やしお

ふつうの会社員の日記です。

2023-07-23から1日間の記事一覧

鳥集徹『医学部』

https://bookmeter.com/reviews/115028764 「職業訓練校に国の成績トップの学生が集中する」状況が異常と改めて言われると、めちゃくちゃいびつだなとは思った。医師に高い能力が必要なのは間違いなくても、研究者でも高級官僚でもなく「医者(臨床医)を育…

辻陽『日本の地方議会』

https://bookmeter.com/reviews/115028706 「二元代表制で(日本の国政と違い)議会が首長を支える必要がないのに、(米国の議会と違い)議会の権限が小さい」という特性があると、議会の役割が不明確になって無責任化しやすいというのは、なるほどと思った…

佐々木秀憲監修『産地別すぐわかるやきものの見わけ方』

https://bookmeter.com/reviews/115028671 産地別に陶磁器の特徴・歴史がカラー写真で概説されていて、コンパクトによく整理されていてありがたい。(たださすがに実際に数を見ないと「見わけ方」が「すぐわかる」ようになるとは思えないけれど。)ある程度…

江守賢治『硬筆毛筆書写検定 理論問題のすべて』

https://bookmeter.com/reviews/115028629 読んでると「字形の正しさ」って何だろうという気持ちになってくる。極端に言えば「読めればいい」となって何でもありだけど、やはりその字が持っている成り立ちと、過去に書かれてきた字形の集積があって、そこか…

陳建志『品味故宮 書法の美』

https://bookmeter.com/reviews/115028612 台湾の故宮博物院のミュージアムショップで買った本で、コンテンツというよりモノとしての思い入れのある本。膨大な収蔵品の中から、書・陶磁器・絵画と分野別に代表作をセレクトして各国語版で出してくれて本当に…

広瀬公巳『インドが変える世界地図』

https://bookmeter.com/reviews/115028546 インドの政治・経済状況の概観に手頃な本。長らく政権を独占してきたネルー/ガンディー一族(マハトマ・ガンディーとは別)の国民会議派と、メディア戦略に長けたモディ首相率いるインド人民党の対立軸、という基…

上原浩『純米酒を極める』

https://bookmeter.com/reviews/115028485 高度なベテラン技術者による業界批判は、めちゃくちゃ面白い。技術的な話と、業界構造と、歴史的な経緯とが、ものすごく具体的に語られるので、読んでてエキサイティングだった。著者の方向性は明確で、日本酒がワ…

髙野てるみ『職業としてのシネマ』

https://bookmeter.com/reviews/113340821 映画の配給プロデューサーは、少し刑事弁護人に似ていると思った。作品が自分の好みかは無関係に、職業人として宣伝しなければならない。著者は、新聞記者としてスタートし、雑誌・広告のエディター・ライターとな…

大須賀祐『図解 これ1冊でぜんぶわかる! 貿易実務』

https://bookmeter.com/reviews/113340837 輸出入・貿易は、「船や飛行機で物を送る」という概要のイメージし易さと、実務の「細かなルールや関係するプレーヤーがたくさんあって難しい」とのギャップが大きい分野だと感じていた。このギャップを少し埋める…

中村恵二・佐々木亜希子『映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本』

https://bookmeter.com/reviews/113340791 映画産業を俯瞰して体系的に解説がなされているわけではなく、個別のトピックとデータを羅列して紙数を埋めたような本になっている。著者が業界解説本のライターと活弁士の2名構成で、業界構造を内部的な視点で把握…

赤瀬浩『長崎丸山遊郭』

https://bookmeter.com/reviews/113340753 遊郭のイメージが変わる。交易地という長崎の特殊性が、「海外⇔上方間で流通する富を長崎に回収する装置」としての遊郭を生じさせる。丸山の遊女は他地域の遊女と異なり、「親に売られ、閉鎖空間に閉じ込められて性…

井上智洋『MMT 現代貨幣理論とは何か』

https://bookmeter.com/reviews/113340722 マクロ経済学者がMMTの位置付けをフラットかつ平易に解説する。「財政規律を無視できる(自国通貨があり過度なインフレになければ)」結論の妥当性には納得できる一方で、EUの構成国について「ユーロから離脱すべき…

柳澤健『完本 1976年のアントニオ猪木』

https://bookmeter.com/reviews/113340706 「自分は偉大である」と信じ込むこと。そして「偉大な自分」の幻想に、現実の自分を合わせようとすること。それをできるのは大きな才能だろうと思う。「天才」と呼ばれ得る人は、心底その対象への興味が尽きず没頭…

日本経済新聞社編『金融入門<第3版>』

https://bookmeter.com/reviews/112037668 金融にかかわる仕組みや組織を、官民問わず幅広くコンパクトにフラットに解説していて便利な一冊。事実関係を曖昧に記憶していた事柄(そういえば量的緩和策は最初は小泉内閣の時期で、その後アベノミクス前までは…

桂歌丸『歌丸不死鳥ひとり語り』

https://bookmeter.com/reviews/112037716 古典落語を演じるのは、単なるコピーではなく、噺を分解し、コアを取出し、現代の観客や自分自身の特性などの条件を基に、そのコアが最高の効果を発揮できるように再構築していく営みになっている。歌丸は、当初は…

三木義一『日本の税金 第3版』

https://bookmeter.com/reviews/112037634 改めて日本の税制を概観しても「取れるところから取る」「あえて複雑にして分かりづらくする」姿勢が至る所に見えてくる。「低所得者が増税を、高所得者が減税を主張する」姿が正常でも、逆進性が強く低所得者の負…

中谷巌『マクロ経済学入門 第2版』

https://bookmeter.com/reviews/112037553 本当に「〇〇学入門」の名にふさわしい書物で感動する。世の中には著者が好き勝手に放言するだけで「学」の名に値しない本や、理論体系の全体像や前提の意味、適用可能域の示し方が不十分で「入門」になり得ていな…

藤井聡『超入門MMT』

https://bookmeter.com/reviews/112037502 MMT(現代貨幣理論)がどういう理論なのか肝心の説明がされない。様々な主張が「MMTによると」と説明されるが、マネタリーベース拡大は貨幣数量説・リフレ派の、財政拡大は財政原則(量出制入)の旧来の主張の域を…

神野直彦『財政のしくみがわかる本』

https://bookmeter.com/reviews/112037319 財政の基本的な考え方である「民間は量入制出(収入量に応じて支出を制御)だが、財政は量出制入(支出の必要量から収入を制御)で考える」「ニーズは財政に、ウォンツは市場に任せる」「直間比率(間接税に対する…

井手英策『財政から読みとく日本社会』

https://bookmeter.com/reviews/112037287 日本が他の先進国と比較しても、極端に公務員の数が少ない「小さな国家」だとは知っていたが、どういう経緯でそういう社会になっていったのかは、本書で知って非常に面白かった。予算を、内容ではなく総額の抑制を…

瀬山士郎『数学にとって証明とはなにか』

https://bookmeter.com/reviews/113340674 トートロジーは(最近だと進次郎構文とか)無意味な同語反復のように思われても、実は万人が「正しい」と感じる命題はトートロジーに(一見してそう見えなくても)なるという認識があれば、厳密に形式的にそうでな…