やしお

ふつうの会社員の日記です。

柴田伊冊『航空のゆくえ』

https://bookmeter.com/reviews/107192353
「空の自由」「以遠権」といった概念を知られただけでも有益だった。コードシェア便があるとか、LCCが利用できるとか、探せば安い航空券もあるとか、どの国の空港でも搭乗手続きや航空券のデザインが同じとか、そうした便利さも「当たり前のこと」と気にしていなかったけれど、自分の子供の頃や親の世代は「飛行機に乗るのは特別な/かなりお金のかかること」だったと思うと全然当たり前じゃない。各国・地域・航空会社の思惑や事情が絡み合って、ルールが形成・整備されていった歴史を本書は概覧して、今ある便利さの背景を教えてくれる。

児玉博『堤清二 罪と業』

https://bookmeter.com/reviews/107192319
漠然と「失敗した経営者」のイメージで片付けられがちだけど、やっぱり日本の消費文化に与えた影響は無視できない大きさだった。セゾングループとしては解体しても、西友、無印、LOFT、ファミマ、パルコ、リブロなどは今も残っている。「資本家で経営者で文化人」がこの規模で実在したのは特殊な現象だったのだと思う。あと解説で糸井重里が出したコピーを見た堤清二が「女性をものとして扱うな」と静かに激怒するエピソードが語られていて、そうした自分の失敗をそこで載せられる糸井も偉いなと思った。


 辻井喬堤清二の筆名)の書いた大平正芳の評伝を読んで、このレベルで書ける人が経営者もやってたのって何なんだろうと思って、今度は堤清二の評伝を読みたいなと思って買った。ちなみに毎日夜中に2時間を取って読書や執筆に充てていたという。逆に「子供と過ごす時間を作る」とかはなかったみたい(本書ではなく別の記事で読んだ。)
 人間として好きだと思えるというのは読んでいて気持ちいいポイントだった。
 知的水準も高く自己を客観視する能力も高くても、「家」に関する執念みたいなのが残っていて割と素直にそこは認めつつ求めてく、みたいなところが、なんというか、人間の複雑さ・割り切れなさみたいな感じですごかった。

日端康雄『都市計画の世界史』

https://bookmeter.com/reviews/107192280
その時代の社会的課題・軍事的要請・技術的制約で「理想的な街」は変わるし、資金調達や現実の街の状況で「理想的な街」への近づけ方も変わってきて、時間的な重ね合わせで都市ができていく。時代ごとの町割の流行り廃りを知ると、今ある街がどんな重ね合わせで生じているかも類推できるようになってくる。本書は教科書的な書かれ方で、分類がまず先に来る演繹的な解説なので、むしろ個別の都市の歴史的な変遷をひとつずつ見ていって、その後で類型化するような帰納的なスタイルの方が頭に入りやすいだろうなと思ったし、そういう本を探したい。