道の整備が必須になる。電力のない時代は水の流れを地理的な高低差、ポテンシャルエネルギーに頼るしかない、という観点から見つめると江戸は確かにそんな作りになっているという。あるいは江戸城を建造するには大量の資材を運び込む必要がある。そのためには港が必要になるし、建設が終われば防衛上その他の理由で閉ざされる。そうした種々の経緯や制約を多面的に追いながら、江戸が(家康以前の時代も含めて)どのように巨大な都市として形成されてきたかが詳細に描かれる本だった。


 面白かったけど、読んでいるとたびたび(それは恣意的な解釈なのでは?)(自分のストーリーに合わせ過ぎでは)と感じる箇所があって、それは「複数の解釈の可能性がある中で一つに断定している(ように見える)」箇所なのだけど、本書を読む以前に兵藤裕己『後醍醐天皇』を読んでいて、こっちは過去の通説をいかに複数の資料を突き合わせることでその解釈が現代の価値観や研究者の思い込みに沿ったものだったかを丹念に検証するような本だったから、余計にそう感じてしまう。