やしお

ふつうの会社員の日記です。

江守賢治『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』

https://bookmeter.com/reviews/115028629
読んでると「字形の正しさ」って何だろうという気持ちになってくる。極端に言えば「読めればいい」となって何でもありだけど、やはりその字が持っている成り立ちと、過去に書かれてきた字形の集積があって、そこからある程度ロジカルに「正しい」字形や筆順が導かれ、どこまでの幅で変化が許容されるのかも分かってくる。それが新字体の活字や、学校で教わる字形とも必ずしも一致しない点が不合理で難しい。書写検定を受ける予定も技術もないけれど、「文字の正しい形って何」を具体的に細かくどう考えられているのかを知られてとても面白かった。


 「活字体と書写体は違う」と本書で初めて知った。というより考えたことがなかった。小学校の先生がこのレベルの「字形の許容される幅」について知っているとは思えない。よくネットで「テストで先生に不合理にバツをつけられた話」で炎上というか話題になる。算数の掛け算の前後とか、漢字のトメハネや横画の長短とか。
 本書のレベルでバックグラウンドを知らないと実はマルバツの判定がつかないのだとすると、小中学校では安全側に振って「まあだいたい読めればOK」くらいにするしかないんじゃないか、という気持ちになった。
 本書は字形の話だけではなく、行草書や変体仮名、書道史の概説も入っていてこれも面白かった。