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どんでん返しって普通は落差を際立たせるために転換の時間を極めて短くするものだけど、引き伸ばすとこんな感じになるのね。一人称で主人公が語る時間と場所が各章で確定されているのはこの緩い転換を成立させるための細工。彼の思考は途上だと示し、彼と我々の認識を一致させてどんでん返しの共犯関係に巻込む。一方「今ここで私は」と客観性を捨てる際、彼が話す不可視の相手は誰かという疑義が同時に発生する。日記などと形式的に言い逃れられるが実質は当然読者。共犯関係に巻込んでおきながらそこに触れず回避する倫理観の欠如が少し退屈なの。
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: 文庫
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