やしお

ふつうの会社員の日記です。

上野裕和『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』

https://bookmeter.com/reviews/94986607

将棋の序盤戦法の解説書。本旨とは違うが、「プロ棋士」と言っても色んな生き方があるんだよなと思えてくる。タイトル戦に登場するトッププロだけが棋士の生き方じゃない。著者はアマチュア向けの講師や解説書の執筆を通して、将棋人口の裾野を広げることに貢献している。奨励会時代に有力な新手を開発して将棋界に影響を与えてもなかなかプロ棋士になれず、なった後もモチベーションや成績維持に苦労しながら、何とかやめずに頑張ってる棋士もいるんだよな、とふいに思った。本書は序盤戦法全体を概観して発展過程も平易に教えてくれて面白かった。

【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編 (マイナビ将棋BOOKS)

【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編 (マイナビ将棋BOOKS)

  • 作者:上野 裕和
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

早瀬圭一『大本襲撃』

https://bookmeter.com/reviews/95035178

日本の現代史で最大の宗教弾圧、大本事件のノンフィクション。大本の教祖 出口なお王仁三郎に比べて知名度の低い、2代教主・出口すみにスポットライトを当てた点に特色がある。6年以上に渡って収監されても、警察署長や看守を「うちの人」と思い、同房者には慕われ食事を分け与える、裁判長には答弁を感心され、刑事局長に「あれは傑物」と言わせたという。魯山人がすみの書を「天衣無縫」「ああいう天才は現代には一人もない」と語り、人柄を「実にいいおばさん」と評している。開祖に近い宗教家はやっぱりすごい、という気持ちになってくる。

大本襲撃―出口すみとその時代 (新潮文庫)

大本襲撃―出口すみとその時代 (新潮文庫)

水島治郎『ポピュリズムとは何か』

https://bookmeter.com/reviews/94986834

民主主義の中に「間接民主主義」と「直接民主主義」の対立が内在している、という話になるほどと思った。例えばタイは、農村部を大票田にしたポピュリズム政権(タクシン派)が生まれ、都市部の知識層がそれを否定していて、でもそれは民主主義の否定ではないのかと思っていたけれど、間接民主主義を肯定して直接民主主義を否定する態度だと整理すれと理解できる。立憲主義の制約を受け入れるスタンスと、それを否定して直接民衆の意思を反映させるスタンスがあり、両者が「これが本当の民主主義だ」と主張して対立する光景になっている。