佐々木秀憲監修『産地別すぐわかるやきものの見わけ方』
https://bookmeter.com/reviews/115028671
産地別に陶磁器の特徴・歴史がカラー写真で概説されていて、コンパクトによく整理されていてありがたい。(たださすがに実際に数を見ないと「見わけ方」が「すぐわかる」ようになるとは思えないけれど。)ある程度知ってると陶器市を見ても楽しい。今なら絶対に収録されるだろう波佐見焼が載ってないのは、本書が00年刊で、波佐見焼が誕生したのが、04年の牛肉産地偽装問題の余波で、有田焼の一部だった波佐見産陶器が有田焼を名乗れなくなったからで、そう考えると改めてすごいブランディングの成功例だなという気がする。
江守賢治『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』
https://bookmeter.com/reviews/115028629
読んでると「字形の正しさ」って何だろうという気持ちになってくる。極端に言えば「読めればいい」となって何でもありだけど、やはりその字が持っている成り立ちと、過去に書かれてきた字形の集積があって、そこからある程度ロジカルに「正しい」字形や筆順が導かれ、どこまでの幅で変化が許容されるのかも分かってくる。それが新字体の活字や、学校で教わる字形とも必ずしも一致しない点が不合理で難しい。書写検定を受ける予定も技術もないけれど、「文字の正しい形って何」を具体的に細かくどう考えられているのかを知られてとても面白かった。
「活字体と書写体は違う」と本書で初めて知った。というより考えたことがなかった。小学校の先生がこのレベルの「字形の許容される幅」について知っているとは思えない。よくネットで「テストで先生に不合理にバツをつけられた話」で炎上というか話題になる。算数の掛け算の前後とか、漢字のトメハネや横画の長短とか。
本書のレベルでバックグラウンドを知らないと実はマルバツの判定がつかないのだとすると、小中学校では安全側に振って「まあだいたい読めればOK」くらいにするしかないんじゃないか、という気持ちになった。
本書は字形の話だけではなく、行草書や変体仮名、書道史の概説も入っていてこれも面白かった。
陳建志『品味故宮 書法の美』
https://bookmeter.com/reviews/115028612
台湾の故宮博物院のミュージアムショップで買った本で、コンテンツというよりモノとしての思い入れのある本。膨大な収蔵品の中から、書・陶磁器・絵画と分野別に代表作をセレクトして各国語版で出してくれて本当にありがたい。日本だと大判の図録しか見かけないけど、判型がコンパクトなのもありがたい。あとがきでも触れられてるけど、台湾は鼎泰豊(レストラン)や電力会社のロゴタイプも有名な書家の作だったりして(最近の企業は違う傾向だったりするのかもしれないけれど)、書作品が身近にあるのはかっこいいな。

